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第299話 南海の孤島2

南海の魔女封印の島

 2国間和平交渉会議20日目深夜。(大陸統一歴1001年11月1日2時頃)


 ここはヒイズル帝国南部島より南へ300キロ離れた孤島、南海の魔女封印地。ヒイズル帝国近衛師団別動警備隊施設内で異変が起こっていた。先ほど当番警備隊長イバラキは警備司令長アマミ大佐の部屋でアマミ大佐の死亡していた。そして金庫から地下施設内隔壁扉の鍵が無くなっていたのである。

 当番警備隊長イバラキは思考が混乱し焦っていた。

(……アマミ大佐が殺された。外部から上陸した気配は無い! そして通信連絡系統の不通! 犯人は内部の者? だが目的はなんだ? アマミ大佐が安易と殺される相手とは誰だ? 100人剣士の上位者であるアマミ大佐を……隊長クラスか? 一連の状況から複数人で動いている事は間違いないと思うが……迂闊に助けを求めて良いものか)


 当番警備隊長イバラキはベットに横たわるアマミ大佐を見つめて軍刀の柄を握り締める。

「……迂闊に動けんな。司令室に戻って自分の隊を集めるしかないか」


(反乱分子がいる事は間違いない。一体どうして近衛師団は身分や出身の管理が厳しい怪しい者はそもそもいないはずだが……だが、怪しいとすれば1番隊か? 急遽編成され、順番を繰り上げて配属されたから人員もよくわからない。外部の意向……)


 当番警備隊長イバラキは魔力を通して気配を消してトンネル通路を進む。奥の同階層の居住区域へと周囲を警戒しながら入ってみる。壁に埋め込まれた常用灯が通路を薄暗く照らす。

 当番警備隊長イバラキは警戒しながら慎重に感知魔法を展開して確認してみる。

(まあ予想通りか……。生体反応が無い。この区域はすでに制圧されている様だ)


 当番警備隊長イバラキは静かにトンネル通路を戻り、居住区域から上部の司令室へ。


「……!?」

 司令室の金属ドアが開いている。ゆっくりとドアのそばに近づき内部を確認する。

(……! やられた……すまない)

 司令室の床には3番隊の通信下士官達が無惨な姿で倒れていた。当番警備隊長イバラキは確認するまでも無く死亡していることがわかった。

(……なんてことだ! 刀で斬りつけられている。ためらい無く……悪い! 自分がうかつだった)

 当番警備隊長イバラキは通信下士官達の状況から相手は油断している、通信下士官2人を一気に斬りつけている。かなりの手練、人を殺すことに慣れている。


(副隊長は無事だろうか? 彼も危険察知能力は高い。とりあえず合流したいが……)


 当番警備隊長イバラキは通信機器を見て破壊されていることに気づいた。

「ご丁寧に……」


 当番警備隊長イバラキはため息を吐いて、隣りの保管倉庫に移動する。保管倉庫内に気配が無いことを確認して金属ドアを静かに閉めると、壁のスイッチを上に切り替えた。照明が点灯すると、当番警備隊長イバラキは棚を開いて拳銃を取り出す。拳銃弾倉を3個取り出して隣りのアサートライフルを手に取り弾倉を装着して安全装置を解除する。そして別の棚から手榴弾を取り出し床に並べた。


(奴らは武器には手をつけていない様だが、まあ武器は破壊しておくほうが良いだろう)


 ここに支給配備されている火器類は全てベランドル製の最新モデルだ。通常正規軍よりはるかに良い装備品が備えられていた。そしてここがいかに重要な施設か当番警備隊長イバラキには理解出来た。


(奴らはここの武器を必要としていない様だ。十分な装備を持ってことを起こしたと……、どう見ても突発的で無く、計画的行動。通信の遮断、有力者の殺害、そして活動人数の少ない夜間を狙って……。まったく面倒な事に巻き込まれた。ここはヒイズルでも安全な場所では無かったのか? 閣下はそう言って静かに暮らせると勧めてくれたが……。今は嫌な予感しかしない)

 当番警備隊長イバラキは周囲へ徐々に感知魔力を拡大、生体反応が無いことを確認した。


「……3番隊の生存者は居ないか。好き放題やってくれたものだ」

 イバラキは呟くと、棚から発火装置を取り出し手榴弾の入った箱をドア付近まで引きずる。


(鍵は3個必要。もう手に入れているだろう? なら北の断崖に行くのか? まさか復活なんて考えていないだろうと思うが?)


 当番警備隊長イバラキは保管倉庫の金属ドアを閉めて発火装置を起動する。

 そしてトンネル通路を進みドアを開けて頂上付近のヤグラに出る。


(……! 南側で複数人が争っている。2番隊宿舎壕か? やはり20人以上は加担しているのは間違いないようだ)


 当番警備隊長イバラキは急いでヤグラ下の土手に下りると、南側の小道を警戒しながら急いで下る。頂上から300m、麓から資材搬送ケーブル台車があるが動かせば気付かれる恐れがあるので使えない。台車プラットホームでイバラキは考えていると気配を感じる。覚えのある気配。

「……! カサマツ!?」


 物陰からひとりの士官が姿を現す。表情は怯えて狼狽している。

「イバラキ少佐……ご無事で……」

 力無く声を発する3番隊副隊長カサマツ大尉。


「副隊長も無事だったか。下の者は全員やられた……」

 イバラキがそう言って副隊長カサマツに近寄り顔を見た。

「……で、カサマツ副隊長は、何を見た」


「……はい、待機所の部下達が1番隊の者達に斬殺されたところを、私は気配を消して潜んでいました。情け無いですが……相手は10人ほどのかなりの手練でした。私などでは……、申し訳有りません。そして給電設備、電波塔ケーブルは破壊されていました。30人規模が動いていると思います」

 副隊長カサマツが目を潤ませながら、イバラキを見て弱々しい声で言った。


「そうか、よく飛び出さず我慢した」

 イバラキは副隊長カサマツの肩に手を添えて優しく言った。副隊長カサマツは潤んだ目でイバラキを見てポツリと言う。

「……いえ、恐怖で動けなかっただけです。誇れるものでは……」


「……では、行くか。対処しなけらば、マズイ事になる」


 イバラキは2丁背中に背負っていたアサートライフルの一丁を副隊長カサマツに渡す。

「目的はなんですか? こんなことしてなんになると。……まさか魔女の解放……と」


 副隊長カサマツは言葉を途中で止めてイバラキの顔を見る。

「あゝ、多分本気でやるつもりだと。しかし封印はそう簡単には破壊出来ない。魔道具と他ににも必要なものがある」

 イバラキは拳銃をベルトホルダーに収めると副隊長カサマツを見て言う。


「下に降りる。時間が無い! 行くぞ」

 そう言ってイバラキは搬送ケーブルレール横の点検タラップを指差す。


「……!?」


「あゝ、そうだこれで一気に降りる。カサマツ魔法は使えるだろう。だったら自分の後ろをついて来い問題ない」

 副隊長カサマツは悲しい顔をしてイバラキを見る。

「……じょ、冗談ですよね。死にますよ」


 イバラキは笑顔で副隊長カサマツを見て肩を叩く。

「この状況で冗談を、本気だ。まあ心配ない」


 イバラキは魔力を発動開放する。それを見て副隊長カサマツは驚いた顔をして尋ねる。

「イバラキ少佐殿は……魔法士なのですか? 剣士だったはずでは?」


「気にするな。じゃあ行くぞ!」

 イバラキは搬送ケーブルレール横の点検タラップの手すりに足を掛けると、副隊長カサマツに合図する。イバラキは魔法障壁を展開副隊長カサマツを覆い一気に2人は滑り降り始める。  

 暗闇の木々の間を猛烈なスピードで降って行く。副隊長カサマツはイバラキの後ろで顔を引き攣らせていた。そして、あっという間に麓付近に到達、イバラキは魔法障壁をコントロールして減速するとタラップ手すりから飛び降りる。周囲を警戒しながら木々の間に身を潜めた。


(……! やはりいるか! 洞窟入口に10人……、他は内部と周辺制圧てところか)

 イバラキは慎重に感知魔力を拡大探っていく。


「副隊長、援護を頼めるか? 前の10人を片付ける」


「……えっ! やるんですか? 我々だけで……」

 副隊長カサマツは緊張した顔をする。


「あゝ、多分応援は期待出来ない。やるしかない」

 そう言うとイバラキは一気に入口の前に飛び出すとアサートライフルを連射する。

〈パン、パン、パン、パン、パン〉銃声が響いて次々と入口の前にいた将兵が呻き声と悲鳴を上げながら倒れていく。イバラキは素早く右手で軍刀を抜き放つと、入口の将兵達に反撃することさえ出来ぬ斬撃を放った。3人が一気に斬り伏せられた。そして、ものの30秒ほどで10人を制圧した。後ろで待機していた副隊長カサマツは驚愕の視線でイバラキを見つめる。


「……イバラキ少佐……あなたは一体」


 

 

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