表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
294/447

第279話 ヤマノ上位剣士ヒイラギ

エリーはヒイラギ•マキくんを圧倒する。

 2国間和平交渉会議17日目深夜。(大陸統一歴1001年10月30日23時頃)


 ここはヒイズル帝国首都オオカワ市、中央区官庁街。四方塀に囲まれた美しい白亜のヒイズル来賓館。


 来賓館正門側、セリカ率いる皇帝護衛隊と、ヤマノ特戦隊隊長ヤマキタ率いる特戦隊剣士隊の戦闘が行われていた。そしてセリカを救援にエリーの護衛兼メイドのニコルが、ヤマノ特戦隊隊長ヤマキタ、女性剣士ヒイラギを抑え牽制していた。

 女性剣士ヒイラギは、周囲の魔力感知が上手くいかないことに不安を感じる。

(裏門のタムラ様の部隊反応が全く感知出来ない……! まさか全滅……?)


 正門側突入、ヤマノ特戦隊剣士隊は戦闘開始から数を徐々に減らし、現在隊長ヤマキタ周辺に集まっている者だけとなっていた。弱ったセリカを仕留めようと何度か試みたが、双剣のニコルにより防がれた。

 その上、隊長ヤマキタが負傷する有り様であった。女性剣士ヒイラギは最期の賭けに出る。


「ヤマキタ様! せめてあの剣士を討ち取ってください! 私はあの赤髪剣士を抑えます」


 意を決して女性剣士ヒイラギが双剣のニコルへと飛び出し猛烈な斬撃を放ち、セリカから引き離そうとする。そして遅れて隊長ヤマキタが最後の魔力を絞り出してセリカへと飛び出した。

 隊長ヤマキタが上段からの魔力を込めた斬撃を放とうとした時、物凄い速度の閃光が走る。次の瞬間、隊長ヤマキタが宙を舞、悲鳴とともに後方に飛ばされた。

「……!?」

 双剣のニコルとやり合っていた女性剣士ヒイラギが驚愕の表情で見つめる。

 そして濃い紫色の光に包まれた女性剣士がセリカを支えて抱き起こす。

 女性剣士ヒイラギは、ここに現れ光に包まれる女性剣士が放つ魔導闘気が只者でないことを直ぐに理解する。

「……これが!? ローラか!」

 女性剣士ヒイラギは双剣のニコルと距離を取り防御体勢を取る。

 双剣のニコルはヒイラギを見据えて言う。

「私はここまでです! 光栄なことです! ローラ様がお相手してくださるのですから」


 エリーはセリカに応急処置の治癒魔法を施すと、女性剣士ヒイラギのほうを見て微笑み声を上げる。

「セリカさんをここまで痛めてつけるとは、すごいですね! では私がお相手致します! 名乗っておきますか! ベランドル魔導士ローラ•ベーカーです。 全力でお願いしますね」


 女性剣士ヒイラギはショートソードを構えてエリーを見据える。ヒイラギは体が硬直して全身の毛穴から汗が噴き出る感覚を自覚していた。

(……本能がとんでもなく危険だと訴えている。だが……やるしかない)


 ヒイラギは魔力を内包圧縮から外へ一気に開放する。そして白色の光がヒイラギを包み込んだ。ヒイラギは手足の末端に震えを感じ、それを抑えようと呼吸を整えようとする。

(……無理ね)

 女性剣士ヒイラギは諦めたように、一旦全身の力を抜いて脱力する。そして息をゆっくり吐いて魔力を全身に通すと、エリーを見つめて声を上げる。

「感謝致します! ヤマノ剣士、ヒイラギ•マキ! 全力を持って答えます!」


 女性剣士ヒイラギはショートソードを引いて構えると、エリーに向けて一気に飛び出した。


 エリーは直ぐに軍刀を右斜め下方に引くと払いの斬撃を放ち、女性剣士ヒイラギを牽制する。ヒイラギは牽制の斬撃を交わしてエリーの間合いに入った。

「……!? し、まった!」

 ヒイラギはエリーの真っ赤な瞳と緩んだ口をを見た瞬間、激しい衝撃と激痛を感じた。そして女性剣士ヒイラギは訳のわからないまま弾き飛ばされ宙を舞う。ヒイラギは鈍い音と共に地面に叩きつけられた。

 女性剣士ヒイラギは全身の痛みをこらえながら必死に立ち上がろうとするが、体が自由に動かない。そこへ素早くエリーが距離を詰めて来る。


「もう終わりです」

 エリーは神眼で倒れている女性剣士ヒイラギを確認すると、すでに意識を失っていた。


 (……! 呼吸が止まってますね。心臓も……手加減したのに……)


「ニコルさん! とりあえずこの剣士を回収しますね。あと者はヒイズルに引き渡します。初期の治癒はここでします」


 エリーは女性剣士ヒイラギを仰向けに寝かせると、女神の治癒スキルを発動、エリーが白い光に包まれた。そしてヒイラギの体にエリーが触れると、白い光がヒイラギを包み込む。

「……! よし! 心臓が戻った」

 エリーは魔力を通して、ヒイラギのダメージを修復していく。

(セレーナ! 少し力を貸してくれる。あと少しなんだけど思ったよりダメージが大きかったんだよ)

 エリーは意識を沈める。

(あゝ、大丈夫だ。細胞を再構成すれば問題無い。エリー気付いているのだろう? この者は女神因子を持っておる。だから助けるのだろう)


(そうだよ。聞きたいことがあるんだよね。女神アルテアについてね。だからよろしく)

 そうしてエリーは深層のセレーナの領域に意識を沈める。エリーの意識が一瞬薄れ、瞳が朱色から真っ赤な色に変わり目が若干吊り上がり、髪色が紫色から美しい銀髪に変わっていく。エリーの様子に気づいたニコルが直ぐに跪き頭を深く下げた。

「……セレーナ様」

 エリーはヒイラギの腹部に両手をかざして魔力を通し内臓を修復する。そして破損した骨格を再生すると、ヒイラギの呼吸が戻る。そしてエリーはヒイラギを抱えて体内に溜まっていた血を吐かせる。


「ニコル! この者の処置は終わった。あとは頼む!」


 ニコルは跪いたまま顔を上げ答える。

「はっ! 承知致しました!」


 エリーは頷き、そして銀色の髪は紫色に変わり、瞳の色も朱色に変わった。


 エリーは慌ててニコルに言う。

「ニコルさん、この人を早く3階へ」

 エリーは偽装スキルを発動、ヒイラギの髪の色を金髪に瞳の色を茶色に変える。エリーはニコルと共にヒイラギを抱えて来賓館正面入り口へ向かう。

 エリーは伝心念話でリサに戦闘終了を告て、セリカの回復を依頼していた。そしてエリーがヒイラギを抱えて来賓館に入ると、リサが1階に降りて来ていた。

「ローラ様、ヒイズルの近衛部隊が到着します。いかがされますか? 手筈通りでよろしいでしょうか」


「はい、予定通りで結構です。ワダ首相は動いていますか?」

 エリーがヒイラギを抱えながらリサを見つめ尋ねた。


「はい、かなり慌てている様子です」

 リサはそう答えると、一礼してセリカの方へと向かった。

 


最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!

 これからも、どうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ