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第273話 北の勢力1

 2国間和平交渉会議17日目夜。(大陸統一歴1001年10月30日)


 ここはヒイズル帝国首都オオカワ市、中央区官庁街。そこに1キロ四方塀に囲まれた美しい白亜のヒイズル来賓館。


 子女親睦交流会が終わり、それぞれ子女令嬢達が帰路に着く中、2階の応接室にサツキ嬢とサクラ嬢が椅子に座り反対側に座るエリーと話しをしている。エリーの両隣りにはミヒロ皇女、ヒロカ第2皇女が座り話しを聞いていた。


「ローラ様、現状のヒイズルをどう思われますか? ベランドル、グランと比較してですが」

 サクラ嬢が瞳を輝かせてエリーを見つめながら尋ねた。


「……どうでしょうか? どこをとらえるかによって違いはあると思いますが。ヒイズルは大陸との交流があまり無かったので、産業技術的には大幅な遅れがあるのは間違いないことです。それと、残念ながら、女性の社会的登用は進んでいませんね。あとは人権等の法整備もまだまだだと思います。教育制度の整備も遅れていますね。文化的には独自のものがありそれは良いと思いました」

 エリーは2人を見つめながら答えた。サクラ嬢は頷きながらエリーの言葉を聞いて言う。


「ローラ様はベランドル王家の血筋の家系出身だと、そして以前は宰相を務められた大魔導師様だと聞き及んでおりますが……それは本当の事なのでしょうか? 実年齢は60才だとも……」


 サクラ嬢の言葉を聞いて、ミヒロ皇女が慌てて立ち上がる。

「あ、あなた! ローラ様になんてことを! 失礼な!」


「……、その質問は、ベランドルの極秘事項のためお答え出来ません」

 エリーは、引き攣った顔のサクラ嬢とサツキ嬢に冗談ぽく微笑み答えた。


 サクラ嬢とサツキ嬢は椅子から立ち上がると頭下げた。

「ローラ様! 失礼致しました。ですが、それはもっとローラ様のことを、知りたいと思う気持ちが抑え切らないばかりなのです。どうかご容赦くださいませ」

 サクラ嬢がそう言って頭を深く下げた。


「……まあ、よろしいですよ。興味を持たれることには慣れておりますから」

 エリーは2人を見て言うと、隣りのミヒロ皇女が言う。

「そろそろ時間です」


 サクラ嬢とサツキ嬢は顔を見合わせて頷くと、エリーを見て言う。

「名残惜しいですが、おいとま致します」

 そう言って、2人は一礼する。エリーは椅子から立ち上がると頭下げる。

「サクラさん、サツキさん今日はありがとうございました。それではまたの機会に」


 サクラ嬢が残念そうな顔をして言う。

「帰国される前にもう一度……ご機会を賜わりたく、存じますが。いかがですか?」


「……? はい、時間があればですね」

 エリーが曖昧に答えると、ミヒロ皇女が慌てて言う。

「忙しいローラ様にそのような、つくづく考えが足りないでは無いですか」


 エリーはミヒロ皇女を見て優しく言う

「良いのですよ。お二人と話すのは楽しいですから、機会を作ります。ですからそのようなことはね」

 ミヒロ皇女は戸惑った顔をしてエリーを見つめる。

「……」


「では、ローラ様、失礼致します。……ご連絡お待ちしております」

 サクラ嬢とサツキ嬢は再び丁寧に一礼すると応接室から2人揃って出て行った。


 離れて控えていたリサが近寄りエリーに声を掛ける。

「ローラ様、クレア中佐から連絡がありました。予定通りとのことです」


「そうですか、ご苦労様と伝えてください。無理をさせましたからね」


「はい、そのようにお伝えします。それでこの後の予定ですが。どうされますか?」


「ええ、そうですね。夜の街に出てみたいのですが……」

 エリーが言ってミヒロ皇女を見ると、ミヒロ皇女は驚いた顔をして言う。

「……ローラ様! 何をおっしゃっているか理解出来るませんが!?」


 リサがエリーの耳元で囁く。

「ここでは警護が自由に動けません。明日にされたほうが良いかと」


「……? そうだね。そうするかなぁ。みんなに迷惑掛ける訳にもいかないしね」

 そうしてエリーは残念そうな顔をして言う。

「ミヒロさん、今日は諦めるので安心してください」

「……? 何か、よからぬことをなさるおつもりだったのですか?」

 ミヒロ皇女は戸惑った顔をしてエリーに言った。エリーは隣で大人しく座っているヒロカ第2皇女を見て微笑み言う。

「ヒロカさん、面白いものをお見せ致しましょう」

 そう言ってエリーは偽装スキル発動して、魔力を体に通す。エリーの体が薄紫色に輝くと髪色が紫色から黒髪に変色し、瞳の色が朱色から茶色に変わった。顔つきも瞳が大きく少し垂れ目に優しくなり肌の色も少し濃くなった。

 それを見てミヒロ皇女、ヒロカ第2皇女は瞳を開いて驚いた顔をする。

「ろ、ローラ様は、容姿も自由に変えれるのですね……。驚きました」

 ミヒロ皇女が思わず言った。


「ええ、これなら私とは気づかないでしょう? どうです」

 エリーがそう言うと、ヒロカ第2皇女が嬉しそうにエリーの手を握って言う。

「ローラ様! 素敵です。ヒイズルのものにしか見えません。ですが、可愛い過ぎて素敵なことには変わりないです」


 エリーは少し照れたような顔をして言う。

「ありがとうございます。あとは服装ですね。リサさん準備は大丈夫ですね」


「はい、準備しております。明日は午前中ですね。……予定通りには無理かも知れませんが」


 ヒロカ第2皇女がエリーの顔を見て尋ねる。

「ローラ様、明日はお出掛けには、私も一緒によろしいでしょうか?」


「……、えっ! それは、私では判断出来ることではありません。ミヒロさんどうでしょうか?」

 エリーは少し困った顔をしてミヒロ皇女の方を見た。


「はい。相談してみます。ですが、お忍びですよね」

 そう言ってミヒロ皇女は思案するとエリーの顔を眺めて言う。

「やはりわたくしで判断出来ることでは無いので、早急に相談してみます」


 そう言って一礼すると、ミヒロ皇女は慌てて応接室を出て行った。

 ドアが閉まるのを確認して、リサがエリーの耳元で囁く。

「北が予想通り動くようです……護衛抜刀隊にはすでに準備させています。ローラ様、計画通りでよろしいのですね?」


「はい、規模が想定範囲内なら、ソアラちゃんの支援はこちらへは不要かもですね。とりあえずバックアップ待機かな」

 エリーは頷き答えた。そして応接室のドアがノックされてセリカが入室して来た。

 ヒロカ第2皇女がセリカの黒の戦闘服姿を見て驚いた顔をする。

「……その出立ち……? これから何か?」


 エリーが直ぐに答える。

「はい、いつもの剣技の修練を行います。毎日行わないと体が鈍りますからね」

 それを聞いてヒロカ第2皇女は、目を輝かせて言う。

「ローラ様の剣技を見ることが出来るにですね。素晴らしいことです」


 セリカが一礼すると、リサのそばに行って小声で何やら話してからエリーを見る。

「ローラ様、準備をお願いします。隊員全て準備は整いました」


 エリーは頷きヒロカ第2皇女と視線を合わせて微笑み一礼する。

「それでは、失礼致します。着替えて参りますので」

 そう言ってエリーは応接室から出て行った。


 

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!

 これからも、どうぞよろしくお願いします。


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