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第314話 魔女の正体13

エリーは今後について説明した。

 2国間和平交渉会議20日目夜。(大陸統一歴1001年11月1日19時頃)


 ここはヒイズル帝国南部島より南へ300キロ離れた孤島、南海の魔女封印地。


 北山地下壕防衛本部。

 エリー達は皇帝護衛隊士官、ヒイルズ帝国士官を集めて会議を開いていた。と言ってもヒイルズ帝国将兵の生き残りは現在、数十名しかいない。無傷で動けるのはイバラキ少佐、カサマツ大尉、アオイ大尉、そして下士官が1人クスハシ曹長。

 裏切りの1番隊は昨日の深夜帯から2番隊、3番隊、4番隊の将兵を200名以上死傷させた。味方と思っている者から突然斬りつけられ次々殺されたのだからたまったものでは無い。


 エリーはテーブルを囲む10名を見て悲しそうな顔で言う。

「死者は火葬を行って遺骨の処置は終わっています。ヒイルズ帝国には連絡をしていますが。明日ランカー7号機で本島へ搬送予定です。反乱を起こした1番隊隊員の遺骨ですが、現在どうするかヒイルズ帝国からの返答は有りません。そして、この島の防衛ですが、しばらくは明日到着するグラン連邦国海軍島嶼作戦特殊中隊が行う予定です」


 イバラキが手を挙げて質問する。

「ローラ様、ヒイルズ帝国軍はどのように?」


「はい、イバラキさんにはしばらくこの島へ止まり、ヒイルズ帝国軍の責任者をお願いします。もちろん部下もいないので、アドバイザー的立場ですね。防衛はグラン連邦国軍が担うので安心してください」


 エリーが資料を見ながら答えると、イバラキが嫌な顔をする。

「私は、大陸共用語を話せませんが……そのあたりはどのように」


「大丈夫です。通訳担当官と中隊の中にヒイルズ語を喋れる者は数人はいますから」

 エリーは微笑み答えた。そしてイバラキは少し少し安心した顔をする。


「……あゝ、カサマツさん、クスハシさんもしばらくここに残り、残務処理を行えと師団長より指示が出ていました。それとアオイ大尉に関しては戦死扱いとすると言うことなので、みなさんよろしくお願いします」


「……!」

 イバラキはエリーを見て頷く。エリーは報告を続ける。


「負傷者に関しては、重傷者がほとんどなのでクリフォード経由でグラン連邦へ移送、治療となりました。そして今回のプルシアンに関して秘匿事項となっていますので、周知願います。ワダ首相よりの要請です。我々ベランドル、グラン連邦もヒイルズ帝国の要請に対して協力すると返答しています」


 イバラキが顔を顰めて、エリーを見て尋ねる。

「……無かったことにと?」


「いえ、それはないです。プルシアンに対してはベランドル帝国、グラン連邦国が対処します。ですが、対外的には何も無かったとなるとは思いますが、プルシアン艦隊に関しては新型兵器の実験中に大事故が発生したと処理される予定です」


 イバラキは驚いた顔をする。

「あれだけ艦船が沈んで……事故ですか? すごいゴリ押しですね」


 エリーはイバラキに微笑み答える。

「ええ、プルシアン政府も納得しています。もっとも公にすれば、大陸相互間条約に基づいて大々的に戦争を始めることになりますけどね。艦隊との戦闘状況の報告を受けているのなら、賢明な判断だと思います。まさか、大陸連合を相手に戦争はしないでしょう」


 イバラキは暗い顔をする。エリーはそれを見て尋ねる。

「戦争が望みですか? 違いますよね。ヒイルズは今、北に早急に対処しなければなりません。南は私達が対処すると言うことです」


「……はい、重々承知しております。ローラ様の対応に感謝致します」

 イバラキはエリーに一礼して感謝の言葉を述べた。


「それでは、明日、グラン連邦国海軍島嶼作戦特殊中隊が到着後、引き継ぎを行い。夕方には私達は本島へ移動となります。それまでにやるべきことを行いましょう! それでは解散!」

 エリーはそう言って椅子から立ち上がり一礼した。

 そして一同一斉に立ち上がりエリーに一礼した。

 リサがエリーのそばに寄って耳打ちする。


「魔導作戦隊が今夜中には到着します。地下の魔導ゲートの修復は如何しますか?」


「……応急処置はとりあえずしてるから、どうしようかな?」

 エリーは顔を傾けて思案したような顔をする。


「……確かレベッカさんのお兄さんが隊長ですねフレッドさんですね。このような処理は慣れているのですか?」

 エリーがリサに尋ねると、リサは微笑み答える。


「はい、フレッド様は実力者ですから問題は無いと、それに編成人員もアンドレアの選りすぐりです」


 エリーは嬉しそうな顔をしてリサを見つめる。

「じゃあ……私、必要無いてこと?」


 リサは真顔でキッパリ否定する。

「立会いは必要です!」

 エリーは横で2人の話が終わるのを待っているアオイ大尉を見て声を掛ける。


「アオイさん、先に宿舎へ帰ってください」


 その言葉を聞いてアオイ大尉は寂しそうな顔をする。

「……いえ、待ちます」


 リサがアオイ大尉を見て冷たい表情をする。

「ローラ様は忙しいのです。まだ時間が掛かります。先に帰られた方が良いかと」


「……!?」

 エリーは防衛本部内奥に立って話をしているニコルに声を掛ける。

 

「ニコルさん! アオイさんを宿舎まで送ってもらえますか」


 ニコルはエリーの方を見て一礼する。

「はい、承知致しました!」


 ニコルはアオイ大尉の横へ移動すると微笑み言う。

「アオイさん、参ります」


「はい、ローラ様、お先に参ります」

 アオイ大尉は頭を下げる。そしてニコルと一緒に部屋から出て行った。リサは少し顔を曇らせてエリーの顔を見る。

「今は力を失っていますが……あまり心を許されると」


「大丈夫だよ。女神の行動理念は単純だから読み易い」

 エリーはリサに答えると、テーブルの上の書類ファイルに再び目を通し始めた。


◆◇◆


 ここはべランドル帝国帝都ドール市、ドール城、皇帝執務室。


 中央のテーブルを囲んで、エランはハリー顧問、マーク宰相、ミリア秘書官と今後について打ち合わせをしていた。


「プルシアン政府に対しては、脅しは十分致しました。まあ、強硬手段は無いと思います。プルシアン国内の諜報には警戒体制はとっているので、万が一にも対応遅れはないものと」


 マーク宰相がエランに報告した。エランは紫色の髪をかき上げると隣りのハリー顧問を見て微笑み言う。


「エリーは無難に戦闘を終わらせたみたいで良かったです。まあ、デモンストレーションは上手く行ったのですね。当然、プルシアン政府上層部へは我々の軍事力は伝わったのでしょうね。プルシアン自慢の戦艦を一撃で撃沈したのはかなり堪えたようです」


 ハリー顧問は多量の資料に素早く目を通しながら言う。

「プルシアンの初動を抑えられたのは幸いでした。エリー様が迅速に行動されたお陰です」


 ミリア秘書官はエランとハリー顧問を眺めながら考えていた。

(……年上か? ハリーさん顔もイケメンの部類ではある。性格は少しクセはあるけど人当たりは、顔見知りになればそう悪くない……。執務室で2人きりになることは頻繁にあるから……、まさか一線は越えて無いと思いますが!? 万が一にもそんなことになったら奥さんのジェーンさんが黙っていないでしょうね。いくら相手が皇帝だろうと……。ハリーさんもブラウン商会の幹部だし、最悪、ベランドル帝国とグラン連邦国に亀裂が入ることに)


 ミリア秘書官は唐突に口を開く。

「ハリーさん、ジェーンさんはお元気ですか?」

 ハリー顧問は資料から目を離すとミリア秘書官を見て微笑む。


「はい、とても元気ですよ。私がここ最近は遅いので先に寝ていますが。朝食は一緒に摂ります。まあ、今は子供の方へ気持ちは行ってますが……」


「……あゝ、そうなんですね」

 ミリア秘書官は愛想笑いのような表情で答えた。ハリー顧問はミリア秘書官の顔を見て微笑む。


「お気遣いありがとうございます。まあ、妻がベランドル帝国の駐在武官に就いたことで、色々助かっています。妻と子供とも一緒に生活出来るのはありがたいことです」

 ハリーが嬉しいそうに答えた。ミリア秘書官はハリー顧問の顔の表情を観察する。


(……ジェーンさんは子供に夢中なんですね! ハリーさん、寂しいんですか? でも、エラン陛下に手を出したらダメです。陛下は恋愛経験が無いのですから……。そんなことしたらクズですよ!)

 ミリア秘書官の顔が険しくなる。それを見て隣りのマーク宰相が声を掛ける。


「ミリア、気分でも悪いのか? 顔が……少し険しいぞ」

 ミリア秘書官はハットしてマーク宰相の顔を見る。

「マーク閣下、問題無いです。……考え事をしていただけです」


「プルシアンに関して何かあれば申せば良い」

 マーク宰相がミリア秘書官に尋ねた。ミリア秘書官は苦笑いをして答える。


「いえ、特には、今日は早めに解散して、お酒でもと思ったのです」


 エランは嬉しいそうにミリア秘書官に尋ねる。

「このメンバーで?」


「はい、この4人ですね」

 ミリア秘書官は戸惑ったように答える。エランはハリー顧問を見て尋ねる。

「本日はこれで終わってよろしいですか?」


「はい、そうですね。外務局も参謀部も今後についての指示は伝えているので問題は無いです」


 エランは嬉しいそうにソファから立ち上がると3人の顔を見渡す。

「じゃあ、解散です。この後は食堂へ行きましょう」


「はい、では一旦執務室に戻ってから、お伺い致します」

 マーク宰相とミリア秘書官はエランに丁寧に一礼すると皇帝執務室から出て行った。そしてハリー顧問はエランに話し掛ける。


「マーク宰相とミリアさん何かあったのでしょうか? ミリアさん浮かない顔をしていました」


「そうですね。歳の差がかなりありますから、そう言うこともあるじゃないですか? でもまだまだ新婚です。心配する必要は有りませんよ」

 エランが微笑み答えた。ハリー顧問は頷く。

「そうですね」


最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

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