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第285話 ソウイチロウとの接触

ソアラとソウイチロウは話しをする。

 2国間和平交渉会議18日目早朝。(大陸統一歴1001年10月31日6時頃)

 ここはヒイズル帝国、首都オオカワ市より北へ300キロほど離れた港湾地方都市ナカノキタ市。郊外ナカノ川沿いの農村部民家。


 民家の20畳ほどの客間のテーブルにソウイチロウ、ヤマモトの反対側に先ほど到着した黒髪セミロングのソアラとミスズが座っていた。ソアラは周辺の気配に若干の苛立ちを覚えながソウイチロウへ挨拶をする。

「初めまして、ベランドル帝国魔導士ソアラ•アルベインです。大魔導師ローラ様の直属魔道士をしております。今回、要請によりお伺い致しました」

 ソアラは流暢なヒイズル語で挨拶すると頭を下げた。ヤマモトが驚いた顔をしてソアラを見つめている。ソウイチロウはソアラを見て微笑み頭を下げた。

「私がソウイチロウです。現在王国政権軍長を務めております。ソアラ殿にはお越しくださり感謝致します」


 ソアラは微笑み再び頭を下げた。

(……殺気と警戒の雰囲気が周囲に10人ほどいますね。まあ、大歓迎とはいかないとしても、これは気に入りませんね)


 ソウイチロウはソアラを見て微笑み考えていた。

(ソアラ•アルベイン! ひとりで乗り込んで来るくらいだから強者なのだろうが!? それとも大バカものなのか? 警戒心が感じられない……。見た目は幼い少女? よほど余裕があるのか……。ヒイズル語も余裕で使いこなして気配は穏やかだ)


 ソアラはソウイチロウに笑みを浮かべながら尋ねる。

「それで、ご用件はローラ様との面会を希望と伺いましたが。面会の目的をお伺い致しましす」


 ソウイチロウはソアラの顔を見て少し緊張した様な声で答える。

「ソアラ殿にお礼を申し上げます。我々の要望に応えて迅速にお越し頂き、単身での訪問、信用頂いたと認識しております」


 ソアラはソウイチロウを眺めて偽装スキルを解除すると、黒髪が金髪に変わり瞳の色がグリーンに変わる。ヤマモトとソウイチロウが少し驚いた顔をする。


「……ソアラ殿のそれが本当の姿ですか?」

 ヤマモトが戸惑った顔で尋ねた。


「はい、ヒイズルでは目立ちますからね」

 ソアラは微笑み答えて、ソウイチロウを見て反応を探る。

(揺らぎは無いか? 魔力レベルは高いはずですが。私がもう少し開放すれば反応するのかしら?)

「ソウイチロウ様! お尋ねしたお答えを頂きたいのにですが、お願いします」

 ソアラが少し語気を強めて尋ねる。そしてソウイチロウを微笑み見つめた。


「大陸の英雄であるローラ様にお会いして意見を交換したいと思っております。このヒイズルの最適解はどこにあるのか……」

 ソウイチロウが少し嫌な顔をしてソアラに答えた。


「そのような事ですか? 助力が必要とかそう言うことでは無いのですか?」

 ソアラは魔力を若干開放してソウイチロウを見つめる。

「……!? ソアラ殿はどんなお答えを求めてらっしゃるのかわかりかねますが、これは本心です」

 ソウイチロウは無愛想な顔をして答えると、ソアラはそれを聞いてゆっくり優しく言う。

「では、ローラ様との面会は必要無いと判断致します。現状、ソウイチロウ様の話を聞く必要性は感じませんので。お話しはこれまでと致します。ローラ様はヒイズル帝国との友好関係を望んでおられます。ヒイズル人民の支持をほとんど得ていない、ソウイチロウ様勢力への加担はあり得ません」


 ソウイチロウは服部息を吐いてソアラを見つめて言う。

「では、なぜ、私にわざわざ……それを伝えるためにソアラ殿は参られたのですか?」


 ソアラは正座から足を投げ出して、微笑みながら上体を起こす。

「すみません! 足を崩します。お伝えすることはそれでけでは有りません」


 ソアラは両足を伸ばしてソウイチロウを見て言う。

「ソウイチロウ様に会いたいと言う方がいるのです。今回使節団に同行しているのですが。3年前のオオヨドでの動乱事件の関係者です。どうされますか?」


 ソウイチロウはゆっくりと立ち上がりソアラを見つめて言う。

「その方とは紫色髪のエリーとか言う少女ですか?」


 ソアラは上目遣いでソウイチロウを見て微笑み答える。

「……ええ、今回、グラン連邦国軍派遣使節団武官として同行しております。エリー•ブラウン中佐です。ソウイチロウ様の消息を以前より調査していたようですが……」


 ソウイチロウは怪訝そうな顔をしてソアラを見る。

「ソアラ殿……そのエリー殿のために動いたと?」


 ソアラはソウイチロウを見つめたまま答える。

「いえ、ローラ様のご指示です。ローラ様とエリー中佐は友人関係です。そのためエリー中佐には色々気に掛けていらしゃるのです」


 ソウイチロウは少し驚いた顔をしてソアラを見る。

「……そうなのですか? ええ、私もエリー、殿と話しをしてみたいですね」


 ソアラは頷き視線を隣りのミスズに移す。

「……?」


 ソアラは両足から痺れが引いた事を確認して」、タタミに両手を一旦ついて立ち上る。

「ソウイチロウ様、ミスズ様をお借りします。よろしいですか?」



「ミスズをですか? ええ……、人質ですか?」


 ヤマモト慌てて会話に割り込んで来た。ソアラはヤマモトを見て頭を下げて言う。

「ローラ様と合流したいのですが、私ひとりでは流石に無理なので」


 ヤマモトが安心したように言う。

「あゝ、そうですよね。いくらヒイズル語が堪能でもおひとりでは……はい、どうぞミスズをお使いください」


 ミスズは嬉しいそうにソアラを見つめて言う。

「ソアラ様、お役に立てるよう頑張ります」


 ソウイチロウはヤマモトを見て口を緩めて言う。

「朝飯の準備を、頼む」

 ヤマモトは頷き答える。


「……はい、ソアラ殿の分もですね」


「あゝ、そうだ。トヨミに伝えてくれ」

 ソウイチロウはそう言ってテーブルの反対側に周り込むと、ソアラをマジマジと見て言う。

「ソアラ殿、失礼とは思いますが……本当人形のようです。こんな綺麗な髪も見たことが無い」

 そう言ってソウイチロウはソアラの金髪に手を伸ばそうとする。ミスズが慌ててソウイチロウの手を払う。

「ソウイチロウ様! ソアラ様に無礼です。何をなさるのですか!」


 ソウイチロウは驚いた顔をして声を上げる。

「あゝ、いや、違うんだ。そんなつもりは」


 ソアラは微笑みソウイチロウを見つめる。

「私はそんなに魅力的ですか?」


「……いや、うん、確かに綺麗ではあるけど……」

 ソウイチロウは言葉を濁して答えた。

(ソアラ殿は確かに天使のように可愛いが、せめてあと5年くらいしないと恋愛感情は湧かないよなぁ)


 ヤマモトは客間から出ると、直ぐに武装して備えていた配下達に警戒を解くよう指示を出した。

 

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます! これからも、どうぞよろしくお願いします。

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