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第302話 魔女の正体1

魔女ドーラはアオイ大尉ととりあえず一体化した

 2国間和平交渉会議20日目深夜。(大陸統一歴1001年11月1日4時頃)


 ここはヒイズル帝国南部島より南へ300キロ離れた孤島、南海の魔女封印地。ヒイズル帝国近衛師団別動警備隊施設内で異変が起こっていた。

 3番隊隊長イバラキ達は南海の魔女ドーラを取り込ん1番隊副隊長アオイ大尉を救出して現在、北の部隊居住区内にいた。


 北の部隊居住区娯楽室内。

「イバラキ少佐、アオイ大尉が魔女を取り込んだのは本当なのですか? 信じられませんが」

 副隊長カサマツが椅子に座りコーヒーを飲んでいるイバラキに尋ねた。


「あゝ、そうだ。厄介なことになった。もし自分がいなければここは消滅していただろう」


「……イバラキ少佐殿は、事情を把握されていたのですよね。でなければああも迅速に対応出来ませんよね」

 副隊長カサマツが強張った顔をして尋ねた。


「……聞いたよな。自分がキサラギだと。ここの詳細についても自分は知っていたのは確かだ。だが、自分はこのためにここに配置された訳では無い。たまたまだ」


「……はあ……そうですか? キサラギ准将閣下であることは戦闘魔力量を見れば理解できました」


「副隊長! 今はイバラキだ。キサラギは口にするな」


「……はっ! 了解です」

 副隊長カサマツはイバラキに敬礼した。そして娯楽のドアが開き全裸の女性が入って来る。アオイ大尉だ。


「おい! なにしてるんだ」

 イバラキがアオイ大尉に声を上げる。


「……え、なに? 風呂から上がって綺麗になったから

 アオイ大尉が困惑した顔をする。


「なんで裸なんだ。さっき言っただろう」


「いや、別に私の体でも無いし見られても平気ですよ」

 アオイ大尉が平然と答えると、イバラキは目を釣り上げて声を上げる。

「そう言う問題ではない! ちっとは女らしく恥じらえ! それに副隊長だって困っているだろうが、服を着ろ」


「キサラギの服は臭くてもう着れません! 準備くらいしといてよ」

 アオイ大尉は機嫌悪そうに言い放った。イバラキは椅子から立ち上がると、アオイ大尉の手を掴み引っ張り娯楽室の外に出て行く。

 通路トンネルに出ると備品室内に入って次々と棚を開けて何かを探す。


「男物の下着だがこれでも這いてろ。それとシャツ。これが1番小さい軍服だ」

 まとめた衣服をイバラキは機嫌の悪い顔でアオイ大尉に渡した。


「……あゝ、すまなかった。そんなに怒らなくても」

 アオイ大尉は受け取った衣類を床に置いて、着込み始める。

「この下着は緩いな。……」


「昔は神として崇められていたんだろう。少しはらしく振る舞え」

 イバラキは機嫌の悪い顔でアオイ大尉に言った。アオイ大尉は軍服を着込みボタンを止める。

「……理解しました。言葉にも振る舞いにも気をつける。だから機嫌を直して」

 アオイ大尉は急にしおらしい表情と声でイバラキに言った。イバラキはさらに機嫌の悪い顔をする。


「お前は本当にドーラなのか?」


「ええ、間違いなく」

 アオイ大尉は軍服を着込んでイバラキの前に立ち上目遣いで見つめる。

「……なんのつもりだ。可愛いでしょうアピールか?」


「はっあ! なんであなたに!」

 アオイ大尉は拳を軽くイバラキの腹部に打ち込む。イバラキは少し口元を緩める。

「まあ良い。刀は使えるのか? それと名はアオイユウコと名乗れ」


「承知しました。アオイユウコですね。まあ精神体の断片から名前は知ってましたけど。はい、ある程度は刀は使えると思います」

 イバラキはアオイ大尉の顔を見て頷くと軍帽を渡す。

「顔はあまり見せるな、女だとわかる。それを深く被れ。あとは髪をまとめて縛って顔を引き締めろ」


「……わかりました。それとあなたはキサラギで無く、イバラキでいいの」

 アオイ大尉は嫌そうな顔をしてイバラキを見つめて言った。


「とりあえずイバラキ少佐だ。お前の上官だ。言葉使いに気をつけろ」


「……へえっ! その口なんとかなりません! 今までそんな横柄な態度取られたことありません」


「……助けてやったのに、なんだ」

 イバラキはそう言って棚から軍刀を取り出してアオイ大尉に渡す。アオイ大尉は不機嫌な態度で軍刀を受け取ると腰のベルトに装着した。


 イバラキはアオイ大尉から視線を外すと無言で備品室から出て行く。

「……!?」

 アオイ大尉は慌ててイバラキを追いかけた。


 ◆◇◆


 ここはヒイズル帝国南部島南端上空高度8000m。エリー達の搭乗したランカーⅡ5号機が最大速度で飛行していた。


 ランカーⅡ5号機キャビン内。

 エリーが皇帝護衛隊第5種迷彩戦闘服を着込んで窓際のシートに座っている。隣にはリサが座って仮眠をとっていた。

 コックピットからカーター機長がやって来て声を掛ける。


「ローラ様、あと30分ほどでポイント上空です。準備をお願いします」

 エリーはカーター機長の顔を見て頷く。


「はい、了解です」

 エリーはリサの肩を優しく揺する。


「リサさん、起きてください」


「……あ、はい!」

 リサは目を直ぐに開けて上体を起こす。エリーは座席ベルトを外し立ち上がる。リサも直ぐにベルトを外し立ち上がり通路側に出る。


「ローラ様、下へ移動しますか?」

 リサがエリーに尋ねた。


「ええ、準備と最終確認しないと。今回はニコル隊ですからまあ大丈夫だけど」

 エリーはそう言って後方の床の接続ハッチのロックを回す。リサがハッチを引き上げ開放した。エリーはカーター機長を見て頷く。

「それでは行って来ます。ハッチをお願いします」


「はい、ローラ様お気をつけて」

 カーター機長は手を上げてエリーに答えた。

 エリーとリサはハッチ開口部より垂直タラップをゆっくりカーゴコンテナ内に降る。カーゴコンテナ内には両サイドに簡易シートが設置され皇帝護衛隊20人が待機していた。エリーが降りて来ると、全員が一斉に立ち上がり敬礼する。今回の作戦隊長ニコルがエリーのそばにより声を上げる。

「ローラ様! 準備は完了しております! 情報確認をお願い致します」


 ニコルが奥に設置されている情報端末モニターを指す。エリーが端末の前に行くとヘッドセットが隊員から渡された。


「周辺を偵察している早期警戒機からのデーター表示です」

 ニコルが30インチモニターを示しエリーに説明した。

「情報通り10キロ沖合に補給船がポイントに接近中です。乗員が加担しているかどうか不明ですが。予定通り放置ですか?」


 エリーはニコルを見て頷く。

「ええ、沈めるのは簡単ですけど、わからない以上しょうがないですね」


 エリーは端末を操作して早期警戒機へと通信を繋ぐ。

「こちらエンペラーワン! イーグルリーダー応答願います」


『こちらイーグルリーダー! ポイント上空高度3000警戒中! 現在、動きは観測されません』

 早期警戒機から応答が入った。


「イーグルリーダー! 経過報告お願いします」


『エンペラーワン! 報告します! 0230ポイント到着! 各センサー反応、島北部にて多数あり。その後0250から0310にて膨大な魔力を観測後、動きは確認出来ていません! 時系列での観測データーは端末へ転送しておりますので確認をお願いします。以上!』


「ご苦労様です。作戦開始後のバックアップよろしくお願いします」


『了解致しました!』

 早期警戒機との通信が切れた。エリーは端末モニターを確認してニコルとリサの顔を見る。


「魔女の封印はすでに破られたようですね。ですがワダ閣下の言っていた最悪の状況は回避出来たようですね。まあ現地に入ればわかることですが」

 エリーがそう言ってリサの顔を見る。


「情報はカミュ様から受け取っています。単純に封印を解いただけだと魔力暴走が始まり、周辺が消滅すると。しかしそうなっていない。魔女が解放されたのは間違いないのに」

 リサが端末モニターを確認しながら言った。


「よほどの術者がいれば可能でしょうけど、ヒイズルには存在しないと聞きましたけど。レベッカさんクラスの魔導レベルが必要……ヒイズル過激派内に?」

 エリーは端末モニターを眺めながら考えていた。そしてランカーⅡ5号機は魔女の封印の島まであと20分ほどに迫っていた。

 

 

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます! これからも、どうぞよろしくお願いします。

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