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第282話 訪問者ミスズ

巡洋艦アテナ号にソウイチロウの使者ミスズが訪れる

 2国間和平交渉会議18日目深夜。(大陸統一歴1001年10月31日2時頃)

  ここはヒイズル帝国ナカノキタ市湾内域、岬の端1キロほど沖合。グラン連邦国軍最新鋭ミサイル巡洋艦アテナ号と護衛駆逐艦3艦が投錨停泊していた。


 巡洋艦アテナ号警備隊尋問室、部屋には6畳ほどの部屋に机と椅子が4脚置かれている。

 クレア艦長が警備隊士官と部屋に入ると女性警備下士官と通訳担当官が姿勢を正して敬礼する。

「トーラス艦長! お待ちしておりました!」

 クレア艦長は2人に冷たい視線を送りゆっくり敬礼した。

「ご苦労!」

 奥の椅子に黒髪の10代後半くらいの女性が座っている。女性は海軍用トレーナーを着込んでいた。そして女性はクレア艦長を見ると立ち上がり緊張した顔で頭を下げた。

「わたくし、ヤマモトミスズと申します。このような強引な形での面会になり大変申し訳ございません」


 クレア艦長は一礼して冷たい表情で答える。

「私は、この艦隊の指揮を任されているクレア•トーラスです。本来なら乗艦は認めませんが、特例処置として私が認めました。それより大陸共通語を喋れるのは驚きですね。言語に関して問題無いなら通訳担当官はさがらせますが、いかがしますか?」


 ミスズは強張った顔でクレア艦長を見ると間をおいて答える。

「……いえ、共通語に自信は有りますが、誤解を招いては困りますので、通訳の方は同席をお願いしたいと思います」


 クレア艦長はミスズに右手で椅子に座るよう即した。ミスズは一礼すると椅子に座る。

「では、伺います。今回、単身で乗りこまれ理由を」

 クレア艦長が尋ねるとミスズは頷き答え始める。

「はい、その前に親書を持て来たので、ご確認をお願致します。先ほど身体検査を受けた際、没収されましたのでお願いします」


 クレア艦長は後ろに控える、警備士官を見る。

「はい、これです」

 警備士官がクレア艦長に封書を手渡す。

「これは? 開封しても?」

 クレア艦長はミスズに尋ねる。

「はい、問題有りません」

 ミスズはクレア艦長を見つめて頷き答えた。クレア艦長は封書を開封して中身を取り出してしばらく無言で目を走らせ確認する。

「……!?」

 クレア艦長は直ぐに声を上げる。

「ソアラ様をここへ! 至急だ!」


「はっ! 直ちに!」

 警備士官が敬礼すると慌てて尋問室を飛び出して行く。クレア艦長は視線を前に座るミスズに向けてけてを見据える。

「ヤマモトさんよろしいでしょうか。どう言う意味でしょうか? これは私の立場で判断出来る内容では無いので問い合わせが必要です。少し時間が必要です」

 クレア艦長は冷たい表情でミスズを見つめる。ミスズは緊張した顔で答える。


「はい、理解しております。しかし、大陸では女性が多数重要ポストに着かれていると聞きましたが、本当なのですね。この船でも多く女性をお見かけしました。ヒイズルではとても考えられないことです。トーラス様もこの艦隊の責任者でいらしゃる」


 クレア艦長はミスズを見つめる。

「はい、そうですね。ですが海軍はまだまだです。艦隊配属の将官クラスがおりませんから」


 尋問室のドアがノックされるとクレア艦長が直ぐに答える。

「入れ!」

 ドアが開き警備士官が入室して敬礼した。

「ソアラ様をお連れ致しました!」


 それを聞いてクレア艦長は椅子から立ち上がりドアの方へ体を向ける。

「ソアラ様、お疲れのところ申し訳ありません」

 警備士官の後ろからソアラが姿を現す。金髪セミロング、グリーンの瞳の少女。そしてミスズは美少女に目を奪われた。

(……すごい! なんですか!? この世の中にこのような美しく可愛いものが存在するとは……言葉で表現出来ない)


 ソアラはクレア艦長に丁寧に頭を下げると不満を言う。

「クレア中佐、帰投したばかりですよ。休めると思ったのに」

 ソアラは少しほっぺたを膨らませながら言った。クレア艦長は今までの表情を崩し申し訳なさそうな顔をして頭を下げる。

「ソアラ様、申し訳ありません。事態の判断が急がれますのでお越し頂きました」


 ソアラとクレア艦長のやり取りを見てミスズは、この美少女がクレア艦長より上位の立場であることを理解した。

(ベランドルやグランは実力評価主義とは聞いていましたが……ここまでとは!? 一体この美少女はいくつなのだろう? 王族か何か? でも身分制では階級や立場は決まらないて言っていたと思うけど)


 ソアラが視線をミスズに向けて微笑み一礼する。

「わたくし、ベランドル帝国魔導士、ソアラ•アルベインと申します。幼く見られますが、年齢は18ですので」


 ミスズは慌てて立ち上がり頭を下げる。

(……18! 嘘でしょう!? 私と一緒! それでも艦隊責任者より立場が上って!?)


「……申し訳ありません! あまりの美しさに驚いてしましました。私はヤマモトミスズと申します。ソアラ様があまりにお若く見えるので失礼致しました」


 ミスズは再び頭を深く下げた。そしてソアラはミスズのそばにより上目遣いで見つめる。

「ミスズ様でよろしいかしら、親書の件伺いました。ローラ様と面会したいとのことですが」


「……はい、そ、そのような申し出ですが、どうかよろしくお願い致します!」

 そう言ってミスズは後ろへ退き膝をついて頭を深く下げた。

「ミスズ様、大変申し訳ないのですが、それは現状難しいと思います。ローラ様はヒイズル帝国訪問中であり、ミスズ様は反乱組織側であると認識しておりますから……、ヒイズル帝国との友好関係を構築することを目的とする、ローラ様の意に反してお会いになることはありません」

 そう言ってソアラは屈み込んでミスズの顔を見る。

「……」

 ミスズはソアラの手を振って嘆願する。

「どうかソウイチロウ様と一度で良いのでお話しをお願いします! どうか!」


「……? ソウイチロウ?」

 ソアラは少し考えたような顔をしてミスズに尋ねる。


「ソウイチロウ様とはミスズ様の主ですか?」


「はい! そうです。現状私達のリーダーです」

 ミスズがソアラに悲壮な顔をして答えた。ソアラはミスズの両手を握り締めて微笑む。

「良いでしょう。ローラ様へ伺ってみますね」


 クレア艦長がソアラの顔見て少し困った顔をする。

「ソアラ様、本艦は0500に出港する予定です。予定変更は無理かと思いますが」


「そうですね。それは問題有りません。とりあえず私をミスズ様と一緒に岸まで運んでください」

 ソアラはそう答えると立ち上がり、偽装スキルを発動する。髪色が金髪から黒色に変わり、瞳の色がグリーンから茶色に変わった。

 尋問室にいた者達が驚いた顔をしているとソアラは微笑みながら言う。

「私がとりあえず、ソウイチロウ様に会って来ます。もちろんローラ様の許可を得てからですね」


「……エエ! それは」

 クレア艦長がいつもの沈着冷静な雰囲気から一変、慌てて声を上げた。


 

 


最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!

 これからも、どうぞよろしくお願いします。

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