第270話 子女親睦会
エリーは子女の食事会に参加する
2国間和平交渉会議17日目夕方。(大陸統一歴1001年10月30日18:00)
ここはヒイズル帝国首都オオカワ市、中央区官庁街。そこに1キロ四方が塀に囲まれた美しい白亜のヒイズル来賓館がある。
ここで大陸友好交流会が開催されていた。2階の100畳ほどのホール会場にテーブルが10個ほど並べられている。大陸風の立食パーティーであった。会場にはヒイズルの子女達が集まり始め徐々に会場入りしていた。
エリー達は3階の宿泊居室でイブニングドレスに着替えてメークを済ませて髪をセットしていた。リサと付き添いの護衛兼メイド担当者が、エリーとセリカの髪を盛り、髪飾りをセットする。セリカは最初軍服のままで良いと嫌がったが、エリーの説得によりドレスを着用する事になった。予想通りセリカの美しいさは数段アップした。エリーがブルーのドレスを、セリカがワインレッドのドレスを着用して、リサは濃い紫色のドレスを着用している。仕上がった3人を見て、女性護衛兼メイド担当者が見惚れて、そして思わず声を漏らした。
「……この様な方々がこの世に……美しすぎて、眩ういです」
それを聞いてリサがエリーを見て誇らしげに言う。
「当たり前です。女神様なのですから」
エリーは嫌な顔をしてリサ見つめる。
「……やっぱり、セリカさん着飾るとすごく綺麗ですよ。私などお子様にしか見えません」
エリーの言葉を聞いてリサがエリーを優しく引っ張って姿見鏡の前に連れて行く。
「何をおしゃっているのですか? ご自分のお姿をよく見てくださいませ」
エリーは姿見鏡に映った自分の姿を見て、少し躊躇った様に言う。
「リサさん……すごいですね! 私がこんなになるなんて……嬉しいです!」
エリーはしばらく鏡に映った自分の姿に見惚れた。
(……リサさん、カミュさまのスキルを得てからすごい! さすが美の女神様ですね)
エリーはリサの両手を取って微笑み言う。
「リサさん! ありがとうございます!」
リサが嬉しいそうにエリーの顔を見て言う。
「ローラ様とんでもないです。元々美しいのですから当然のことです」
宿泊居室のドアがノックされて、女性の声がする。
「ローラ様! ミヒロです! 入ってもよろしいでしょうか!」
エリーは直ぐに答える。
「はい、どうぞお入りください!」
そしてドアがゆっくり開くと、薄いピンク色のドレスを着用したミヒロ皇女が部屋に入って一礼する。ミヒロ皇女は一瞬動作が固まった様になってから言葉を発する。
「……ろ、ろ、ローラさ、ま! 例える、言葉が、見つかりません! 眩いばかりです」
そう言って、ミヒロ皇女は再び深く一礼した。後ろにいたヒロカ第2皇女は部屋の中の3人に見惚れた顔をして言葉が出ない。
エリーが前に出て一礼する。
「ミヒロ皇女殿下、よろしくお願いします」
ミヒロ皇女はエリーを呆然と見つめて顔を赤らめる。
「ローラさ、ま、ここまでとは……」
そう言って言葉を詰まらせる。
(……ローラ様も、セリカさん、リサさん……私なんてとても及ばない。ずっと眺めていたい気分です)
ミヒロ皇女は完全に魅せられて、思考が停止状態となっていた。リサが知らぬ間に魅了のスキルを発動して周囲に魔力を発散していた。
エリーがミヒロ皇女のおかしな様子を見て慌ててリサに言う。
「リサさん、スキルを発動してますよ。抑えててください。これじゃあマズイ事になりますよ。誰が会の進行をするのですか?」
リサが少し戸惑った顔をしてエリーに言う。
「いえ、これくらいなら問題ないレベルです。ミヒロ皇女殿下は、私の見る限りある程度の魔法耐性はあるはずです。……おかしいですね? こんな事にはならないはハズ?」
リサはヒロカ第2皇女に近寄り顔を見て微笑む。
「ヒロカ皇女殿下は問題ない様ですが? どんなものなのでしょうか? ミヒロ皇女殿下もヒロカ皇女殿下も耐性には違いはない様なのですが」
セリカがエリーのそばによって耳元で囁く。
「……たぶん、ミヒロ皇女殿下は、ローラ様にもうすでに心酔されたいたのではないのですか……。それで、こんな状態になられたと」
「……あゝ、それじゃあ、私が悪いて、ことですか!」
エリーが少し機嫌の悪い顔をした。そしてリサが直ぐにミヒロ皇女の手を取って魔力の最適化を行う。ミヒロ皇女の虚な緩んだ顔が徐々に品のある顔に戻ってくる。
ミヒロ皇女が思わず声を上げる。
「……あゝ、わたくし! 夢の中にいたような……、申し訳ありません! ローラ様のお姿を見たら意識が朦朧としてしまいました」
そしてミヒロ皇女はハットしたように一歩退がって姿勢を正すと深く頭を下げた。
「誠に申し訳ございませんでした。ローラ様のお姿に見惚れて、我を忘れてしまいました」
エリーがミヒロ皇女によって手をとって言う。
「ヒロカ皇女殿下、よろしくお願いしますね」
ヒロカ皇女は嬉しいそうに微笑み言う。
「ローラ様、敬称など不要です。どうか、ヒロカとお呼びくださいませ」
エリーはヒロカ皇女の手を優しく握り締めて言う。
「はい、そうさせてもらいます。ヒロカさん、ですが、公の場ではご容赦ください。私が無礼ものと思われてしまいますからね。どうか、ご理解ください」
ヒロカ皇女は嬉しいそうにエリーに言う。
「はい、ローラ様、承知致しました」
「では、会場へ参りましょう。ヒロカさん」
エリーが言うとミヒロ皇女とヒロカ第2皇女が前に出て先導して歩き出すと、護衛兼メイドがドアを開ける。エリー達5人は廊下を進み、階段室を通って2階の廊下へ入った。廊下にはヒイズルの警備担当者と、ベランドル皇帝護衛隊の私服警備隊員が10名ほどいた。全員がエリー達を見て驚いた顔をして見惚れている。そして全員がそれぞれにワンテンポ遅れて敬礼する。
「……! 警備しっかりお願いしますね」
セリカが私服警備隊員に声を掛けた。
ベランドル皇帝護衛隊隊員がセリカに敬礼して言う。
「セリカ隊長! お美しいです!」
セリカは少し照れたように隊員を見て微笑む。
「しっかり頼んだ」
「はっ! お任せください!」
そして警備隊員2人がエリー達に頭を下げて会場入口両開きドアを開ける。
まず、ヒロカ第2皇女が入場して一礼する、そして続けてミヒロ皇女が入場して一礼して声を上げる。
「みなさま! 今宵、お越しくださいましたこと感謝致します! それでは、ご紹介申し上げます! 今回、大陸との友好親善大使として訪問されました。ベランドル帝国大魔導士、ローラ様です」
その言葉を聞いて会場が一気に静まり返る。そしてエリーを中央にリサ、セリカが入場すると会場からドヨメキが起こる。
「ローラ様です。拍手でお出迎えください」
ミヒロ皇女が声を上げ拍手をすると、一斉に会場内に大きな拍手が起こった。
エリーはリサとセリカを両サイドに引き連れて会場の一段高い壇上へ上上がると、拍手が止んだ。エリーは会場を見渡してから丁寧に一礼する。会場へは子女は予想より人数は増えている印象だ。
(20人くらいだったハズだけど、なんか倍くらいになってるよ?)
「みなさま! お初にお目に掛かります。今宵、縁を持てた事に感謝致します。どうか今後もよろしくお願い致します!」
そう言ってエリーは再び頭を深く下げた。エリーが流暢なヒイズル語で挨拶した事に会場から驚きの声が漏れる。
そして会場のテーブルに給仕達が一斉に料理皿を運び込み配置して行く。
そして、ミヒロ皇女が段取り通り、酒を各参加子女にグラスに注ぐよう給仕達に指示する。
ミヒロ皇女はエリーに視線を向けて頷くと給仕長へ指示を出した。
「ローラ様はお水でお願いします。アルコールはダメです」
給仕長は慌ててグラスを入れ替え水差しを持ってきてエリーに跪きグラスを渡した。
「……ありがとうございます」
給仕長は動揺したように視線を下げて一礼して去っていた。
ミヒロ皇女が会場を見渡して確認して声を上げる。
「今後の友好親善を願い乾杯致しましょう! ローラ様お願い致します!」
エリーがミヒロ皇女を見て微笑み声を上げる。
「みなさま! それでは、乾杯!」
会場から声が上がる。
〈ローラ様! 乾杯!〉
〈ローラ様! 万歳!〉
それぞれに声が上がる。会場には子女と給仕達、護衛を含めて60人くらいはいる。
乾杯が終わると、子女達がエリー達3人を取り囲み声をかけ始めた。エリーは流暢なヒイズル語で返事をすると、驚いた顔をするものがほとんどだ。その中からエリーの前に着物を着た20歳くらいの女性がひとり出てきて頭をを下げる。
「ローラ様! わたくし、外務大臣キクチの息女サクラと申します。お話しをお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「はい、よろしいですよ。少し待ってもらえますか?」
エリーは答えると、リサと視線を合わせて頷く。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます! これからも、どうぞよろしくお願いします。