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第303話 魔女の正体2

エリー達は魔女の島に到着した。

 2国間和平交渉会議20日目明け方。(大陸統一歴1001年11月1日5時頃)


 ここはヒイズル帝国南部島より南へ300キロ離れた孤島、南海の魔女封印地。


 エリー達はホバーリングするランカーⅡ5号機の後方ゲートから、降下ロープを伝い次々と北岸の林に降りていた。エリー、リサ、ニコル隊の12人。地上に降りたニコル隊隊員達が短機関銃を構え周囲を警戒する。


「……戦闘があったようですね」

 エリーが倒れているヒイズル帝国警備隊の兵士達を見て言った。

 ここは情報にあった北部魔女封印施設の手前。エリー達は地図を確認して北岸の断崖石階段を降る。別働隊、皇帝護衛隊10人は南部着岸施設の確保のため先に降下していた。

 エリーは断崖の凹地施設入口のヒイズル帝国警備隊の兵士達の死体を確認して嫌な顔をする。


「内部へは、私とリサさんで行って来ます! それまでここで警戒をお願いします」


 ニコルがエリーを見て敬礼する。

「はっ! ローラ様! お気をつけて!」


 エリーとリサは開放された扉の奥へと進んで行く。照明は点灯されているが内部は薄暗い。

「生体反応、魔導反応有りません。脅威は無いようです」

 隣りを歩くリサがエリーに言った。エリーは髪をかきあげ機嫌の悪い顔をする。

「膨大な魔導残滓を感じます。かなり発散したようです。うーーん、かなりの者が暴れたようですね」


 エリーが言うとリサが尋ねる。

「魔女ですか?」


「……違うと思います。武人系の魔導残滓だね。かなりの強者ね」


 中間広間で帝国警備隊士官の死体を発見する。床の血はどす黒く変色していた。近くに刀が落ちているのを見てエリーが言う。


「かなりの剣士だったと思うけど、圧倒的な力の差があった見たいだね。相手はトッドさん並みかそれ以上か?」


「ローラ様、そんな者がここに? しかし現在全く魔導反応が有りませんが」

 リサが戸惑った顔で言った。エリーは奥の封印の間へと進む。広い空間が現れエリーは天井を見つめる。

「……いないね」


「魔女はすでにここにはいないのですね」

 リサが答えた。そうしてエリーは周囲を歩き確認するとリサを見て言う。


「魔女の魔導残滓追ってくれるかな。依代に入ったみたい」


「依代て無理だと言っていませんでしたか? 魔女の魔力に耐えれるような依代なんてヒイズルには皇族以外数人いるかいないか。それに今回該当者は所在を確認していると」

 リサは答えてエリーの顔を見る。


「魔力暴走しなかったてことは適合者てことじゃない」

 エリーはリサを見て言うと天井の箱を見上げる。

「リサさん、追跡をお願いします。早く処置をしないと」


 リサは頷き感知スキルを発動すると直ぐにエリーを見る。

「見つけました。3人ほどで行動しているようです」


「じゃあ急ぎましょう」

 エリーとリサは駆け出し入口を目指した。


 ◆◇◆


 3番隊隊長イバラキ達は南海の魔女ドーラを取り込んだ1番隊副隊長アオイ大尉と北の部隊居住区内娯楽室にいた。


「補給船の到着時刻です」

 副隊長カサマツがソファに寝そべっているイバラキを見て言った。隣りにはアオイ大尉が寝ている。


「あゝ、敵か味方かわからんが、接触してみるか」

 イバラキは起き上がると副隊長カサマツを見て言う。

「誘われてもアオイ大尉には手を出すな。死ぬぞ」


「……えっ! いや! 確かにいやらしい感情もありますがそれは大丈夫です」

 副隊長カサマツは慌てたように答えた。


「コイツは魔力の塊だ。制御も不十分だ。相手の魔力耐性が低いければ体が耐え切れず即死する」

 イバラキが顔を緩めて寝ているアオイ大尉を見て言った。そしてアオイ大尉の頬を右手でつまむ。

「起きろアオイ! 行くぞ」


「……えっ! はい」

 アオイ大尉はソファから起き上がり虚な顔でイバラキを見つめる。

(……安心しているのか? それとも図太いのか? この間で熟睡するとわ……)


「……?」


「副隊長! 装備は問題ないか」

 イバラキはアサートライフルの弾倉の交換をする。


「はっ! 問題有りません」

 副隊長カサマツはイバラキに敬礼した。イバラキは娯楽室から出てトンネル通路を移動する。アオイ大尉と副隊長カサマツはイバラキに追随した。


「……!?」

 イバラキは居住区出口で立ち止まり後ろを振り返る。


「来る! 大人数! 1個分隊」

 イバラキはアサートライフルを後ろに下げ右手で合図する。


(……これは中々! 精鋭部隊だな。ここでの戦闘は避け奥に引き込むか?)

 イバラキは考えながら後退りする。副隊長カサマツがイバラキの横に来る。


「突破しますか?」


「いや、お前達を守る自信がない。雰囲気がヤバイ……、自分と同等かそれ以上……」


 そう言ってイバラキは副隊長カサマツの肩を掴むとアオイ大尉の位置まで退いた。

「奥に引き込む。各個撃破で」


 イバラキは頷くとトンネル通路を静かに下がろうとする。入口に気配がする。


「こちらはヒイズル帝国ワダ首相閣下の要請により施設防衛に参った。ベランドル帝国皇帝護衛隊! 速やかに指示に従い出て来てもらいたい!」

 エリーの流暢なヒイズル語がトンネル通路内に響いた。イバラキは副隊長カサマツと顔を見合わせる。

「ベランドル帝国?」

 イバラキは入口に立つ戦闘服の人物を見つめる。

「声から女だが、見た目はヒイズル人ではない……? だが殺気も敵意も感じ取れないが? 強者だ」

 通路奥でイバラキはエリーを見据える。


「我々は敵対するために来たのでは有りません。指示に従ってもらえれば危害も加えることも有りません。ヒイズルのために来たのです」


 イバラキは魔力量を増大させてエリーと後ろにいるリサを視感する。

(コイツら……とんでもない。神格級かそれ以上!? そんなことがあり得るのか? ヒイズルには神格級は3人ほどいるがそれより上! 魔女か女神アルデア級てことか)


 イバラキは体に通す魔力量をさらに増大させた。体を包む光が濃い紫色に迸り始める。


「私は、ベランドル帝国魔導士ローラ•ベーカーです。どうか大人しく指示に従ってください」


 イバラキの後ろで副隊長カサマツが慌ててイバラキに言う。

「大陸の英雄ローラです。今、ヒイズルを訪問している使節団団長です」


「なんでここに? おかしいだろ? この辺境に……怪しさ満載だ」

 イバラキは軍刀を鞘から抜き構える。


「副隊長! アオイを連れて奥に逃げろ。自分が食い止める」


 イバラキは軍刀を上段に構えてエリーを威圧する。エリーは微笑み返して前に踏み出す。イバラキが声を上げる。

「警告する! ここはヒイズル帝国領だ! ベランドル帝国の領土では無い! 主権は我々にある。ローラか誰だか知らないが、これ以上近づけば排除する」


 イバラキの言葉にエリーは立ち止まり両手を上げる。

「再三申し上げた通り、私達は危害は加えません。どうぞご理解を。それに南海の魔女の依代の状態が不安定です。早めに処置を施したいのですが、貴方様では出来ない様なので、処置を出来る魔導士もおります」


(……状況把握が的確だ。コイツらは確かに敵意も殺意も感じ無いが! 信用して良いのか? このままではアオイの体も持たない。どうする?)

 イバラキの魔導闘気が揺らぐ。イバラキは再びエリーを見据えて声を上げる。

「かなりの強者と見た! どうか! 自分と一太刀交えてもらえないだろうか! それで決する!」

 エリーは瞬間的に魔力を増大、両目が朱色から真っ赤な色に変わりドス黒い煙の様な光に包まれる。トンネル通路の奥へ逃げていたアオイ大尉が反応してイバラキの方を向いて悲痛な声を上げる。

「……イバラキ危ない! あなたは強い! でもその者はバケモノです! 早く逃げてください!」


 イバラキはアオイ大尉の声を聞いて今更と言う顔をする。

「……あゝ、知っている。死の恐怖てのがどう言うものか初めて理解した。今まで圧倒的な力で蹂躙して来たが……蹂躙される側になるとは……」

 イバラキはポツリと言うと魔力を全開放する。濃い紫色の光が迸り揺らぐ。

 エリーの真っ赤な瞳がイバラキを見つめる。


(……ぐっ! なんて威圧感だ! 自分の内面が恐怖で慄いているのがわかる! コイツはまだ全力ではないまだ抑えている様だが……自分はこのレベルで全身の震えを抑えるので精一杯だ)


 エリーは腰の軍刀を抜き放つ。そして軍刀をドス黒い煙のような光が包み込む。


「それはヒイズルの宝刀! 三日月!」

 イバラキが思わず声を上げた。

 


 

 

 最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!


 これからも、どうぞよろしくお願いします。


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