第261話 エリー回復処置
エリーは回復を図る。
2国間和平交渉会議14日目午後。
ここはライオネル連合共和国、魔都マラリスより東へ20キロほど離れた森に囲まれた農村地域。エリーは一旦魔都制圧後、攻撃ベース拠点へ帰って来ていた。魔都にはグラン連邦軍空挺部隊第250師団がすでに到着、都市内部の調査を行なっている。そして、確保されたダグ•ギューデン、フランク•ピエトロは秘密裏にベランドル帝国へと移送された。
エリーは野営テント内でソアラと2人でいた。エリーは直ぐに魔都から帰って来て簡易ベットで横になりソアラのマナの魔力補給を受けて、体力の回復を図り眠りについている。口は緩み少しヨダレが垂れていた。それを椅子に座ってソアラが優しく見守っている。
(エリー……最近、疲労度合いが以前より高くなっていますね。やはり融合精神体が対応していないのでしょうか? いずれにせよ。近いうちに全回復を図らないといけませんね)
ソアラがそう思っていると、テントの入り口からレベッカの声がする。
「ローラ様! 入ります!」
ソアラは直ぐに答える。
「はい、どうぞお入り下さい!」
レベッカはテントの仕切りをめくって顔を出す。そして一礼するとテント内に入ってソアラを見て微笑み言う。
「ローラ様はいかがですか? あと30分ほどで出発しなければならないのですが」
「はい、あと10分ほどで目覚めます。出発には間に合いますので安心してください」
ソアラがレベッカの顔を見て微笑み答えた。
「さすがローラ様直属魔導士ですね。治癒回復魔法に長けていると伺いましたが。消耗直後に直ぐに回復させられるとは、かなりの魔導士であることを理解しました」
レベッカがソアラを一瞬鋭い目つきで見て言った。
「わたくしは、レベッカさまには到底及びません。戦闘魔法においてローラ様配下で右に出る者はいないと聞いております」
ソアラは直ぐに、あどけない少女の顔をしてレベッカの顔を見つめた。そしてレベッカはそれを見て笑みを浮かべる。
「ソアラ殿、私は……いえ、詮索はいけませんね。私はアンドレア出身の魔導士です。つい最近まで、あらゆる魔法に精通していると自惚れおりました。ですが、エリー様と出会い、魔法には遥かな高みがあり、まだまだ未熟者だと気付かされました。私では到底到達出来ない領域があることも理解しています。ソアラ殿もエリー様と同種のものを感じます」
「……ええ、レベッカさま、それは思い違いだと思います。確かにレベッカさまを上回る部分をあるかと思いますが」
ソアラはレベッカから視線をを外し寝ているエリーの方を見る。
(隠蔽スキルで隠していますが……、やはり少しやり過ぎましたか。女神と気づかれる訳には行きませんからね。さすがエリーの従者ですね。油断しないようにしないと)
「では、また10分ほどして伺います。それでは」
レベッカはソアラに一礼するとテントから出て行った。ソアラはエリーの寝顔を見ながら呟く。
「……レベッカさん感が鋭い!? 私をローゼだと気づいている? いいえ、この隠蔽スキルは同等以上でなければ……、まさかエリーが喋った? それも無いはず……」
そして眠っていたエリーが目を覚まし、だらしない顔でソアラを見て言う。
「……何か心配ごと?」
「……いえ、なんでもありません」
ソアラはエリーの頭に手を優しく手を添えて言った。
◆◇◆
ここはライオネル連合共和国、オーリス市中央区大統領府内。
クラリスはアリア中尉を連れて大統領執務室にデリカス大統領を訪問していた。
赤茶色ショートヘアの小柄なアリア•ベントレー中尉が深く一礼した後、デリカス大統領に言葉を発する。
「デリカス大統領、失礼致します。我が司令官魔導師ローラよりの連絡事項をお伝え致します。魔都マラリス攻略完了した旨お伝え致します。そして首謀者であるダグ•ギューデンも討ち取り成敗した旨もお伝え致します。なお、現在後続部隊を順次投入完全制圧作戦を展開しております。翌日中にはマラリスの完全掌握は完了する予定です」
10人掛けのテーブルの反対側に座っていた、デリカス大統領は頷き冷静さを装い答える。
「さすがローラ様ですね。魔都マラリス攻略がこうもあっさり終わるとは、私も感嘆を隠し得ません」
(……戦闘開始予定日に魔都陥落!? 予想では本格戦闘は1週間から10日後だったはず? ライオネルに入国した部隊は小規模だった? こんなはずはない、だが諜報機関からの報告では魔都は大規模炎上していたと報告を受けている。まだ開始から1日も経っていなのに、あの手こずっていた魔都がこうもあっさりと……計算狂いも甚だしい! どうしたものかクラリス嬢の仲介を受け入れるしか無いのか)
テーブルの反対側に座っているクラリスがデリカス大統領を見て言う。
「デリカス大統領閣下! 魔導士ローラ様は予定通り訪問されるとのことです。準備を致します」
デリカス大統領は右手を軽く挙げて言う。
「クラリス嬢! あゝ、頼みます。到達は1時間ほどですね。私も官僚に話を通しておきます」
クラリスはアリア中尉を見て言う。
「アリアさん、ローラ様へ着陸地点の連絡をお願いします」
アリア中尉はクラリスに一礼して大統領執務室から出て言った。
デリカス大統領は椅子から立ち上がり言う。
「クラリス嬢! あなたが頼りですお願いしますね。ローラ様を上手く利用しようとしたことが裏目に出たようです。……ギューデンがこんな簡単に粉砕されるなんて思っていませんでしたよ。いっそ王政に戻しますか? あなたが即位すれば……」
クラリスはそれを聞いて言う。
「弱気ですね。選択肢は無いのです。ローラ様と話し合い協定を結ぶ方向を示して、国家内をまとめるだけです」
クラリスは言い終わるとデリカス大統領に一礼して大統領執務室から出て行った。
デリカス大統領は椅子に座って天井を見つめる。
「……なってことだ。魔導士ローラ……話をまとめられるだろうか?」
そしてデリカス大統領は溜め息を吐いた。
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