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第312話 魔女の正体11

プルシアン第2艦隊への攻撃が始まる。

 2国間和平交渉会議20日目午前。(大陸統一歴1001年11月1日11時頃)


 ここはヒイズル帝国南部島より南へ300キロ離れた孤島、南海の魔女封印地。


 エリー達は島の上空5000mにいた。雲の間に入り2機のランカーⅡは姿が見えない。魔導静音装置を使用して音を立てる事なく上空に潜んでいたのである。

 ランカーⅡ5号機のコックピット後方のシートに座るエリーは上部窓越しに上空の青空を眺めていた。


「ローラ様! アテナ号誘導弾1番! まもなくプルシアン艦隊へ到達! イーグルリーダー精密照準制御開始しました!」

 ランカーⅡ5号機レーザー士がエリーに声を上げた。


「了解です! 指示通り戦艦2隻を! 効果確認後、3番、4番をマーカーナンバー順にと通達願います」


「了解致しました!」

 通信士は直ぐに早期警戒機イーグルリーダーへ連絡する。対艦誘導弾はアテナ号より1分間隔で4弾発射されていた。それがあと3分ほどでプルシアン第2艦隊へ到達する。


 今回、アテナ号から発射された対艦誘導弾は、対アクセリアル用に開発された新型誘導ミサイルである。

 ブラウン技術工廠製、新型誘導弾、ステルス性を有し、時速1000から800キロで飛行、最大射程2000キロの地軸制御誘導ミサイルである。着弾時表面装甲または、魔力シールドを破壊内部に2弾目が貫通到達し魔導熱反応を起こして5000度の高熱で焼き尽くす。


 エリーはヘッドセットを装着して通信士へ指示を出す。

「プルシアン艦隊へ警告を致します。共通無線帯で通信をお願いします」


「はっ! 了解です!」

 通信士は通信端末を操作して共通無線帯へ切り替える。


「ローラ様! どうぞ!」


 エリーは頷くとハット息を吐いて言葉を発する。言葉は流暢なプルシアン語で発せられた。

「こちらヒイルズ帝国近衛師団、特別守備隊! プルシアン艦隊へ警告する! 我が領海への侵入は許されない! これ以上の行為へは然るべき処置を行う!」

 エリーが警告を3回繰り返し諦めかけた頃、

 プルシアン第2艦隊側から返信が入る。


『こちらプルシアン第2艦隊! もはやこの戦いは決してている! 貴官らはすでに我が第3艦隊へ攻撃損害を与えている。貴官らは我々の降伏勧告を無視し戦闘状態に突入している。報いを受けるがよい!』

 そして追伸は切れた。エリーはそれを聞いて俯き間を置いた。


「部隊共通無線に切り替えてをお願いします」

 通信士は直ぐに通信を部隊共通帯に切り替える。

「ローラ様!」

 そしてエリーは声を上げる。


「部隊各員へ達する! これよりプルシアン艦隊への攻撃を開始せよ! 以上!」


 エリーは少し悲しそうな顔をしてコックピット前席のカーター機長に言う。

「それではプルシアン艦隊上空へお願いします」


「はい、了解致しました!」

 機長席のカーターが答えると、ランカーⅡ5号は直ぐに南へ機首を向けて速度を上げた。


 レーダー士が声を上げる。

「誘導弾1番! 着弾1分前! 問題無し!」


 エリーはヘッドセットをマイクを口に寄せる。

「シーキャット各員へ達する。敵潜水艦殲滅せよ! 繰り返す! 敵潜水艦殲滅せよ! 以上!」


『こちら第1派遣飛行隊、対潜航空隊カモメ1号! 了解! 直ちに殲滅行動へ移行致します!』

 クリフォードよりやって来た増援機ベルーダⅡKai対潜哨戒機仕様、3機が南部簡易飛行場から一気に飛び立ち、潜水艦攻撃ポイントへ出撃した。


 エリーは情報端末モニターを見ながら、各隊の状況を確認する。ランカーⅡ5号機の下部搭載高精度カメラが海上を航行中のプルシアン第2艦隊を捉えた。


「1番着弾!」

 レーダー士が報告した。海上で光と爆発が起こる。艦隊の陣形中心付近にいた戦艦が艦橋付近から船体が折れて船首と船尾を上に沈んでいく。

「目標着弾確認! 破壊撃沈! 旗艦グラードと思われます!」


「……一瞬だね……」

 エリーは呟く。そしてレーダー士が声を上げる。


「2番着弾!」

 陣形中心左側の戦艦に誘導弾が到達着弾した。赤い火炎が起こり、そのあと紫色の光が周辺に広がると複数の爆発が起こり、戦艦は中央船体が飛散して前後に折れて沈んでいった。


 そしてレーダー士がエリーに報告する。


「目標着弾確認! 破壊撃沈! 2番艦トリードと思われます!」


「……思った以上に脆い」

 エリーはそう言って、はっあと息を吐いて悲しい顔をする。


「3番着弾!」

 レーダー士が声を上げた。そして艦隊後尾にいた巡洋艦に着弾した。光と爆発が起こり船体の破片が周辺に飛散して爆散、瞬時に沈没した。上空から見える敵プルシアン第2艦隊の混乱は明らかだ。上級指揮官の乗艦する艦船を叩き、指揮系統はもはや崩壊しているのだろう。


「目標着弾確認! 破壊撃沈!」


 エリーは報告を受けて言葉を発する。

「蹂躙ですね……、ホント……、では上空を旋回、情報収集をお願いします。防御シールドを展開を忘れずにお願いします」


 レーダー士がエリーに報告する。

「4番着弾!」


 ランカーⅡ5号機の下方を誘導弾が通過していく。そしてプルシアン第2艦隊前方の巡洋艦へ着弾した。赤い火炎が起こり爆発、巡洋艦が爆散した。

「目標着弾確認! 破壊撃沈!」


「……誘導弾、全弾命中ですね。これよりプルシアン艦隊へ最終勧告を行います。プルシアン艦隊無線周波数へ接続してください」

 エリーは通信士へ指示を出した。通信士は直ぐに通信端末を操作して周波数をセットする。


「ローラ様、準備出来ました」

 エリーは頷き、すーっと息を吸うと言葉を発する。口からは流暢なプルシアン語が発せられる。

「我々はベランドル帝国、皇帝護衛隊! ローラ•ベーカーです! 貴国艦隊の行動、見過ごすことは出来ず介入致しました! 艦隊への攻撃は我々が行ったものです! 直ちに停船、艦隊旗、軍艦旗を下げ投降の意を示すのならこれ以上の攻撃は行いません! なお戦闘行為継続の場合、我々は容赦なく殲滅行動を行います! 早急に回答なき場合、戦闘行為継続とみなし殲滅行動へ移行致します!」


 プルシアン第2艦隊から直ぐに通信が入る。

『こちらプルシアン第2艦隊所属、護衛艦隊司令ルンデと申します! ベランドル帝国大魔導士ローラ様! 直ちに艦隊を掌握! 停船させますので! ご猶予をお願い致します! 従わない艦は我々で処分致します!』


「ルンデ司令! 承知しました! 全艦停船を期待致します。なお、反撃敵対行動があった場合、直ちに戦闘を再開します」

 エリーが応答するとルンデ司令から返信が入る。

『ローラ様に感謝致します!』


 無線は切れた。エリーは通信士に声をかける。

「発信元は?」


「はい、右手の巡洋艦と思われます」

 そう言って通信士はモニター表示を指し示した。


「各員に達する! 私が指示するまで戦闘行為は行わないように! 以上!」


 通信士がエリーに報告する。

「イーグルリーダーから通信が入っています」


「はい、了解です」

 エリーが答えると早期警戒機イーグルリーダーから通信が入った。


『こちらイーグルリーダー! エンペラーワンへ! プルシアン共和国へベランドル帝国、グラン連邦国両国より外交通達が発せられたとの報あり! 現在、返答は無いとのことです!』


 エリーは呟くと応答する。

「了解です! この戦域の脅威判定はどうですか?」


 イーグルリーダーから返信が直ぐに入る。

『画像、及び魔導粒子判定では脅威は現在無いものと思われます』


「イーグルリーダーご苦労様です。引き続き警戒を行ってください」


『了解!』

 イーグルリーダーからの通信が切れた。エリーは座席ベルトを外すと機長席の後ろに移動する。

「カーターさん、高度を下げて艦隊上空を旋回してください」


 カーター機長はエリーの言葉を聞いて頷き高度をゆっくりと下げていく。プルシアン第2艦隊残存艦艇は海上で全艦停船していた。エリーはそれを見て安心した顔をする。


「……ひとまず、これで片付いたね」


 ランカーⅡ5号機は高度150mほどでプルシアン第2艦隊艦隊上空を通過して旋回を繰り返す。各艦艇には白旗のようなものが甲板上で大きく振られている。


最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!

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