北部戦線30 国境侵攻1
北部戦線、エリー機動大隊現地配備、9日目早朝。
エリー達は無事に特三連隊ベースキャンプに帰って来て8時間ほど経過している。
レンベルのシステムチェックはあれから一時間掛かり完了した。それからエリーは四時間ほど仮眠をとった。
そして今、エリーは一人木剣を無心に振っている。
「久しぶりに一戦やるか!」
エリーの後ろから声がする。振り返るとそこにはジェーン連隊長が木剣を持って立っていた。
エリーは一瞬、瞳を開いて嬉しそうな表情をするがハットして視線を下げる。
「やめておきましょう! 作戦前に怪我などしたら大変です」
ジェーンが残念そうな顔をして言う。
「エリーは本当はやりたいんだろう!」
「もちろんそうですが! それは無理と理解していますよ」
エリーが諦めたように言った。
「汗をかいたので、お風呂に入ります」
エリーはジェーンに近寄り見つめて言う。
「ハル作戦部長が来られますが! いつ頃到着予定でしょうか?」
ジェーンは一瞬考えて言う。「午前中の予定だが、時間ははっきりしていない」
「そうですか、一緒にお風呂行きますか」
「いや、修練してからにする」
「わかりました。それではお先に」
エリーは生活機能ブロックへと歩いて行く。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ここはバレット市、帝国軍第三軍司令本部、軍団司令官室。
「連邦国軍の超兵器使用についてだが、ほぼ間違いなくここバレット周辺なのか?」
マーク中将がセリカ少佐を見て言った。セリカ少佐は視線をマーク中将に向けて言う。
「中央情報局に入っている情報を分析した結果から9割以上との判定です。中央軍参謀部の見解もほぼ同等の結果ですので間違い無いかと」
セリカ少佐はマーク中将からミリア中尉に視線を移して言う。
「魔女狩り部隊を突出させて探りを入れる予定です。願わくば阻止ですが、ミリア中尉準備は出来ていますか?」
ミリア中尉がマーク中将を見て言う。
「中央軍参謀部からの許可は出ていますが、貴重なスタンレー重装機兵を使用するので、一部反対意見も有りました。そのあたりは理解して下さい」
セリカ少佐がマーク中将にテーブルの地図を示して言う。
「前回のヤルタ重工業地区の攻撃事例から発射地点はこの100キロから80キロのこのゾーンと思われます」
マーク中将が窓の方向を見て言う。
「この状況では前に戦力は出せん! すまんが、君達に頼むしか無い」
ミリア中尉は地図を見てポイントを指して言う。「各中隊で有力と思われる、この2ポイントを強襲します。スタンレーなら速度、航続距離ともやれると思いますが、何せ支援が期待できないので、各部隊長には危険と判断したら無理はしないように即撤退と通達しています」
セリカ少佐がミリア中尉を少し悲しい目で見る。
「たぶんそのポイントには魔女がいると思います。申し訳無い・・・・・・」
ミリア中尉は頷き言う。
「それは理解しています。部隊将兵もそれが主任務なのですから、気合いを入れていますよ、気になさらないで下さい」
セリカ少佐はマーク中将の背中を見て言う。
「主戦力20万は戦線より100キロ後退は今日の午後には完了する予定です。戦線には三個師団約2万5千が展開中ですが、超兵器使用確定の場合、即撤退となっていますが、足の速い機械化師団とはいえ厳しいとは思います」
マーク中将は二人に向き直り言う。
「ミリア中尉は後方司令本部にはいつ移動するのかね?」
「はい、部隊作戦終了確認後の予定です。本日の夜にはと思っています」
マーク中将はセリカ少佐と視線を合わせて言う。
「君の上司、諜報工作部長に君を譲ってくれないかと頼んでみたが断られたよ。それでだが、君は帝都に帰れば良いと思うのだがどうだろうか」
セリカ少佐が少し驚いた顔で言う。
「マーク中将閣下はどうするおつもりですか?」
「私はここで情勢を見極めるまで、とどまるつもりだ」
「しかし、ここでは司令部機能がほぼ無い状態です。私までいなくなって閣下はどうするおつもりですか」
マーク中将は少し悲しい顔をして言う。
「戦線にほぼ死ぬことが確定している将兵を残して、自分だけが安全なところには行けないんだよ! 私は指揮官としての責任を果たしたいだけだ」
セリカ少佐はマーク中将の覚悟の決まった顔を見て言う。
「私も情報士官としての責務を全うします。閣下と一緒に残ります」
マーク中将はセリカ少佐の肩を叩き言う。「君は優秀だから今後、帝国のために必要だ、私に付き合い命を危険に晒す必要はない」
「お言葉ですが、閣下にお仕えすることが私の諜報任務ですので、申し出は承諾出来ません! それに申し訳ありませんが、私の上官はヒルト中佐です。任務中止の指示は受けておりません」
ミリア中尉がマーク中将を見て言う。
「お覚悟はご立派ですが、私たちの作戦を無駄にしないで下さい! お願いします」
そして、ミリア中尉は敬礼して司令官室から出て行った。
マーク中将がセリカ少佐に少し微笑んて言う。
「市内に残っている部隊はどのくらいだ」
「はい、一個連隊ほどです」
「では一個中隊を本部に残し、後は撤退させてくれ」
「はい、了解しました!」
セリカは敬礼して秘書官室に向かった。
◆◇
ミリア中尉は司令本部隣りの部隊野営地に来て部隊長に作戦内容を伝達説明していた。
「ミリアちょっといいか?」
ビル中尉が近寄って言った。
「何ですか?」
ミリア中尉がビル中尉を見る。
「昼間の作戦行動なんて大丈夫なのか?」
ミリアが言う。「敵は撤退情報で完全に油断しています。スタンレーの足なら十分昼間でも行動出来ます。それに今夜までは待てません! 時間がないんです」
「それって、敵の攻撃が近いて事か?」
「そうです。猶予がありません」
「ビル中尉は第一中隊ですね。注意して下さいね。そこのポイントは魔女がいる確率が高いですから」
ビル中尉がミリア中尉を見て少し嫌な顔をする。
「魔女がいようがいまいが、この前の新型機だっているからヤバいのは変わりないよ」
「それにローラに、また会うまでは死ぬ訳にはいかないしな」
「そうですよね、ローラさんとの約束ですよね」ミリア中尉が言うと、ビル中尉が少し照れたような顔をする。
「出撃は20分後です! お気を付けて!」
ミリア中尉がビル中尉に敬礼する。
「戦果を期待してくれ、ミリアそれじゃ行ってくる」ビル中尉も敬礼して重装機兵待機場へと向かった。
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