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第271話 子女親睦会2

エリーは令嬢達に言い寄られる

 2国間和平交渉会議17日目夜。(大陸統一歴1001年10月30日)


 ここはヒイズル帝国首都オオカワ市、中央区官庁街。そこに1キロ四方塀に囲まれた美しい白亜のヒイズル来賓館がある。今、そこの2階ホールで大陸友好親睦会が開催されていた。

 開始早々にエリーの前に現れた、ヒイズル外務大臣キクチの息女サクラは内密な話しがあると個別に誘っていた。


 ミヒロ皇女が怪訝そうな顔をしてサクラ嬢に言う。

「サクラさん、ローラ様に失礼ですよ。初対面でいきなり個別のお話しをお願いするなど、身の程をわきまえなさい」

 サクラ嬢はミヒロ皇女に深く頭を下げて言う。

「ミヒロさま、大変失礼ながら申し上げます。今回の催しは親睦目的と理解しております。遠慮していればお話しする機会など巡って来るハズもございません」


「……!?  あなたその物言いは何なのですか! 立場をわきまえよと言っているのです」

 ミヒロ皇女が厳しいかも口調でサクラ嬢に言い放った。エリーはたまらずミヒロ皇女を見て微笑みながら言う。

「ミヒロ皇女殿下、別に良いではないですか。サクラさまもね。落ち着いてください。話を聞くだけならいくらでも聞きますよ」

 エリーはそう言ってサクラ嬢の両手を取って微笑む。

「サクラさま、とりあえずお腹になにか入れないと、せっかくの料理ですから」

 サクラ嬢は申し訳なさそうな顔をしてエリーを見つめる。


「はい、失礼致しました。ミヒロさま申し訳ありませんでした」

 サクラ嬢は頭を深く下げてミヒロ皇女に謝罪した。ミヒロ皇女は若干不服そうな顔でサクラ嬢を見て言う。

「……ええ、ローラ様がそう言われるのなら、私がこれ以上申し上げることはありません」


 エリーが会場を見渡して集まっている子女を確認すると、ドレス系の大陸風の服装がほとんどでサクラ嬢のようにヒイズルの衣装はほとんど見受けられない。身長もエリーを超える子女は見られず150から160cmくらいだ。セリカの身長が170cmを超えてなおかつヒールを履いているから180cm付近になって一際目立つ。エリーも一応ヒールで170cmは超えている。

 人種的には東方系固有で黒髪と瞳の色も茶系から黒色でほぼ同じ系統、大陸のように色々な髪色、瞳の色は見受けられない。やはり島国で大陸との往来が少なかったせいであろうとエリーは思っていた。そして何よりマナエナジー魔力の身体の通し方に違いがあることにエリーは気付いていた。


 エリーは必要に話し掛けて来るサクラ嬢の言葉を無視して観察していると、リサが微笑みながらサクラ嬢を別の場所に引っ張り連れて行く。エリーの周りには人垣は出来ているが3mほどの一定の距離を置いて保たれている。ミヒロ皇女とヒロカ第2皇女が牽制しているためだ。セリカはエリーより離れて、端の方で5名ほどの子女令嬢に囲まれヒイズルの通訳を介して会話をしている。

 そしてエリーはバイキング形式の肉料理を適当に自分の取り皿にチョイスすると、端のテーブルに座った。隣にはミヒロ皇女が追いかけるように来て座った。

「ローラ様、料理はどうですか? ベランドル帝国風の味付けにしておりますが」


 エリーは横に座るミヒロ皇女を見て微笑み言う。

「……はい、こちらに合わせてもらって、大変申し訳ないのですが。出来ればヒイズルの海鮮料理が食べたかったですね」


「……はい、それは申し訳ありません。料理は相談吟味の結果、安全を考慮して今回のものに選定致しました。次回はそう致しますのでご容赦ください」

 そう言ってミヒロ皇女は申し訳なさそうな顔をして頭を下げた。エリーは慌てて否定するように手を広げて言う。

「いえ、違いますよ。ケチをつけたわけではなくて、タダ残念だっただけです。またの機会にぜひ、お願いします」


 ミヒロ皇女は少し恥ずかしそうにエリーを見て言う。

「……ローラ様、それにしてもそのドレス素敵です。ローラ様の美しさがさらに引き立っています」


「……! はい、ありがとうございます。もし同じものがご所望であれば、手配致しますよ。採寸すればグラン連邦国のブラウン商会から取り寄せできますので、プレゼント致します」


「ローラ様、それはありがたいことですが、わたくしなどには着こなせる……いえ、有り難く頂戴致します」

 ミヒロ皇女は嬉しいそうに頭を下げた。エリーはステック状のチキンぽい肉料理を口に運ぶ。

「……!? これって美味しいですね!」

 エリーは思わず声を漏らした。そして立て続けに2本ほど口に運んでモグモグと頬張る。その様子をミヒロ皇女は見て戸惑った顔をする。

「……! そんなに気に入ってもらえて嬉しいです」


「ローラ様は、お酒は飲まないとおしゃっておられたので、これはいかがですか」

 ヒロカ第2皇女がグラスをエリーに手渡す。


「ヒロカ皇女殿下、ありがとうございます」

 そう言ってエリーはグラスに口をつけ一口飲んで。

「あゝ、お茶ですね。グリーンティーとか? 爽やかな味わいですね。グリフォードで飲んだことがあります。その時より上品な感じです」


 ヒロカ第2皇女が嬉しいそうに言う。

「はい、厳選の茶葉のを使用していますから、お気に召されたなら幸いです」


 エリーはグラスのお茶をすぐに飲み干して言う。

「ヒロカ皇女殿下、おかわりを頂けますか。これはなかなか良いと思います」

 エリーが嬉しいそうに言うと、ヒロカ第2皇女が給仕を呼んで何やら指示を出す。エリーは立ち上がり次の料理を取ろうと料理ボードへ向かう。そこへひとりの令嬢が前に出て頭を深く下げて名乗りを上げる。

「ローラ様、……申し訳ありません。わたくしモリ•サツキと申します。この場で拝謁賜り感謝致します」

 そしてサツキ嬢は大陸風貴族令嬢の挨拶をする。

「……!?」

 エリーは少し嫌な顔をしてサツキ嬢を見て言う。

「サツキさま、丁寧なご挨拶ありがとうございます。また機会があれば是非に」

 エリーは一礼すると料理ボードへ向かう。サツキ嬢が追うように横に付くと、ミヒロ皇女がすかさず横に付く。

「ミヒロさま! お話しが違うではありませんか? 私はローラ様とお話しが少ししたいだけなのです」

 サツキ嬢がミヒロ皇女に不満fげな顔をして言った。エリーはそれを見て少し戸惑った感じで言う。

「……あの、申し訳ないですが、もっと穏やかに和やかに致しましょう」

 エリーの流暢な発音のヒイズル語に、サツキ嬢が驚いた顔をして頭をすぐに下げた。

「……ローラ様、ご気分を害して申し訳ありません! ヒイズル語をローラ様が違和感なく喋っておられるので、全て会話を理解されていると理解致しました。決してわたくしは揉め事を起こそうとしている訳ではございません。ローラ様とお近づきに、なりたいだけなのです」

 少し涙目になってサツキ嬢はエリーに訴えた。エリーはサツキ嬢によると両手を優しく取って言う。

「……大丈夫です。誤解はしていませんから」


(……臣下の令嬢なのに、王家の皇女への物言い、あまり感心しないなぁ。このサツキ嬢は大蔵卿の息女、さっきのサクラ嬢は外務卿の息女だったハズだけど、あまり敬意を感じない。令嬢達は皇女をどう思っているのか? まあ、王家本体は力をあまり持っていないのでしょうね)

 エリーはそう思いながら、サツキ嬢の手を優しく離して言う。

「また、ご挨拶致します。とりあえず食事をさせてください」

 サツキ嬢はうっとりした顔でエリーを見つめて頷き言う。

「はい、ローラ様、のちほどお待ちしております」

 そしてサツキ嬢はエリーから離れていった。エリーは一瞬殺気のようなものを感じてホールの入り口を見る。そこには黒のスーツを着るヒイズルのものにしては長身の男性が立っていた。視線があって向こうの男性がエリーに深く一礼した。

「……何だ!? あの気配? ですが一瞬で消えた」

 エリーが隣のミヒロ皇女に尋ねる。

「あの方は?」

 ミヒロ皇女はエリーの指摘した男を見て答える。

「はい、わたくしの護衛官です。この国の最強剣士のひとりですが。何か問題でも?」


「いいえ、少し気にかかりまして……、そうですか、最強剣士ですか。それは良いことを伺いました」

 それを聞いてエリーの口元が一瞬大きく緩んだ。

 


最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!

 これからも、どうぞよろしくお願いします。


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