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第295話 女神アルテア

エリーはソアラと女神アルテアについて話す

 2国間和平交渉会議18日目夜。(大陸統一歴1001年10月31日21時頃)


 ここはヒイズル帝国ナカノキタ市港湾1号岸壁。グラン連邦国軍最新鋭ミサイル巡洋艦アテナ号が接岸していた。巡洋艦アテナ号艦長室内。


 エリー達は急報を受け今後について話し合っていた。艦長室にはエリー、クレア艦長、ソアラ、ミスズの4人がいる。状況はヒイズル皇宮が急襲を受け第2皇女ヒロカが連れ去られ行方不明なった。ヒイズル帝国は現状を把握出来ていない混乱状態。

 エリーはテーブルの上の箱からチョコクッキーを一枚取って口に入れる。

「……」


 ソアラがエリーを見て言う。

「オオカワに戻りますか? セリカさんからはもう敵の痕跡はオオカワには無いとのことですが」


 エリーはチョコクッキーを噛み砕き飲み込む。

「ソアラちゃん、もうオオカワには居ないでしょう別の場所ですね。やったのはヤマノでしょう多分」

 エリーはそう言って紅茶カップを手に取った。ソアラも頷き顔をクレア艦長に向けると、間を置いて言う。


「ヒイズルの神アルテアが関与したのではないかと、まだ特定出来ませんが……。ヒイズル北部島に弱いですが力を感じます。ある程度予想はしていましたが」

 ソアラはそう言ってエリーを見つめる。


「……女神アルテア•テラス……、安寧の女神だったよね。セレーナとは関係はあまり無かった。ヤマノ剣士が持っていた女神の加護はアルテアのものだったんだね。どんな女神スキルを持っていたんだったかな……?」


 エリーはそう言って椅子から立ち上がり、ソアラを見つめて言う。

「アルテアの居場所を探ってくれるかな。早急にヒロカ皇女を拐った理由を探らないと。まさか人質じゃないよね」


 ソアラはエリーを上目遣いで見つめて言う。

「多分……依代にするつもりだと思います」


「……はっあ、そうだよね。早く手を打たないとまずいね。猶予は1週間てところかな」

 エリーは嫌な顔をしてしソアラを見つめる。


「そうですね。最短4日でしょうか」

 ソアラは直ぐに答えた。そしてエリーはソアラと伝心念話で尋ねる。

《……女神アルテアとは事前コンタクトは当然やってるよね? まあ相手が答えるかは別としてだけど。……過去に何かしらやらかしたのだから遺恨が有るのですか》


《エリー……それは無理でした。アルテアは存在を消して消息が不明だったんですからね。今回の件でやっと出て来た感じですよ。でもお陰で魔力発動痕跡から居場所は、ほぼ特定出来ました》

 ソアラは少し機嫌悪そうな感じで伝心念話を返してきた。


「……友好的ではないよね。これじゃあ無駄な争いしなきゃあならない。面倒ですよ。戦力の消耗は避けたいのに、なんとか話し合いはならないのですか」

 エリーが目を細めてソアラを見て言った。


「……エリー様」

 クレア艦長が心配そうに声を掛けた。エリーは椅子にゆっくり座ってチョコクッキーを一枚取って一口かじり、微笑み言う。

「予定は変更です。今夜中にソウイチロウ様に会います。ミスズさん案内をお願いできますか?」


 ミスズは戸惑いソアラの方を見る。

「……」


 クレア艦長が少し驚いた顔をしてエリーに言う。

「エリー様! 安全が確保されていません。それは認める訳には!」


「クレアさん、今夜中にソウイチロウ様に会って、明日はヒロカ皇女殿下を救出しなければなりません。時間が無いのです」

 エリーは穏やかな表情をしてクレア艦長を見つめる。クレア艦長は諦めた顔をして言う。

「……はい、承知致しました」


 ◆◇◆


 ここはヒイズル北部島、旧王国ヤマノ自治領区キタハラ市、郊外の塀に囲まれた周囲3キロほどの神殿エリア、奥の殿地下階層。


 研究施設のような室内、ヒロカが透明なカプセルに浮かぶ全裸の少女を見つめ微笑んでいる。後ろに控える神殿長ヒイラギが声を掛ける。

「ヒミカ様、これで一安心ですね。あとは覚醒まで時間が稼げるかどうかですが……」


 ヒミカは振り返って神殿長ヒイラギを見て言う。

「ヒイラギよ、まあ大丈夫じゃ。皇宮でも大した強者はおらなんだ」


 神殿長ヒイラギは余裕の笑みを浮かべるヒミカを見て心配そうに言う。

「ベランドルの魔導士ローラらしき者の気配がありませんでした。おかしいと思いませんか? 皇宮近くにいたはずなのですが」


 ヒミカは神殿長ヒイラギの肩を手を添えて視線を合わせる。

「怯えることはない。女神の加護を持つ者であることは間違いないじゃろうが……。女神ではない。女神ローゼの使徒では、我と同等くらいじゃ」


「はい、申し訳有りません……」

 神殿長ヒイラギはヒミカに頭を下げた。


「奴らもまさか、転移装置が皇宮の地下にあるなぞ思いもよらなかったであろう。我らに慌ててふためいておった。皇女ヒロカが忽然と姿を消したのだからどう思っておるじゃろうか」

 ヒミカは意地の悪い笑みを浮かべて再びカプセルに浮かぶ少女を見つめる。


 後ろに控える神殿長ヒイラギがヒミカの背中を見て言う。

「……マキの弔いをしてやりたいと思います。それでは失礼致します」

 神殿長ヒイラギは一礼すると部屋から出て行った。ヒミカは振り返て機器の作動音しかしない室内を見渡す。

「……」


 直ぐに部屋の中央に白い光の粒子が集まると人の姿を形成する。ヒミカはそれを見て膝付き頭を下げた。

「主、アルテア様」


 光は収束して黒髪の女性がヒミカを金色の瞳で見つめる。

「ヒミカよ。強い魔力を発する者が来ておる。我と同種の者じゃ」


 ヒミカは跪いたまま顔を上げて女神アルテアを見つめて尋ねる。

「それは大陸の女神ローゼでしょうか?」


「いや、違うおそらく目覚めたセレーナじゃ」

 女神アルテアは金色の瞳を細めて答えた。


 ヒミカは少し間を置いてさらに尋ねる。

「女神セレーナ? 女神ローゼと対立していたはずなのでは? 力を奪われて封印されたと聞いておりましたが……。復活したのですか? しかしなぜ……、もしかして今ローゼと協力関係にあると」


 女神アルテアは金色の瞳を見開いてヒミカを見て言う。

「……ローゼの気配は無いが、セレーナが自力で復活したとは思えん。女神ローゼが関わっているには間違いない。じゃがセレーナが本来の力を取り戻しているのなら、我では対抗出来るかどうか……。今更、女神覇権を争うのもおかしなことじゃ……。1000年前に不可侵を結び、我は東方に引っ込んだのに、ローゼは400年前にローゼ教信徒を送り込んで来よった。そして南からは邪教が上がって撃退したのじゃが……まあ良い。ヒミカ、我はしばらく動けぬ。よろしく頼む。そなたと、あの者共に力は与えた。4日ほどはなんとかなるじゃろう。それに我を潰すつもりならとっくに来ておろう」


 そして女神アルテアの周りに光が渦巻き消失した。ひとり残ったヒミカは跪いたまましばらく動かず顔を緩める。

「……」

 そして立ち上がるとカプセルの少女に目を向けてしばらく眺めてから部屋を出て行った。

 


最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます! これからも、どうぞよろしくお願いします。

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