第307話 魔女の正体6
エリーは島に迫るプルシアン艦隊を撃退するが
2国間和平交渉会議20日目朝。(大陸統一歴1001年11月1日7時頃)
ここはヒイズル帝国南部島より南へ300キロ離れた孤島、南海の魔女封印地。島の北部山陣地山頂付近。
エリーの搭乗するレンベルはプルシアン第3艦隊へ遠距離攻撃用魔導徹甲弾ライフルで攻撃をしていた。
エリーはバイザー表示ターゲットマーカーを確認していた。警告音が鳴る。
「……北部海岸? 艦2!?」
エリーは直ぐに早期警戒機と通信をする。
「イーグルリーダー! 敵確認! 接近に気づかなかったのですか?」
『こちらイーグル3! イーグルリーダーは現在、南東上空で北上中の艦隊を警戒中です。島の周囲はイーグル3が担当しています』
エリーがモニターでリンクを確認するとイーグル3の認証コードに変わっていた。
「急いで状況確認願います! こちらは艦隊が片付いてないので対処出来ません。それと北上中の艦隊とは? 報告を受けていませんが」
『はい、20隻編成の艦隊です戦艦も含まれております。報告が遅れ申し訳有りません! 100キロ以上離れており現在脅威ではありません』
「はい、了解しました。まず北部海岸を確認してください!」
エリーは通信を部隊共通帯に切り替える。
「北部海岸線に脅威有り! 2個分隊で対処してください! ロケットランチャー及び火器全般の使用制限の解除! 部隊長判断での使用を許可します」
エリーは指示を出すとプルシアン第3艦隊の状況をモニターで確認する。
「……撤退しないのですね」
エリーは主力巡洋艦3隻にダメージを与えて指揮系統混乱で艦隊の撤退を予想したが、残念ながら残存艦のみで上陸を敢行しようとしているようだった。
エリーはターゲットマーカーを補給支援艦にセットする。
「……申し訳無いけど、これ以上は進めさせない」
〈警告! ターゲットマーカー5選択! 照準補正完了!〉
ターゲットロックオン完了のピープ音が鳴り響く。エリーはレバーの発射スイッチを指で軽く押した。レンベルが遠距離攻撃用魔導徹甲弾ライフル発射振動で若干揺れる。
エリーはコックピット拡大映像モニターを確認する。
〈ターゲット5 ! ヒット確認!〉
システムはターゲットを破壊、もしくはターゲットマーカーをは解除しない限りターゲットを捕捉兵装照準をマークし続ける。
「……やはり沈めるしかないか」
サブシートのアオイ大尉がインカム越しに言う。
「ローラ様、ためらっておられるのですか?」
「……いえ、攻撃順番を考えているだけです」
エリーはターゲットマーカー5、6を選択してロックオンビープ音と同時に発射スイッチを押した。レンベルコックピット内が微振動する。
〈ターゲット5! ヒット撃破確認! ターゲット6! ヒット確認!〉
コックピット内にアナウンスが流れて次弾装填を各すると攻撃ターゲットマーカーを全て選択するとプルシアン第3艦隊へ連続射撃を開始する。
島の南東沖合では航跡が入り乱れ逃げ回る護衛駆逐艦がモニター画面越しに見える。エリーはデーター表示を確認しながら的確に射撃を繰り返す。次々と魔道徹甲弾が吸い込まれるように命中して艦船は動きを止め火災を発生する艦、傾き沈没しかける艦が見える。
収容ボートが無数に周辺に見えた。エリーは直ぐに遠距離攻撃用魔導徹甲弾ライフル接続を解除。山頂横の整備ピットコンテナから魔導ライフルをレンベルに装着する。
「北部海岸へ向かいます! 上がっているランカーⅡは指示があるまで待機!」
レンベルTYPEⅡは方向を北側に向ける。
エリーは左右のレバーを離し、手前にある左右のスペースに手を入れた。機体のスピーカーから女性のアナウンスが流れる。
〈機体パイロット認証システム作動! 認証しました! ローラ•ベーカー確認! シンクロパイロットシステムに移行確認!〉
そしてレンベルTYPEⅡはホバーリング開始して斜面を一気に下って行く。エリーは感知スキルを発動レンベル魔導回路と精神体を接続した。
(……感知魔力が上手く通らない? 阻害されている?)
エリーはレンベルの魔導回路を通してさらに魔力を増幅させた。レンベルは海岸付近に降りると沖合を確認。潜水艦が2隻並んで浮上し待機していた。
「こうも堂々と。南側に気を取られ過ぎたのですね」
そして海岸付近に展開式のボートが何隻か着岸しているのに気づく。エリーは直ぐに部隊共通帯に通信を繋ぐ。
「こちらエンペラーワン! 敵部隊上陸確認! 20から30と思われる! 周辺の部隊は対処をお願いします!」
『こちらエンペラー5! 敵部隊海岸線100m確認! 排除致します』
エリーはエンペラー5の座標を確認してレンベルのカメラモニターを切り替える。
「上陸していますね。バラけているようです」
エリーはターゲットマーカーを潜水艦2隻へ設定する。魔導ライフルを構え拡大映像を見る。潜水艦の艦橋部でこちらを双眼鏡でのぞいている将兵が数人確認出来た。そして潜水艦の砲塔がこちらに向けられている。
〈警告! 兵装変更! グラネードランチャー!〉
そしてレンベルのグラネードランチャー弾全弾が潜水艦2隻へと向かって飛翔して行く。
潜水艦2隻のいた海上で連続して爆発が起こり火災が発生する。燃え盛る潜水艦と手前にいた潜水艦は爆散して海上から消失した。
〈ターゲット1、2! 破壊確認!〉
コックピット内にアナウンスが流れて表示マーカーが消える。プルシアン潜水艦2隻は逃げる暇もなくグラネードランチャー弾の餌食になった。火災を起こしゆっくりともう1隻の潜水艦も傾きながら海上から姿を消す。
エリーはふっと息を吐くと無線をリサに繋ぐ。
「こちらエンペラーワン! エンペラー2! 島の周辺に魔力漏れが発生しています! 処置をお願いします」
『こちらエンペラー2! 本当ですか? そんなはずは無いと思いますが』
リサが無線に答える。
「いえ、北側で魔力漏れと思われる感知阻害が発生しています。リサさん障壁を展開して抑えてもらえますか。戦闘に影響していますので」
エリーが少し機嫌の悪い声で言った。
『はい、エンペラー2! 了解致しました』
リサが答えるとエリーは無線をニコルへ切り替える。
「エンペラー3! 北に上陸した敵を排除してください」
『こちらエンペラー3! 了解!』
直ぐにニコルが答える。エリーが少し間を置いてヘルメットを脱ぐとサブシートのアオイ大尉を見る。
「出て来ます。あとをお願いします」
アオイ大尉が慌ててヘルメットを脱ぎ声を上げる。
「ええーーっ! 無理……です」
「大丈夫、ここに座っているだけです。レンベルの装甲は小火器ぐらいで破壊出来ませから」
そう言ってエリーは足元のボックスから軍刀を取り出す。エリーは上体を捻るとアオイ大尉の顔を見て頭に右手を優しく添える。
「ドーラ様、貴女様が守っていた島を蹂躙させるようなことはさせませんから」
「はい、ローラ様、承知しました。私はドーラでなくアオイとお呼びください。今は、力無き魔法が少し使える人間過ぎませんので……お願いします」
「はい、了解しました。ではアオイ様、それでお願いします」
エリーはレンベルを足を折りたたみ、跪かせる。そしてセーフティロックを解除してコックピットシールド開放ボタンを押す。コックピット内に警報が鳴り響き、ゆっくりとコックピットシールドが開放されていく。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!
これからも、どうぞよろしくお願いします。