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第313話 魔女の正体12

エリー達は風呂に入る。

 2国間和平交渉会議20日目午後。(大陸統一歴1001年11月1日16時頃)


 ここはヒイズル帝国南部島より南へ300キロ離れた孤島、南海の魔女封印地。


 エリーは作戦後のとりあえずの後処理を済ませて、島の南部簡易飛行場拠点に来ていた。

 ここに設置された入浴施設を利用するためだ。敷居で仕切られプレハブ式の簡易浴場が設置された。洗面更衣室、浴室スペース、ボイラー循環設備を備えて、海岸に設置された海水真水精製装置からポンプで水が供給されている。


 浴場周囲には皇帝護衛隊の分隊が警戒を行っている。エリーは洗面更衣スペースでパイロットスーツを脱ぐとニコルを見つめる。入口にニコルが立ってこちららを見ていた。

「……ニコルさん、どうですか? 一緒に」


「いえ、私は警護担当ですから」

 ニコルは真面目な顔で断る。


「ニコルさんだって掃討作戦でお疲れでしょう? 一緒に汗を流しませんか」

 

 エリーはニコルに近寄り匂いを嗅ぐそぶりを見せる。ニコルは慌てて声を上げる。


「……えっ! ローラ様! 何を!?」


 エリーは下着姿でニコルの肩に手を回して口元を緩めて言う。


「ユーリさんなら素直に、ご一緒しますて言うけどね」


 ニコルは困った顔をしてエリーの顔を見つめる。エリーは微笑みリサを見て言う。


「リサさん、魔法結界を構築しているから不審なことが起こったら直ぐにわかるよね?」


 リサは軍服を脱ぎながらリサは答える。

「はい、大丈夫です。問題は無いと思います」


 エリーはニコルを引っ張り脱衣スペースへ移動させる。

「ローラ様! ……私は着替えが有りません。ですので……ご遠慮致します」


 エリーは棚から下着の予備を取り出す。

「インナーと下着なら各サイズあるから大丈夫。ねえ……そんなに嫌ですか? 私と一緒は?」


 ニコルは困惑した顔をしてエリーの言葉をを否定する。

「いえ、とんでもない……ユーリ様の主である。ローラ様にそのような」


「なら、私が望んでいるのに拒否は出来ないでしょう」


「はい、仰せのままに。少しお待ちを」

 ニコルは首につけていたインカムを操作する。

「こちらニコル! 浴場入口前の警備を頼む! 今よりローラ様と浴室内に同行警備を行う! 以上!」


『はっ! 了解!』

 ニコルの部下から応答が入った。ニコルはインカムを切ると、腰につけていたショートブレードを外し拳銃をロッカー内に仕舞いロックした。


「……無理を言ったかな?」

 エリーはニコルに尋ねた。ニコルは少し笑った顔をする。

「いえ、名誉なことです。私など末端の者がローラ様と一緒にお風呂など、有り難く思っております」


 アオイ大尉は裸になり浴室入口でエリー達を待っていた。

「アオイさん、お先にどうぞ!」

 エリーがアオイ大尉に声を掛けると、アオイ大尉はエリーを見て少し遠慮した顔をする。

「それはダメです!」


 エリーは下着を脱ぐとニコルが裸になるのを待つ。

(……やっぱり、ユーリさんの配下は体のバランスが良い! 理想的な体型をしている)

 ニコルのうっすら浮き出ている腹筋、絞られた腰、引き締ったお尻、手足は適度に鍛えられ筋肉が隆起している。胸も適度の膨らみボリューム感があり触りたくなる。リサがエリーの様子を見て驚いた顔をして近づき声を掛ける。


「……ローラ様……顔が緩んでいます」


「……へえっ! あっ!」

 エリーがハットして声を漏らした。エリーはリサを見て顔を引き締める。


「……じゃあ」

 エリーは浴室のドアを開けて浴室内に入る。15畳の空間で洗い場が6個設置され4畳ほどの湯船が設置されている、戦線用の簡易浴室だ。


 リサがエリーを見て微笑み言う。

「ローラ様、こちらへお座りください。私がお体をお洗い致します」


 エリーはリサを見て素っ気なく答える。

「良いよ、リサさんは自分を洗ってください。私はニコルさんを洗いたいので」


 横に立っていたニコルが驚いた顔をして声を上げる。

「いえ! それはご容赦を! ローラ様に洗ってもらうなど! とんでもないことです」


 エリーはニコルの右手をグイッと引っ張りバスチェアに座らせる。それを見たアオイ大尉がエリーに近づいて嬉しいそうな顔をする。


「ローラ様のお体は、わたくしアオイがお洗い致します」

 アオイ大尉が言うとエリーはボディスポンジを手に取り答える。

「アオイさん結構です。私はニコルさんに洗ってもらいますから」


「……えっ!?」

 アオイ大尉は少し動揺した顔をして声を漏らした。それを見てエリーはアオイ大尉を見て微笑み言う。

「わかりました! アオイさん! そんな顔しないでください。アオイさんにお任せします」


「……ローラ様! ありがとうございます」

 アオイ大尉が嬉しいそうな顔をして隣りのバスチェアに座った。そしてリサは不機嫌な顔をしてアオイ大尉の隣りのバスチェアに座る。


 エリーはボディスポンジにボディソープを馴染ませると、嬉しいそうな顔をしてニコルの背後から肩を洗い始める。

「……ローラ様……恐縮です」

 ニコルが戸惑い言葉を発した。


(ローラ様は、任務中とプライベートでは雰囲気が全然違う!? この気遣いはなんなのだろう?)

 ニコルが考えているとエリーが右胸を撫で回すようにスポンジで洗い出した。ニコルは正面の鏡に映るエリーの顔が緩んでいるのに気づいた。

「……?」


 鏡のニコルとエリーの視線が合う。

「ニコルさん、肉付き筋肉のバランスが理想的ですね。羨ましいです」

 エリーが微笑み言うとニコルが少しギョッとした顔をする。


「……ありがとうございます」

 ニコルが戸惑い答えると、エリーは体をニコルの背中にくっつけてお腹周辺を洗い出した。


「ニコルさん、お腹周辺も良い感じですね」

 エリーが嬉しいそうの言うと、ニコルは困惑したように答える。

「……あ、ありがとう……ございます」


 1番端で見かねたリサが声を上げる。

「ローラ様! それはダメなやつですよ! ニコルさん嫌がっています。ハラスメントです! ローラ様は自分が楽しんでいるだけです」


「……えっ! そうなの!」

 エリーがびっくりしたように声を上げた。そしてニコルを見つめる。ニコルは慌てたように困った顔をした。


「……そうならそうと」

 エリーは体をニコルの体から離して立ち上がる。リサは不機嫌な顔をしてニコルを見て言う。

「ニコルさん! ハッキリ言わないと! ローラ様は鈍いから気づかないですよ」


「……!」

 エリーは申し訳なさそうな顔をしてニコルに頭を下げる。

「……あゝ、ゴメンナサイ。配慮が足りなかったですね」


「いえ、戸惑っただけで、嫌とか……そう言った気持ちは……」

 ニコルは動揺した顔で言い訳のように答えた。


 リサがエリーのそばに近寄って言う。

「私ならどうぞご自由に洗ってくださって結構です」


「……うん……いいよリサさん。私は趣味で他人の体を洗ってる訳じゃなからね。体の肉付き具合を確かめたかっただけだから。リサさんはいいよ……」

 エリーが残念そうな顔をしてリサを見て言った。それを見てリサは寂しそうな顔をする。


「……そ、そ、そうですか。興味は無いと」


「なんでまたそんな顔するの、私が何か悪いことしたみたいじゃ無いですか」

 そう言って、エリーは反対側の洗い場へ移動してバスチェアに座りシャワーを浴び始める。


 アオイ大尉が慌ててエリーの後ろに回って囁く。

「ローラ様、私が洗う約束ですよ」


「……あゝ、そうでしたね」

 エリーは鏡を見ながらアオイ大尉に答えた。


「ローラ様は、なぜ、そんなに体を触りたいのですか?」

 アオイ大尉が興味ありそうに尋ねる。エリーはシャワーを浴びながら答える。


「それはね、強者の体の筋肉のつき方とか太さとか、魔力の流れとか、自分が対峙した時に相手の動きの参考になるし。私の体作りの参考にもなるしね。まあ、男性は肉付きも違うし、そもそも骨格が違うからあんまり参考にならないんだよね」

 アオイ大尉はシャンプーを手に馴染ませるとエリーの髪を洗い始める。


「そうですか? 鍛えれば良いのでは無いのですか?」アオイ大尉が不思議そうに尋ねる。


「バランスが大事なんですよ。しなやかに動く筋肉、可動域の広い関節、そして瞬時に動く手足。最後はイメージと寸分違わず動く体です。魔力はそれを補うもので主では有りませんからね。まあ、これは師匠に散々言われたことですけど」


「……すごいですね。ローラ様はやはり武人ですね」

 アオイ大尉は感心したように言った。


「日々精進だね。ニコルさんは理想的な体なんだけどね」

 

 エリーは残念そうな顔をしてアオイ大尉を見る。アオイ大尉は構わずエリーの頭へシャワーを浴びせてシャンプーを洗い流した。そしてアオイ大尉はボディスポンジをとってボディソープを馴染ませると、エリーの背中をゴシゴシ洗い始める。


(……この中に女神セレーナ様がおられるのですね……)

 アオイ大尉は嬉しそうな顔をする。


 


最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます! これからも、どうぞよろしくお願いします。

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