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第315話 魔女の正体14

エリー達はこの島の真実について話す。

 2国間和平交渉会議20日目夜。(大陸統一歴1001年11月1日21時頃)


 ここはヒイズル帝国南部島より南へ300キロ離れた孤島、南海の魔女封印地。


 エリー達は北山防衛本部から南部簡易飛行場宿舎へ戻っていた。10畳ほどのプレハブ小屋が10個ほど並んだ中にエリーの宿舎もある。

 宿舎の中には4人掛けのテーブルと簡易シングルベットが置かれていた。

 エリーは椅子に座り反対側にいるリサとアオイ大尉を見つめて話を切り出す。


「防御結界を張っているので、話を聞かれる心配は無いですね。それではアオイさん、この島の本当のことを知っていますよね。だって守護者だったのでから」

 エリーは軍用の迷彩Tシャツ裾を暑そうに煽りながらアオイ大尉に尋ねた。


「……この島の存在はずーっと隠されていました。そして多くの逸話により真実は隠されて、本当のことを知っている者はごく僅かしか存在しないと思います」


「……ええ、そうでしょうね。間違った情報によりプルシアンも動いた。我々大陸列強に対抗するためにアオイさんを手に入れようとした。でも真実は違う。あなたは守護者、この世界を厄災から守るためにここを守っていた……。厄災の魔女の異名を被さられて」


 エリーは扇風機を自分の方へ向けて風を顔に当てながらアオイ大尉に答えた。


「……ローラ様、いえ、セレーナ様……もうご承知なのでしょう」

 アオイ大尉は扇風機の風で髪をたなびかせるエリーを見て言った。エリーはリサに視線を向けて微笑む。

「リサさんは、カミュ様の分身体を内包しています。ですので、ゲートの存在はすでに承知しています」


 リサはエリーの顔を見て顔緩めて声を上げる。

「ローラ様! 暑いのは、おひとりだけでは有りませんよ!」


「……? なんか……ゴメン、そう言うこと」

 エリーは扇風機をリサのほうへ向けてTシャツを脱ぎ下着姿になる。

「ローラ様!」

 リサとアオイ大尉が同時に声を上げた。

 

「えっ! ダメなの? 2人とも女性だし、個室だし……」


「……これならレンベルのコックピットの方がマシだよ。空調が有るし」


 リサがエリーを見て顔を顰める。

「ローラ様! ローラ様! ベランドル帝国大魔導士ローラ様!」


「……? 何? 怖いよ……リサさん」

 エリーは直ぐに迷彩Tシャツを羽織った。


「ローラ様はベランドル帝国の権力者なのです。今は大陸の英雄でも有ります。その事を理解されていますか? 無いですよね! ユーリさんに私が叱られます。品格を維持してください」


「……厳しいよ……リサさん、もっと優しかったよね」


「……これはエリー様、いえ、ローラ様のためです。仲間内とはいえ、私達は友達では有りません! 部下従者です。主人らしい態度をお願い致します」


 リサがエリーに厳しい口調で言うと、一礼する。

「申し訳ありません。苦言を呈しました。話しは以上です。それでは本題へお願いします」


「あゝ、了解です」

 エリーは紫色の広がった髪をヘアバンドで束ねる。そしてソファに座りアオイ大尉を見つめて言う。


「アオイさん、ゲートの向こうはどうなっていますか? 私は知らないのです。向こうの世界がどんなものか教えて頂きたいのす」


 アオイ大尉は扇風機の風を顔に浴びて髪が乱れている。

「……えっと、私は向こうの世界は全てのゲートの入口までは知っています。繋がっている世界はゲートごとに1箇所あります。私が確認して現在繋がりがあるのは3箇所、残りのゲートは繋がりが切れ反応が無い状態です。ゲートの魔導回路を修復すればゲートは再起動するかもしれませんが……。正直に申しますと、私は450年ほど前にカルーナと言う向こうの世界の国へ行ったことが一度だけあります。そこでこちらの世界の代表者として1ヶ月ほど滞在したことが有ります」


 アオイ大尉はエリーの顔を見て少し微笑む。


「行ってみたいですか? 違う世界に……、ですが、それは出来ませんが。400年前の取決めです。お互いに話し合い決まったことです。お互いの世界に干渉しない。それが良いと決まったからです」


 エリーはアオイ大尉の顔を見て機嫌の悪い顔をする。

「取決めか、違う世界、次元の違う空間……、魅力的ですね。でも、私の役目は、ここの封印を再構築して二度と破られないようにすることです」

 そう言ってエリーはリサの顔を見つめる。


「ローラ様、確かにその通りです。が、何か、匂います。今回の一連の動き、タイミングが良すぎます。ローラ様をここへ誘い出したように思えるのですが……。もっと上の方で誰かが糸を引いている気がするのです。どう思われますか? ローラ様」


 リサがエリーの機嫌の悪い顔を見て微笑み言った。エリーはソファで足を組み替えて両手を顔に添える。

「……うーーん! だね、カミュ様から情報をもらうまで私はこの島のことは全く知らなかったからね。私達は上手く踊らされているような気はするね。やはり女神アルテアあたりなのか? それとも大陸の闇組織か? ことが上手く運び過ぎるのは危険だね」


「ここは重要拠点であることは間違いないけどね。早く修復を進めて元に戻すことをしないと」

 エリーはソファから立ち上がるとカウンターの上の無線電話を取って連絡し始める。


「ローラです。施設長をお願いします」


「今日は無理と……はい、了解です」

 エリーはそう言って無線電話をカウンターの上に戻した。リサがエリーに尋ねる。


「お急ぎの要件ですか?」


「……いえ、急ぎではないのですが。まあ良いかと」

 エリーはリサを見て言う。

「少し仮眠をとります。魔導工作隊は0100到着でしたね」


「はい、その予定です」

 リサはソファから立ち上がり一礼する。


「では、3時間ほどして、お伺いします」

 そう言ってリサはアオイ大尉の肩に手を添えて視線を合わせる。アオイ大尉は頷き立ち上がると、エリーに一礼した。

「それでは、ローラ様、失礼致します」


 エリーは頷き右手をあげて手を軽く振る。

「うん、それじゃ、また」


 宿舎プレハブのドアが閉まると、エリーはドアの施錠を直ぐに掛ける。そして扇風機のコードを引っ張り持ち上げるとベットのそばに置いた。


(……この湿度は少し慣れないなあ……なんか気分が滅入る)

 エリーはそう思いながら、迷彩Tシャツと短パンを脱ぎ捨て下着姿になるとベットに横になり扇風機の風を浴びる。

 

 

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!

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