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第276話 ヤマノ特戦隊

タムラ率いるヤマノ特戦隊はエリー達と激突する

  2国間和平交渉会議17日目深夜。(大陸統一歴1001年10月30日23時頃)


 ここはヒイズル帝国首都オオカワ市、中央区官庁街。そこに1キロ四方塀に囲まれた美しい白亜のヒイズル来賓館。


 来賓館裏門へは正門突入と同時刻、ヤマノ諜報長官タムラ率いる特戦隊約20名が守衛将兵10名を簡単に斬り倒し、敷地内へと侵入していた。

 タムラが声を上げる。

「魔導士ローラを討ち取り! ヤマノに栄光を!」

 そうして一斉に裏門の特戦隊は来賓館目指して全力疾走する。


 同じ頃、来賓館内3階宿泊室内でエリーは、リサ、セリカと戦闘体制を整え待機していた。

 リサの周囲3キロに展開した感知魔法で状況はすでに把握している。

「ローラ様、予定通りです。人数、戦闘能力等、エリー様の脅威は今のところ見受けられません。市内に配置したものからの報告を現状特に問題はないかと」

 リサが報告すると、エリー頷く。


「では、私は裏門側へ、セリカさんは正門側へお願いします。くれぐれも油断せぬように」

 エリーは引き締まった表情で2人を見ながら言った。


「私は、ここで全体の把握支援を行います。それでよろしいですね。ローラ様」


 エリーはリサの手を優しく掴んで言う。

「はい、全体の戦況管理をお願いしますね。もし危険が迫っていたらすぐに知らせて下さい。護衛にニコルさんを置いていきます」


「はい、ありがとうございます。それではお気をつけて」

 リサは微笑みエリーを見つめる。

エリーはリサから離れると、セリカに頷き宿泊室から出て行った。1階に降りると、皇帝護衛隊、ブラウン商会特殊部隊員達20名が戦闘装備を整えてエリー達の到着を待っていた。

 各隊員の装備品は黒の戦闘服にアーマードプロテクター、軍刀、拳銃、予備弾倉、電撃棒をそれぞれ身に付けている。そして今回使節団に同行した隊員達は選りすぐりの精鋭達である。


 来賓館内では使用人達が混乱した様子で右往左往している。来賓館の警備責任者が慌ててエリーに駆け寄り声を上げる。

「……も、申し訳ありません! 現在正体不明の敵襲を受けゲートを突破侵入されました! すぐに戦闘になります! どうか! 時間を稼ぎますのでお逃げ下さい!」


 エリーは警備責任者の顔を見て微笑み言う。

「残念ながら、それは無理です。あなた達を見殺しには出来ません! ですので打って出ます。あなた達は後方をお願いしますね」


 そう言ってエリーは警備責任者の肩を軽く叩いて前に出ると、整列している皇帝護衛隊、ブラウン商会特殊部隊員に声を上げる。

「それでは、今より、敵意ある者達を殲滅する! 各員! 心して掛かれ! そして戦闘が終わった時、全員が無事であることを祈ります!」


〈はっ! 了解しました!〉

 一斉に声が上がると、正門側へセリカ隊が飛び出して行く。エリーの周りにブラウン商会特殊部隊員が集まり体制を整えて裏口方向へ進んで行く。

(ここは、大陸とは異なる魔導剣技が発展している。注意が必要ですね。特に剣筋が異なる。電撃棒で対処出来れば良いにですが……。たぶん無理でしょうか?)

 エリーはそう思いながら神眼スキルを発動して左右の瞳が真っ赤な赤色に変わった。


「やはり、リサさんの情報通り、かなりの手練です! みなさん、電撃棒では対処困難です。魔導剣を使用してください!」


 エリーが声を上げると、全員が外に出て魔導剣を抜き放ち、一斉に構えて突撃準備をする。


 エリーはひとり前に飛び出すと、電撃棒を構え魔力量を上げ正面に斬撃を放つ。放たれた電撃斬撃は尾を引いて、向かって来るヤマノ特戦隊兵達へ到達した。激しい轟音とともにエリーの放った電撃斬撃が周囲に飛散して消失した。


「やはり! この程度では無理か」


 エリーが声をを漏らすと、前方から物凄い勢いで飛び出して来るヤマノ特戦隊剣士がひとり。エリーは神眼ですでに動きを把握、特戦隊剣士の斬撃を難なく上体を逸らして交わす。そして魔力を瞬時に体に通し身体強化を図ると、鋭い足蹴りを特戦隊剣士の腹部に入れた。

 特戦隊剣士は瞬時に魔力緩衝障壁を展開して後方の木に吹き飛ばされてぶつかった。

「げっふ!」

 特戦隊剣士はダメージを受けているようだが、直ぐに木の捕まり立ち上がった。


 エリーは通常剣士相手には手刀足蹴り等の格闘術は使わない。だが、過去の経験からどこから刃物が出て来るかわからない得体の知れない相手には、トッドから教わった総合戦闘格闘術を使い対処する。そしてブラウン商会特殊部隊員にも対応は周知していた。


 前方から迫っていたヤマノ特戦隊剣士達はエリー達と距離をとって対峙している。先ほどエリーの電撃斬撃を打ち払った。剣士は前に出てエリーを睨みつけている。裏門攻略担当諜報長官タムラである。

(紫の髪……、魔導士ローラか!? 周囲に展開している者共も、我々と同格くらいか? 数で勝る我々が押し切れるか? ローラの戦闘力も予想の範囲内だが、まあ、これだけのものを連れているのだから仕留め甲斐もある。正面組はまだ来れんのか? やはり正面にも精鋭揃いか)

 

 タムラが対峙しながら考えていると、後方から3人組が飛び出して前に出た。

「父上! 我らがローラを仕留めます!」


「おい! ……不用意に出てはならぬ! まだ……」

 タムラの制止の声も聞こえていない様子で、3人組剣士はエリーの前へと一気に距離を詰める。エリーは神眼スキルで動きを視感すると魔力量を増大させ体が薄紫色に輝き始める。すかさず鞘から軍刀を抜き放った。軍刀に魔力が通り光が迸る。

 タムラは慌てて右腕を振り上げ、後方の他の剣士に突撃の指示を大声で出した。

「押し出せ!」


 エリーは詰める3人組剣士に軍刀を右斜に構え横へ右足を引き、一旦沈み込むと一気に飛翔した。3人組剣士は手前で広がり各々渾身の斬撃をエリーに放った。

(この3人なかなかだね。でもちょっと甘いよ)

 エリーは目にも止まらぬような、瞬間移動したかのような動きで斬撃をすり抜けた。そして3人の剣士の動きがその場で止まり、血吹雪を上げて倒れ込む。その瞬間、前に突進していたヤマノ特戦隊剣士達の動きが止まった。


 エリーが流暢なヒイズル語で声を上げる。

「あなた達は、私がベランドルの魔導士ローラと承知してこのような行為を行っているのですよね! ……容赦しませんよ! 各員に告ぐ! 容赦無用! 手加減出来る相手では有りません」


 エリーはそう言って軍刀を握り直すと魔力量をさらに増大させた。体を包む光の色が濃い紫色に変化して迸り始める。

 それを見ていたタムラは前方に倒れている息子達を、感情の失わられた目で見つめている。

(……、たった一撃でか!? ヤマノでも上位に入る我が息子達を……なんと……無残な。ローラ達の実力を見誤った? 最強の剣士達がなぜ? ヒイズル帝国の兵士達を蹂躙していた我が配下達が、互角どころか一撃で倒されている。なぜこうなった……? 私は)


 タムラの後ろから剣士が数人前に出てブラウン特殊部隊員の剣撃を防御する。

「タムラ様! お気を確かに! 我々が時間を稼ぎます! どうか! 退いて下さい!」


 タムラはハットして言う。

「正面のヤマキタがこちらに合流すれば、ローラとて討ち取れる! もう少し時間を……」


 タムラは周囲を見渡して気付いた。特戦隊剣士が大きく数を減らしている事に。

「……どうした。完全に押されている」


 裏門攻略タムラ組は突入時の20人から、エリー達率いるブラウン商会特殊部隊と戦闘になりあっという間に5人ほどに人数を、減らしていたのである。タムラは気づいたローラ達の戦い方が想定していたものと違う事に。

(ローラ率いる者共は、剣士では無い……、戦士いや、戦争屋だ! 戦い方が我々と違う)


 ブラウン商会特殊部隊員は剣と拳銃や足技、手刀、足蹴りを巧みに使いヤマノ特戦隊剣士達を翻弄、次々とダメージを負わせ倒していたのだった。タムラは焦った顔をしてエリーを見据えて声を上げる。


「さすがだ! 私はうかつだったようだ。そなたを過小評価した」


 エリーは口元を緩めてタムラに声を上げる。

 

「それはご理解ありがとうございます! では投降をお願いします!」


「……?」

(……この違和感はなんだ……? 最初から我々が来ることがわかっていたような……! 最後の手段、奥義を発動してもローラには届くかどうか……」

 タムラは残った剣士と共に防御陣形をとってエリー達と対峙する。

 

 

 

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!

 これからも、どうぞよろしくお願いします。

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