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第251話 アルデの森

エリーはヴェラの弟子と接触する

 2国間和平交渉会議14日目早朝。


 ここは魔都マラリスより東へ20キロほど離れた森に囲まれた農村地帯、小規模農家が点在している。そこの街道筋に一台の黒色の軍用車両が止まっていた。車両内には前席に2人の男性と後席に2人の女性が乗り込んでいる。全員年齢は20代前半くらいに見えた。皆、黒いアーマード戦闘スーツを着用している。


「俺達、斥候なんて、つまらない任務だよなぁ」

 茶髪で目が細い青年が嫌そうに言った。

 ここにいる男女4人は組織幹部ヴェラ•ドバルが手塩にかけて育てていた暗殺系魔道士達であった。


「まあ、これも重要な任務でしょう! 一番先に敵を見つけて叩くことが出来るんだから、いいじゃない。それにフランク様、直々のご命令なんだから。敵を見つけたら指揮官をやれてね。私はワクワクするね。大軍勢を混乱に陥し入れる。ヴェラ様もきっと褒めてくださる」

 グリーンのポニーテールの女性が後部座席から身を乗り出して前席の茶髪の青年に微笑みながら言った。そして後席の隣りに座るサンゴ色のショートヘアの女性がグリーンポニーテールの女性に呆れたように言う。


「でもさぁ、敵がいないんじゃ、どうしようもないよね」


 助手席に座る黒髪、茶色の瞳の青年が前を向いたまま言う。

「あゝ、そうだ。敵の気配が無い。攻撃予定時刻なのに、大規模軍を進軍させられるルートはここと、あと2箇所あるが、いずれも気配が無いんだ。おかしいと思わないか?」


 後席のサンゴ色ショートヘアの女性が助手席の黒髪青年に言う。

「本当に攻撃してくるつもりあるのか……まだ、ライオネルさえ入国していないという話もあるが」


 隣りのグリーンポニーテールの女性が言う。

「グランには空を高速で飛行する航空機とか言う兵器がある。今回それを使用するのかもしれない。ヴェラ様が言っておられた。大陸でとんでもない力を持ったものが現れたと……。ヴェラ様は、今回魔道士ローラの暗殺計画にも乗る気では無かった。ダグ様に押し切られたと……。出発前、私にヴェラ様が弱音を吐かれた。あのいつも強気なヴェラ様が。そして私に言われたのだ。敵を見て勝てないと感じたら直ぐに逃げろと……。私はその言葉を聞いて、聞き返したらヴェラ様は。私を抱き寄せて抱擁してくれた。なんか最後の別れみたいで嫌だった。けど、ヴェラ様は大陸でも上位クラスの魔導士そう簡単にやられる訳は無い」


 隣りのサンゴ色ショートヘアの女性が寂しそうに言う。

「ラナあんた……ヴェラ様と抱擁したんだ。羨ましいよ。でも、出る前に聞いたけど、ヴェラ様と連絡がつかないて。まあ心配はしてないけど少し不安になるよ」


 車両の通信機器から女性の声がする。

《こちらタワーワン! 各隊に通達! 攻撃予定時刻2分前! 各オペレーターへ報告せよ! 以上!》


 助手席の黒髪の青年が通信機器を操作してヘッドセットを耳につける。

「こちらベリアン! 異常無し! 以上!」


『こちらタワー28! ベリアン! 了解! 何も無ければその場で待機! 以上!』


「こちらベリアン! タワー28! 了解! 待機します」

 助手席の黒髪青年はヘッドセットを外してダッシュボードに置いた。


「……?」

 グリーンポニーテールの女性が慌てたようにドアを開け車外に飛び出す。そして空を見上げて。

「……あ、あれは……」

 残りの3人も車外に慌てて出て空を見見上げた。なんとも言えない轟音と共に上空を通過して行く飛行体。

「あの方向はマラリスだよな……」

 茶髪の青年が空を見上げながらつぶやいた。


 サンゴ色ショートヘアの女性が慌てたように言う。

「あれてグランの新兵器なの?」

 黒髪の青年が助手席に乗り込むとダッシュボードのヘッドセットをとって耳にあてる。そして声を上げる。

「こちらベリアン! タワー28! 飛行体確認! 新兵器と思われる。マラリス方面に向かっている!」


『こちらタワー28! 飛行体? 了解です。直ちに防空体制を取ります。ベリアンは引き続き現地点の警戒を願います』

 オペレーターの応答が直ぐに入り答えた。


「こちらベリアン! 了解!」

 黒髪の青年はヘッドセットをダッシュボードに置いて車外の3人に言う。

「攻撃が始まった! たぶん地上も動きがある。俺達はここで警戒を続ける」


 そしてしばらくしてマラリスの方向から連続して爆発音が聞こえて、暗闇が明るくなった。

「空気が振動している……」

 茶髪の青年が運転席に乗り込み道から林に移動させて車両を隠した。4人は車両から装備を下ろし装着して行く。


「とりあえず、相手がどんな新兵器を使っても簡単にマラリスは陥ちたりしない」

 黒髪の青年が少し緊張したように言った。


 グリーンポニーテールの女性がマラリスの方角を見ながら言う。

「敵は必ず来る! 好きにはやらせない」


「ラナそうだね。ヴェラ様との修練の成果を見せる時だね」サンゴ色ショートヘアの女性がグリーンポニーテールの女性ラナを見ながら微笑み言った。


 そして4人の上空を空気を切り裂くプロペラ音が通過する。4人は素早く林に身を隠した。巨大な飛行体2機は、高度100mほどで静止するとゆっくりと林の中の空き地に降り立った。ラナ達4人は息を潜めて300mほど先の様子を伺う。


 ◆◇◆


 エリー達の搭乗したランカーⅡ5号機はマラリス市郊外、農村部、森の空き地へ着陸体制をとっていた。

 エリーは座席のシートベルトを外して座面につかまりながら立ち上がり言う。

「ユーリさん、周囲に脅威はありませんが……、弱い魔導反応があります。強い殺気は感じません。うーーん、護衛隊員では少し余すかもしれません。背後に回って対処してください。あゝ、電撃棒でお願いしますね」


「はい、了解致しました」

 ユーリは直ぐにランカーⅡキャビンの搭乗口に移動するとドアのセーフティロックを解除して、搭乗員に手を挙げ合図する。

 搭乗員はインカムで高度を確認する。そして一瞬ランカーⅡが静止すると。

「ユーリさん! OKです!」

 ユーリは頷き、瞬時に魔力量を上げるとドアを開け直ぐに機外へ飛び出した。搭乗員は確認して直ぐにドアを閉める。ランカーⅡはそのまま着地した。

 搭乗員は素早く搭乗口ドアを開けると、武装した護衛隊員10名ほどがすぐに飛び出して、ランカーⅡの周囲に警備展開した。


 エリーとソアラは搭乗口から周囲を感知スキルで警戒しながらタラップを降りる。


(ユーリさん、上手くまわり込んだみたいですね。4人、全員魔道士ですね。一応魔力量を抑えているみたいです。実力的にはどうでしょう)

 エリーはそう思いながら腰のホルダーからで電撃棒を取り出し伸ばした。エリーは一旦立ち止まり、周囲の生体反応を感知する。

(4人以外は感知出来ませんね)

 エリーは神眼スキルを発動、左の瞳が真っ赤に変わり周囲を視感する。

(魔道士レベルは……まあ、全員捕えて調べてみますか)

 エリーは隣りのソアラを見て微笑み言う。

「ソアラちゃん、周囲に魔力波動が漏れないように結界張ってくれるかな」

 ソアラは少し驚いた顔をしてエリーを見つめる。

「ローラ様、何をされるおつもりですか? はい、理解しました。それでは周囲1キロに展開します。それでよろしいですか?」


 エリーは頷きソアラに微笑む。

「ソアラちゃん、ありがとう。ここで待っていてね。ユーリさんと2人で処置するからソアラちゃんは結界だけで良いからね」

 ソアラはエリーを見上げて頷いた。エリーは右手の電撃棒の魔力量を上げて、4人が潜んでいる林のほうへゆっくり歩き出した。


 エリーはユーリに伝心イメージを送り行動を共有する。

《ユーリさん、殺さないでくださいね。4人は魔力耐性はそこそこありそうですが、ユーリさんの普通レベルではたぶん耐えられませので、ユーリさん1割程度でお願いします》


《はい、エリー様、承知しました。背後から追い込みます。エリー様が仕留めてください》

 ユーリから伝心が入った。そしてエリーはゆっくり全身に魔力を通しながら林のほうへ進んで行く。エリーは神眼スキルを両眼に発動して両眼は真っ赤な瞳に変わった。

(4人は隠蔽スキルを使っていますね。全員大体同程度ですかね。ライオネルのアルティさんレベルでしょうか。まあ、能力を隠しているのなら仕掛けてみればわかりますね)


 エリーは一気に魔力量を上げて体を包む光の色が、白発色から薄紫色に変わると、林に隠れる4人の魔導士へと飛翔した。



最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!

 これからも、どうぞよろしくお願いします。

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