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第253話 フランクの後悔

魔都を再び襲うミサイル群

 2国間和平交渉会議14日目早朝。


 ここは魔都マラリスの中心街、マラリスタワー地下層50mの作戦司令所。

 魔都マラリス、誘導ミサイル第1波攻撃から15分ほど経過している。


 作戦司令所にはモニターと端末が並べられそれぞれオペレーター達が忙しそうに作業をしていた。部屋の1番後ろの50インチほどのモニターの前に座っているフランクが、硬い表情をして上がって来た情報を確認している。

(……なんなのだ、これは、まるで我々を潰すために前もって準備されていた様な攻撃だ。地上の損耗率6割……あり得ない? まだ、始まったばかりだぞ。これだけで終わるはずがない。奴らはここを灰するつもりだ。全員地下へ避難させるしか無い)


 フランクはオペレーター達に指示を出す。

「直ちに! 各傭兵団、私兵警備部隊へ! 地上施設は放棄して地下施設に移動せよと伝達せよ! 奴らは我々を殲滅するつもりだ」


 それを聞いて30名のオペレーター達は慌ただしく各部隊へ通信指示を出し始めた。

 隣にはオペレーター長ハンナの代わりに座っている、金髪のショートヘアの女性がフランクを見て小声でフランクに言う。

「……この状況では、今から降伏勧告を受け入れることは出来ないのでしょうか? フランク様……ご再考を」

フランクは金髪ショートヘアの女性を無表情に見つめて言う。


「ベラリス、無理だな。ダグ様が受け入れるはずが無い。意思決定権は私には無い……、残念だが」

 金髪ショートヘアの女性オペレーターは顔を伏せて言う。

「……そうですね。残念です。相手を侮ったのは失敗でした。情報が不足していたのもありますが。ローラとベランドル帝国の情報操作、軍事力……今、思えば、私達は上手く乗せられた感じですね。勝てない戦いに引きずり出された」


 フランクが嫌な顔をして金髪ショートヘアの女性オペレーターを見て言う。

「ベラリス、君もハッキリ言うものだな。ダグ様が聞いたら激怒するぞ。君でもここから勝利は無理と判断するか?」


 金髪ショートヘアの女性オペレーターは、悲しそうな顔をしてフランクを見上げて言う。

「はい、攻撃は容赦無く行われます。我々が降伏するか、全滅するまで続くと考えられます。そして我々には現状対抗手段がありません。仮にダグ様が出られたとしても、局面の打開は困難かと。向こうには大魔導士ローラがいますから……、当然、対策は講じているものと」


 フランクは少し呆れた顔をして言う。

「君は運命を共にするつもりか?」


 金髪ショートヘアの女性オペレーターは寂しそうに言う。

「……逃げたくても逃してくれませよ」


 フランクは視線をモニターに向けるとヘッドセットを耳にあてる。

「ハンナ! 状況はかなり悪い! 次の攻撃が来るだろう。シェルターへ退避しろ!」


『はい、フランク様、了解致しました! こちらも予想以上に酷い状況です。今からシェルターへ移動します』

 ハンナが応答すると通信は切れた。


 フランクは各映像を確認しながら自分の体が震えているのを感じる。

「……? ダメだな……」

 フランクの呟きを聞いて隣りの金髪ショートヘアの女性オペレーター、ベラリスが言う。

「ダグ様を説得出来ませんか?」


「……!? 無理だな。そんなことを言えば私は処分されるだろう」

 フランクは無表情にベラリスを見て言った。


「郊外に観測士は配置したのか? 地下通信ケーブルでの接続は?」

 フランクがベラリスに尋ねた。

「はい、指示は出しております。地上のケーブルアンテナ類はほぼ壊滅状態なので、現在切り替え、移動中です。10分以内には完了します」

 ベラリスはそう答えて端末を操作した。


「対空対応出来そうか? まあ、残っていたとしても焼石に水か……」

 フランクが端末を操作して確認しながら言う。隣りのベラリスが少し間を置いて答える。

「魔導拡散弾がありますが、多分役に立たないと思います。初期攻撃の映像を確認する限り、飛行体は防御シールドの様なもので覆われてて小火力では迎撃は困難でしたから」


「わかった。全て地下施設へ退避させて最終決戦に備えよう」

 フランクはそう言って立ち上がり声を上げる。

「これより、地下シェルター施設へ全人員へ退避命令発動! 直ちに移動開始せよ! 全人員だ! 都市内全人員、観測士も含めてだ!」


 オペレーター達は慌てた様に指示を各所に連絡し始めた。


《こちら西ブロック2より連絡! 飛行体確認! マラリス方向! 繰り返す! 飛行体確認! マラリス方向へ飛んで行きます!》

 作戦司令所内のスピーカーから緊迫した声が響いた。


「やはり来たか! 退避は! 間に合うか……」

 フランクは動揺した声で慌てて声を上げた。そしてマラリス郊外の各地点に配置されている観測士から次々と報告が入って来る。

「やってくれる……」

 フランクは呆然隣と情報モニターを見つめていた。隣りのベラリスが慌てて声を上げてオペレーター達に指示を出す。


「各所! 非常警報発令! 」

 

 ◆◇◆


 魔都マラリス空域高度7000m付近。


 上空にはグラン連邦国軍、デーン航空群所属、早期警戒機ガリアが魔都撮影後、旋回しながら待機していた。

「こちらアルバトロス1号! 第2次着弾予定時刻2分前! 誘導弾23個体、位置補足! ロスト個体無し!」

 早期警戒機ガリアの管制室内でレーダー管制士官キャス少佐が連合軍本部に報告した。


『こちらドール本部! アルバトロス1号! 着弾観測、誘導着弾ポイント補正願います! 爆散高度指示修正コードに変更願う!』


 キャス少佐は緊張した面持ちでモニターを見ながら機器を操作する。他の管制士官達も手慣れた動きで端末操作を行なっている。

「こちらアルバトロス1号! 修正コード送信完了! 送信完了! 各誘導弾受信応答確認!」

 

『こちらドール本部! 了解!』


「こちらアルバトロス1号! 着弾まで1分! 1番から23番問題無し!」

 キャス少佐はモニターを見ながら体の震えを感じていた。

 

 


最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!

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