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第300話 近衛士官イバラキ少佐

3番隊隊長イバラキは副隊長カサマツと共に敵を撃退する。

 2国間和平交渉会議20日目深夜。(大陸統一歴1001年11月1日2時頃)


 ここはヒイズル帝国南部島より南へ300キロ離れた孤島、南海の魔女封印地。ヒイズル帝国近衛師団別動警備隊施設内で異変が起こっていた。

 警備隊主要施設が集中している標高300mの北山の麓、南トンネル入口で3番当番警備隊長イバラキは副隊長カサマツと共に、1番隊10人を片付け、縦走トンネルに入ろうとしていた。


「……イバラキ少佐、質問には答えて頂けませんか? さっきの戦闘はとても人間が行えるものでは有りませんでした。少佐は防人なのですか」


「……カサマツ、答えられない。知ればタダでは済まなくなる」


「……はい、イバラキ少佐は剣士のはずなのに、魔法も銃術も剣技も判定評価とはかけ離れていると思っただけで……他意は有りません」

 そう言って副隊長カサマツはイバラキの横に並んだ。

 イバラキは薄暗い照明に照らされたトンネル内へ入った。イバラキは後ろに副隊長カサマツを従え慎重に感知魔力を使いトンネルの奥へと進んで行く。


(……魔力確認! まずまずの手練がいる)


 イバラキは右手を挙げて副隊長カサマツを制止する。

「前方100mに3人いる。備えろ。向こうは気づいていない。さっきの者より戦闘力は高い注意だ」

 そう言ってイバラキは魔力を周囲に展開、気配を消す。

「副隊長、ゆっくり進む。援護は任せるが、撃たないでくれよな」


「……、はい、了解」

 副隊長カサマツは緊張した顔で静かに答えた。イバラキはアサートライフルを背中に回すと、ホルダーから素早く拳銃を左手で持ち弾倉を換装する。


「じゃあ行くぞ」

 イバラキはそう呟くと、恐ろしいスピードで前に駆け出す。少し遅れて副隊長カサマツも駆け出しがとても追いつけない。

(……イバラキ少佐、とんでもない人だ。とても追いつけない! 実力を隠していた? ……防人で間違いない……)


 副隊長カサマツとイバラキはあっという間に間隔が開く。薄暗いトンネル内で前方の1番隊

の剣士達が接近するイバラキに気づき刀を構えて防御体勢をとる。そして幅3m高さ2mのトンネル内で戦闘が始まった。イバラキはトンネル内前面に魔法障壁を展開して、一気に前に出てきた1番隊剣士を1人を吹き飛ばす。後ろの1人が直ぐにイバラキに斬撃を放った。イバラキが構わず拳銃を2連射すると、弾丸は光を放ち1番隊剣士は胸に2発喰らいトンネル壁に叩きつけられた。

〈げっふ!〉トンネルの側面に叩きつけられた剣士が血を口から噴き出し崩れ落ちる。


 イバラキは視線を前に構える1番隊剣士に向ける。1番隊剣士は中尉の階級章をつけている。

「1番隊カヤ中尉! やってくれたものだ! 目的はなんだ!」


 イバラキが声を上げて一気に距離を詰める。1番隊剣士は刀を上段に構えてイバラキを見据える。

「驚いた! こんな強者がいようとは……イバラキ少佐殿! あなたは何者ですか!?」


「貴様に答える必要は無い!」


 イバラキは拳銃を単射する。〈パン〉1番隊剣士カヤ中尉の右太ももを銃弾が貫く。

「ぐーーわっ!」

 1番隊剣士カヤ中尉が声を上げて膝をつく。


「……なぜ、魔法障壁を破れる!」

 1番隊剣士カヤ中尉が引き攣った顔でイバラキに声を上げた。イバラキは1番隊剣士カヤ中尉の前に立つと拳銃を単射する。〈パン〉銃弾が光を放ち薬莢が排出される。今度は1番隊剣士カヤ中尉の右腕を貫通する。

「ぐーーわっ!」

 1番隊剣士カヤ中尉が悲鳴を上げて刀を地面に落とす。

 イバラキは、うめきうずくまる番隊剣士カヤ中尉を見て言う。

「不思議か。魔法障壁を張っているのに銃弾が当たるなんておかしいだろう。少なくとも失速するはずだと」


「……ううっ」

 1番隊剣士カヤ中尉は痛みを堪えて顔を上げイバラキを見上げる。

「この銃弾は特殊対魔法処置が施してある。だから貫通する。まあ強力な魔法シールドは貫通出来ないが、貴様くらいの障壁なら問題なくダメージを与えられる。目的を答える気になったか? 次は頭を狙う。どうする? 答えるなら命は助けてやろう」


「……答えるはずなかろう」

 1番隊剣士カヤ中尉は痛みを堪えながら答えた。


「ふっ! そうか、だが魔女の封印を解くなど考えていないのだろうな。絶対に失敗する。貴様達が絶望するだけだ。そもそも違う」


 イバラキはそう言って拳銃発砲する。そして1番隊剣士カヤ中尉は地面にうつ伏せに動かなくなった。

「……副隊長! 急ごう時間が無い」


「はっ!」

 副隊長カサマツが答えイバラキの後ろにつく。先程までと違いイバラキは構わず感知魔力を拡大展開させて疾走する。


「イバラキ少佐! 着いて行けません!」


「……魔力を振り絞って着いて来い! 時間が無い」

 イバラキは後ろを一瞬振り向くと声を上げた。イバラキは魔力障壁を拡大展開させて副隊長カサマツを包み込む。

「楽になったか! カサマツ! お前は副隊長だ部下の無念を果たせなばならない」


 副隊長カサマツはイバラキに引っ張られるように加速する。

「もう出るぞ! 備えろ!」

 トンネル出口付近に近づくとカサマツは急減速をする。慌てて副隊長カサマツも足を止めてイバラキの背後で立ち止まった。

「10人くらいだな。副隊長! 銃の腕を見せろ! 心配はいらない自分がフォローするから安心してやってくれ」


「……!? はっ! 了解!」

 副隊長カサマツはアサートライフルを構え、イバラキの前に出る。そして気配を消してゆっくりとトンネルの入口付近まで移動する。

(こちらは警戒していない。トンネル内は仲間がいるから安心しているようだ)


 副隊長カサマツはトンネル入口から外へ飛び出すとアサートライフルを的確に連射する。

〈パン、パン、パン、パン、パン〉

 1番隊剣士達が銃撃に気づき防戦体制を取ろうとするが、魔法障壁は打ち砕かれ次々と剣士達がその場に倒れていく。3人が一気に副隊長カサマツに刀を振り上げ詰めようとするが、後方から閃光が飛び剣士達3人がその場に崩れ落ちる。

「イバラキ少佐! ありがとうございます!」

 直ぐに副隊長カサマツはイバラキに礼の声を上げた。周囲にはもう抵抗する者はいない。


「このライフル凄いです! 魔法障壁を破れます」


「あゝ、対魔法用銃弾だからな。だが格上には注意が必要だが」

 イバラキはそう言って周囲を感知魔力を展開して確認する。


(……やはりもう、北トンネル内に入っている)


「副隊長! 行くぞ」


 イバラキは魔力を上げて身体強化を図る。

「ここからが本番だ。油断するな」

(本当に、魔女を開放するつもりなのか!? 間に合うか)


 イバラキと副隊長カサマツは真っ暗な海沿いの小道を北トンネルを目指して駆け出す。途中数名の1番隊剣士と遭遇するが、副隊長カサマツが難なく撃退する。

 そして海沿いの断崖に作られた石階段を飛ぶように降ると北トンネル入口に到着した。

「……入口付近には誰もいない」


 いつもなら警備隊兵士が5人ほど配置され警備にあたっているが姿は見えない。イバラキは入口の岩陰を確認して目を見開く。

「……クキ曹長、すまない」

 岩陰に重なるように隠されている3番隊兵士達。副隊長カサマツは顔を顰めて怒りに震える。

「……」


「行くぞ」


「はっ!」


 北トンネルの鉄製の開きの大きな扉は開放され内部の照明は点灯されている。イバラキは内部に入り20畳ほどフロアーで直ぐに奥の扉を確認する。

「扉は開放されている」

 イバラキはドアを押し開き内部へと進む。副隊長カサマツも続いて入った。内部は金属で覆われた幅2m高さ2mほどの通路が薄暗い照明で照らされている。奥の状況はよく見えない。


 イバラキは拳銃の弾倉を換装する。そして2人はゆっくりと通路を奥へと進んだ。100mほど進むと金属扉があり先程のように押し開いた。内部は広く50畳ほどの空間が現れる。


 そして影が走ると、イバラキは拳銃を正面方向へ連続発砲する。副隊長カサマツは慌てたように周囲を確認する。


「3番隊長イバラキ少佐! あなたがそれほどの実力者だったとは! 秘匿要員だったのですね」

 正面に少佐の階級章をつけた刀を構えた士官が現れた。イバラキはその士官を見据える。


「1番隊隊長! キトウ! やってくれたものだ! 誰にそそのかされた! こんなことしても無駄だ。魔女の封印の意味を理解して無い奴らの勘違い。本当に嫌になる」

 そしてイバラキは魔力を解放して体が紫色に輝き始める。それを見て1番隊隊長キトウは顔を引き攣らせる。イバラキは拳銃をホルダーに収めると軍刀を鞘からゆっくり抜き両手で握り構える。


「久しぶりだ。こんなに冷静さを失うほど怒りに震えるのは」

 イバラキは息を吐き呼吸を整えるとさらに、魔力量を増大させる。後ろにいた副隊長カサマツはイバラキの魔力に反応して自分が震えていることに気づいた。


 

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!

 これからも、どうぞよろしくお願いします。

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