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第245話 魔都の魔女

 2国間和平交渉会議13日目夕方。

 

 ここはライオネル連合共和国、商業都市マリトバ、昔は港湾貿易都市としで栄えたが、度重なる内乱により見る影もない。港も昔のままほとんど旧式設備が整備されることなく放置されている。この街の中心部は港湾地区から内陸へと移りだいぶ時が経っていた。そしてその寂れた港湾倉庫街には犯罪組織ギューデンの武器製造工場ブロックがあった。


 倉庫街建物の一室ではギューデンの大幹部ヴェラと10名の黒いローブを羽織った魔道士が装備を整えてベランドルへ向けて出発しようとしていた。


「まずは、所在のわかっている皇帝エランを仕留める。お前らも気を引き締めろエランとてあの魔道剣士アイクルや帝国上位魔道剣士を斬り倒した手練の魔道剣士だ! 容易ではない!」


 ヴェラを囲む魔道士の1人が言う。

「ヴェラさま、自ら出向かれるとは余程の相手であることは理解しております。ドール城への侵入は手筈を整えております。ドール市内での揺動も城内でも抜かりなく整えております」


「まあ、ほんとは気が乗らないだけど、しょうがないんだよ! ダグさんにお前が行けって言うれたらね」

 ヴェラは不機嫌な顔をする。


「じゃあ出発するよ! 飛行船の準備は?」

 ヴェラが尋ねると、魔道士のひとりが答える。

「はい、ヴェラさま、10分で出発出来ます」


 ヴェラは部屋を出ようとすると、不穏な魔力を感知する。

(……なんだ? 周辺に殺気と魔力の波動の乱れが生じている!?)

 ヴェラが隣りの魔道士に話し掛ける。

「感じるか? どう思う?」

 隣りの老練そうな魔道士は答える。


「はい、味方ではありませんね。たぶん敵でしょう」


 その言葉を聞いてヴェラは不機嫌な顔をして言う。

「でしょうね。しかも、かなりの使い手の魔道剣士か魔道士だね。嫌な匂いがする……」


 ここは魔都マラリスには及ばないが重要拠点、警備体制はそれなりに敷かれている、それを突破して侵入して来るレベルは、並の人間ではない事はわかっている。

 ヴェラは目を細めて老練そうな魔道士を見て言う。

「対処する! お前らも戦闘体制をとれ! グースカは私について来い! あとはバリアンに任せる」

 老練そうな魔道士が頷き他の魔道士が集まる。30才前後の目の細い魔道士がヴェラに近づき頷いた。

「グースカ、お前は剣が達者だな。私の援護を頼んだ」


「はい、ヴェラさま、お任せください」

 グースカと呼ばれた男性は口元を緩める。


「ヴェラさま! 私達は2班で迎え討ちます。それでよろしいですね」

 老練そうな魔道士がヴェラに言った。ヴェラは機嫌の悪そうな顔をして答える。


「バリアン、それでお願い周辺の雑魚は任せた」


「はい、了解です。それでは防御障壁を展開して飛び出しましょう!」

 バリアンと呼ばれた老練そうな魔道士が声を上げた。

(手練だとしても、こちらの方が戦力的には上回ってるはず……、私を含めて特級クラスが4人あとは上級クラス、しかも特級クラスSランク以上が2人いる。負けは無い)

 ヴェラは隣りのグースカを見て睨むような視線を向けて言う。

「抜かるなよ。相手がどんな手を使って来ても、対応出来るようにしておけ」


 グースカは余裕の笑みを浮かべて答える。

「はい、大丈夫です。ヴェラさまの期待を裏切ったことが有りましたか」


 ヴェラは室内にいる配下魔道士を見渡して声を上げる。

「相手に先手を取られた! だが我々は負ける事は無い! なぜなら我々はギューデン最強の魔道部隊だからだ! そしてこの一戦を持って我々の力を奴らに見せつけてやろうではないか!」


 そしてヴェラは感知スキルを発動させ周囲の状況を把握しようとする。

(なーーっ! もうかなり近くまで侵入されている。警備魔道士レベルでは役に立たんか? それに2人ほどはかなり厄介そうだ)


 ヴェラは少し焦ってように言う。

「予想より、手強い相手だ! 全員心してかかれ!」


「はっ! では!」

 そう言ってバリアン率いる魔道士達が部屋から飛び出して行った。部屋に残ったヴェラとグースは魔道剣を鞘から抜き、魔力を通し始める。


「グースカ! もう来るぞ!」

 ヴェラが声を上げる。

「はい! 私でもわかりますよ」


「ほんと……殺気のこもった魔力を発散しながら」ヴェラが呟く。


「私は剣技はそこそこだからね! グースカ! フォローよろしく!」

 ヴェラが部屋の入口方向を見据えてグースカに声を上げた。

「はい、お任せ……くださいと言いたいところですが、ヤバイかもです」


 ヴェラは魔道剣を中段に構えて魔力量をさらに上げる。当然のように身体強化も図っている。開け放たれているドアの向こう側から、悲鳴と呻き声がしばらく聞こえていたが今は静かになった。ヴェラは部屋の周辺にいた組織の警備傭兵が壊滅したことを確認した。

(やはり、こいつらでは相手にならないか! バリアン達は離れているが、他の敵とやり合っている。こちらへは無理だな)


 そして入口に2人が姿を現し、ヴェラ達と対峙する。ひとりは鬼神のようなオーラを纏って剣を構えてヴェラを見据えている、身長は2m近くに見える。もうひとりは女性で剣を構えているが隣りの男性ほどの威圧感は感じない。だが、それでもかなり厄介な相手である事は変わりない。唐突に青髪のロングヘアの女性剣士がヴェラに声を上げた。


「ヴェラ•ドバル! 懐かしいわね! あなたには期待していたけど! 残念だわ、あなたも落ちたものね! 残念だけど、ここで終わりにしましょう!」


 ヴェラはその言葉を聞いて、女性剣士を観察する。

(……誰だ? お前は!? ……まさかグロリア?)


 ヴェラは女性剣士を見据えて声を掛ける。

「グロリア•ベルベッド! だな! 生きていたのか?」


「ええ、こうやってあなたの前に立てたことを嬉しく思うわ!」

 そして女性剣士は隣りの男性魔道剣士に声を上げる。

「トッドさん! このものは私に任せて頂けますか! 因縁があるので!」

 隣りの男性魔道剣士は軽く頷き答える。


「ええ、良いでしょう! しかし、サディさんには少し荷が重いかもしれませんよ」


「いえ、大丈夫です! 私にはローラさまから頂いた加護がありますから」


 男性魔道剣士は視線をグースカに向ける。グースカは直ぐに萎縮すると、隣りのヴェラに声を掛ける。

「ヴェラ……さ、ま、これはかなりヤバイ」

 ヴェラはグースカが後退りするのを確認して声を上げた。

「グースカ! 何をやっている!」


 グースカは血の気の引いた顔で答える。

「一流の剣士てのは相手の力量を見抜けるから一流なんですよ。勝てる相手かどうか? だが目の前の相手は、俺がどう足掻いても……」

 そう言ってグースカは魔道剣を握り直した。


 

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます! これからも、どうぞよろしくお願いします。

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