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第267話 ホワイト国王からの報告

エリーはホワイト国王と面会する

 2国間和平交渉会議17日目、午前中。(大陸統一歴1001年10月30日)


 ここはクリフォード王国上空、高度8000m付近。エリー達の乗機ランカーⅡ5号機は護衛機バルガ戦闘機3機を引き連れて飛行していた。


 エリーがキャビン窓際の席で隣のリサに話しかける。

「クリフォードで一旦補給してからヒイズルですね」


 リサがエリーの顔を見て微笑む。

「はい、一旦補給して護衛機をバルガからベルーダに入れ替えます。所要20分ほどなので機内で待機ですね。ヒイズルには補給拠点が無いので最終補給となります。ただランカーⅡ7号機が明日に物資を持って、ヒイズルに来る予定ですので補給切れの心配はありません」


 エリーは少し眠そうな顔でリサを見て言う。

「クレアさんは、どのくらいで到着出来そうですか?」


「はい、今夜にはヒイズルの領海内に入る予定です。ローラ様は人使いが荒いと申されていましたが、まあ本気では無いので安心してください……。えーーっ、現在、巡洋艦アテナ号、護衛駆逐艦3隻合計4隻、クリフォード領海域を第3戦速で航行中です。クレア中佐に繋ぎましょうか?」


 そう言って、隣のリサがエリーの顔を覗き込む。

「……? うん……とりあえず、いまはいいよ。クレアさんだって忙しいだろうし、魔都攻撃から連続任務だしね。海上補給からそのままだから少し苛立っていると思うよ」

 エリーは少し嫌そうな顔で言った。


「はい、了解致しました。では別件ですが、早期警戒機をヒイズル帝国領空に展開させることはヒイズル政府は了承済みです。すでに東方方面に2機を運用展開中です。明日よりさらに2機を追加運用予定にしております」

 リサは淡々とした口調で報告した。


「……? 早期警戒機? 戦争でもするつもり? ヒイズル帝国は敵意はないのでしょう」


 エリーは少し戸惑った顔をすると、リサは微笑み言う。

「警戒はしておくべきです。ローラ様のお力を侮る者も居るかもしれません。それに彼らの探知能力技術では早期警戒機を確認することも出来ないと思いますが、一応国際儀礼として相手政府に申告、了承をもらっただけです」


 ランカーⅡ5号機が高度を下げ始めた。そしてエリーが座席ベルトを着用する。

「服装はこれで良いのですよね?」

 エリーが隣のリサを見て尋ねる。

「はい、皇帝護衛隊の一種軍装では少し目立つので、ハリーさまが正装軍装でとのことです」


 エリーが着用しているのは、黒基調の襟と袖に銀刺繍入り第2種正装軍装である。プリーツスカートミドル丈を着用してレギンス、黒のショートブーツを着用している。ジャケットの左胸には大きく金色に輝くベランドル帝国大魔導師章がついている。ベランドル帝国において軍部の元帥に相当するものである。リサも同じ軍装を着用して左胸には銀色の魔導士章がついている。銀色の魔導師章は軍部なら左官級と同等である。


 前の席に座っているセリカも同じ正装軍装を着用してエリー達には無い大佐の肩階級章が付いている。左胸には金色のベランドル帝国皇帝護衛隊章と諜報機関章がついている。セリカはスカートでなくパンツスタイルを選択している。

 セリカがエリーの方に顔を向けて尋ねる。

「ローラ様、カリアの中継飛行場に、ホワイト国王がお越しになっているようです。ご挨拶をお願いしたいとのことですが、如何致しますか?」

 エリーが少し嫌な顔をして答える。

「……えーーっ! 面倒くさい。お帰りくださいて伝えて下さい」


 セリカが驚いた顔をして言う。

「えっ……、よろしいので」


「うん、忙しいだろうし、今回は時間も無いしね。また今度で」

 エリーはなんでも無いように答えた。それを聞いたリサがびっくりした口調で言う。

「ローラ様! それは少し問題があると思いますが」


 エリーはリサの顔を見て微笑み言う。

「大丈夫だよ。ホワイト国王は怒ったりしないよ。優しいおじさまだから」


 エリーはセリカとリサにそれぞれ小声で耳打ちすると、2人は少し驚いた顔をする。

 そしてリサが少し間を置いて言う。

「お互いに面識があったとしても、ホワイト国王の周りの者が納得しないでしょう。それにローラ様が礼儀をわきまえぬモノとの評判も広がる恐れもあります。ですので、5分でも10分でも面会して下さい」


 エリーはリサを見て真面目な顔をして言う。

「リサさん、わかったよ。対外的に横着は出来ないね。ローラのイメージを悪くは出来ないね」

 そうしている間にランカーⅡ5号機はカリア飛行場へ向けて高度を下げてホバーリング体制に入った。下では管制誘導員が旗を振っている。

 ランカーⅡ5号機はゆっくり降下して周囲にプロペラ風で埃を吹き上げながら着陸した。


 搭乗口ドアを搭乗員が開きタラップを下ろすとセリカが直ぐに機外へ駆け出して行った。そして100mほど手間で待っている20人ほどの集団にセリカが近づいて頭を下げて、話しをしたあと60才ほどのガッチリしたスーツ姿の男性と機内に戻って来た。

 エリーは男性が機内に入って来るとリサと並んで丁寧に頭を下げる。

「ご無沙汰しております。ホワイト国王陛下。今日は時間があまり無いので手短にお願い致します」


 ホワイト国王と呼ばれた60才ほどの品の良い男性は苦笑いして頭を下げて言う。

「ローラ様、前にも増して、お美しくなられて嬉しい限りです。では奥の方へ」

 エリー達はキャビンの奥のカーテンの仕切られたスペースに入る。


 ホワイト国王は座席に座ると隣りにエリーが座った。

「ホワイト陛下、急ぎの話しですか? まさか顔を見に来ただけなんてことは無いですよね?」


 ホワイト国王はエリーを見て微笑み言う。

「まあそれもある。エリーくれぐれも油断せぬように。旧王国一派の不穏な動きもある。備えはして置いたほうがよい。それと依頼の件だが、該当者の報告があった。一応言っておく。旧王国軍総司令の息子だと思われる。絶対ではないが、可能性がかなり高いと思う」


 エリーはホワイト国王を見て少し間を置いて言う。

「旧王国一派ですね!?」


 ホワイト国王は頷き答える。

「あゝ、エリーの話から適合しそうな人物はナカムラ•ソウイチロウ。旧王国一派のリーダー格だ。エリー接近するのは危険だぞ。やめておけ」


「……ええ、そうだね。いまは無理だね」

 エリーは寂しそうな顔をして答えた。ホワイト国王は座席から立ち上がり、エリーの肩を優しく叩いて囁く。

「……ヒイズルはもう1年ほどで反政府派を一掃するだろう。リーダー格のソウイチロウは見逃してはくれないだろうなぁ」


「……そうでしょうね。ありがとうございます。ホワイト国王陛下」

 ホワイト国王はそう言って、キャビンを前に歩き出した。エリーは直ぐに立ち上がりホワイト国王の横に並び搭乗口まで歩いた。

 エリーは搭乗口ドアから出るとホワイト国王に一礼する。

「ホワイト国王陛下、ありがとうございました」

 ホワイト国王はエリーを見て一礼すると、向きを変えエリーに背を向けて歩き出した。エリーはホワイト国王が、車両に乗り込み去って行くまで機外で待ち、車両が見えなくなってキャビン内に戻った。エリーはくらい顔をしてリサを見て言う。

「……少し仮眠するから、到着前に起こして下さい」

 リサは頷き答える。

 はい、承知致しました」


 エリーは座席に座るとベルトを着用して体にブランケットを掛けて目を閉じた。

 


 

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!

 これからも、どうぞよろしくお願いします。


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