北部戦線27 作戦準備7
北部戦線、エリー機動大隊現地配備、8日目夕方。
エリー達は帝国バレット市より脱出して国境を目指し移動していた。
ここはバレット市、帝国第三軍司令本部情報作戦室。
「通報内容からマリアさん三人と思われます。バレット駅にも確認しましたが列車乗車は確認されていませんでした」ミリア中尉は心配そうにセリカ少佐に報告した。
「軍用輸送車両の荷台に押し込められていたのは、昨日ローラさん達三人を見ていた士官の目撃情報なのでほぼ間違いないかと・・・・・・、憲兵隊に連絡したそうですが、それどころではないと言われたそうです」
セリカは少し苛立った様に言う。
「なぜ! 駅まできちんと送り届けなかったのですか! ミリア中尉!」
「すみません! マリアさんから断られたので・・・・・・」セリカがミリアを若干呆れたように見つめている。
「彼女達には迷惑ばかり掛けてしまった」
セリカはポツリと言った。
「戦線管区周辺で子女の誘拐、行方不明が多発していることを、ミリア中尉は知らないのか」
「はい、初めて聞きました。申し訳ありません」ミリアは視線を下げる。
「誘拐には帝国軍人が関わっているのは事実です。そして誘拐した女性子女を国外に売買するとのこと。仲介組織が帝国、連邦両国国内にあるとの話もある。軍人ならある程度自由に動き回れるから車両を使って移動も容易ですから」
ミリアがセリカの顔を見て質問する。
「誘拐された女性子女達はどうなるのですか」
セリカが呆れた顔を一瞬してから言う。
「国外に売り払われて、あとは・・・・・・、男たちの相手をさせられる商売をすることになるでしょう」ミリアが顔を強張らせて言う。
「そんな、ローラさん達が・・・・・・」
セリカが悲しい顔して言う。
「マリアさん達は、少し目立ち過ぎるから心配していたのだが、まさか実際にこうなるとは・・・・・・」
セリカが目つきを鋭くしてミリアを見る。「まだ時間はある。車両の特定はできたのですか?」
「国境側に向かったのは間違いありませんが、そこから先は掴めていません」
「予想では、主要道路の最短ルート経由だと思いますが、三時間いや、二時間半ぐらいでしょうか」
セリカが考えてから言う。
「市外に出て一時間半ぐらいだから、あと一時間ちょっと」
「過給機付き偵察用飛行船なら30分でなんとか追い越せる!」
そう言うと、セリカは慌てて情報作戦室を出て言った。
◆◇
軍用輸送車両、荷台席のエリーはユーリの隣りでうとうとしていた。軍用輸送車両は順調に走行し国境戦線まで10キロ付近に到達していた。輸送車両の運転席から大声がする。
「帝国軍高速飛行船が低空で上空を通過! 視認確認された模様!」
荷台の下士官が慌てて運転席連絡窓を開けて言う。
「我々を確認したのか?」
助手席に座っている帝国軍士官が周囲上空を確認しながら言う。
「上空通過してから2回ほど旋回して右上方を飛行、見えなくなった! ここはしばらく一本道だから待ち伏せされる恐れがある。ユーリさんにどうするか確認してくれ!」
下士官がユーリを見て指示を仰ぐ。
「どうします! 3分後には接触すると思われます」
ユーリは少し考えてから言う。
「ゴリ押しは出来ません、ここは敵地です。数を呼ばれたら対応出来なくなります」ユーリは女性下士官を見て言う。
「一緒に来てください!」
ユーリはドリス曹長、ノア伍長の二人を指名した。そしてすぐに装備を整える。
「エリー様、アンジェラ様、時間がありません。飛び降ります! 荷物は全て持って行きますのでよろしくお願いします」
そうして軍用輸送車両を徐行速度まで落とさせて、五人が車両から目立たぬように降車した。
五人は降車後、林の中で装備を装着し身なりを整える。ユーリがメンバーの顔を確認して言う。
「ここで荷物は処分して行きます。あと7キロほどで合流ポイントですが、周辺には帝国軍が残っていますので対応はドリス曹長にお任せします」
それを聞いて四人が頷く。そしてドリス曹長を先頭に後衛をノア伍長が担当して脇道を通り移動する。
その頃、エリー達の乗っていた軍用輸送車両は国境戦線まで5キロ地点を走行していた。すると前方の道路に、銃を構えた兵士が四人立って手を上げてる。車両が停車すると助手席側に一人の女性士官が近寄って来て言う。
「第三軍司令官付情報士官、セリカ少佐です! 不審物を運搬する車両があるとの通報を受け、現在、臨検を行なっています。協力をお願いしたいのですが」
すぐに助手席の士官が、ドアを開けて降車し敬礼する。
「ご苦労様です! 問題ありません! どうぞ確認してください」
セリカの後ろに着いてきていたミリアが命令書を確認している。セリカは直ぐに荷台に回りステップに足を掛けて荷台に乗り込んだ。乗り込むと荷台にいる兵士達と目が合う。兵士達は立ち上がりセリカに敬礼する。そしてセリカは荷台の兵士の顔を一人一人確認して落胆した表情になる。
「おかしい・・・・・・、どう言うことだ?」
セリカは呟き、兵士達に言う。
「ここに少女が三人乗っていませんでしたか?」兵士達は不思議そうな顔をしてセリカを見ている。
セリカは少し考えてから言う。
「時間を取らせました」
セリカはそう言って兵士達に敬礼して荷台から降りる。そこにミリアが駆け寄り言う。
「どうでした? こちらの命令書に問題ありませんでした」
「そうですか、該当する車両は間違いない筈なのにおかしい?」
セリカがミリアを見て言う。
「もう少し道沿いを飛んでみます、早くしないと時間がありません」
ミリアが不安な顔をしてセリカに言う。
「これ以上は、連邦国の防空圏内に掛かるので飛行船は危険です! 撃墜される恐れがありませので飛行士も了承しませんよ」
セリカが悲しい顔をしてミリアを見る。
「大丈夫です。操縦は私がします。一人でも行きますので安心してください」
ミリアがセリカの手を握って言う。
「わかりました・・・・・・、一緒に行きます。そんな悲しい顔しないでください」
「ありがとう! ミリア中尉! さあ急ぎましょう!」そうしてセリカとミリアは駆け出した。そして飛行船に乗り込み発動機を始動させ直ぐに飛びたった。
エリー達五人は、脇道を警戒しながら国境まで急いでいる。国境まであと4キロ付近に到達、全員に安堵の表情が見える。
「もう少しですね、ジェーン連隊長は来てますかね」エリーが嬉しいそうに言った。
上空に発動機の音が響く。帝国軍の偵察飛行船が低空で道沿いを繰り返し飛行している。エリーが上空を見て言う。
「何を探しているんですかね?」
ユーリがエリーの顔を見て言う。
「多分我々だと思いますよ、諜報機関に情報が漏れたのかも知れません」
ドリス曹長がユーリを見て言う。
「日が落ちるのを待ちますか! ここより先は遮蔽物が無く身を隠せません!」
「いいえ、暗視装置を使用されたら日没後も同じです」ユーリがドリス曹長の顔を見て言う。
エリーがユーリの顔を見て微笑んで言う。
「落としますか? 飛行船なら歩兵ライフルで落とせますよね」
「いいえ、それはダメです。飛行船を落としたら敵を呼び込みます」ユーリが直ぐに答える。
エリー意地悪い顔をしてユーリに言う。
「私は今、帝国兵士です。混乱に乗じて脱出するんですよ」
エリーはユーリの手を握って言う。
「任せてください。位置情報発信してください! ジェーン連隊長の確認が取れたら知らせてくださいね。飛行船を落とします」
ユーリが理解した顔をしてエリーに頷き言う。「了解しました! 位置情報発信します! ジェーン連隊長確認次第お伝えします」
アンジェラが不安そうな顔で言う。
「もっと慎重に行った方が良いのでは?」
エリーがアンジェラの不安そうな瞳を見て微笑んで言う。
「大丈夫だよ、任せて上手く行くから」
ユーリがエリーに顔を向けて言う。
「ジェーン連隊長確認出来ました! 接触2分! 特三重装機兵中隊10機、確認しました」
エリーがスキル神眼を発動して右目が赤色に変わる。そしてライフルを構え飛行船に照準を合わせ、魔力マナエナジーをライフルの弾倉銃身に通して行く。
「では行きます!」エリーがライフルのトリガーを引く、そして閃光と共に弾丸が発射され飛行船に命中、空中で爆発が発生して飛行船は100mほどからヘナヘナと墜落した。
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