第244話 エランの憂鬱
2国間和平交渉会議13日目夕方。
ここはべランドル帝国帝都ドール市、ドール城、皇帝執務室。
エランは執務室中央テーブルソファーに座り難しい顔をしている。
「それで、どうなのですか? 魔都壊滅作戦の進捗は」
反対側に座るマーク宰相が答える。
「予定通りです。ローラ様の率いるミサイル戦略師団もすでに現地に到着準備を進めています。後続の戦闘航空隊も拠点飛行場へ順次移動中です。攻撃予定時刻には全て準備完了予定となっております」
エランはマーク宰相の隣りに座っているセリカを見て言う。
「セリカさん、各国の組織拠点攻撃はどうなっていますか?」
「はい、重要拠点には連合諜報特殊部隊をすでに配置につかせております。アンドレア魔道師団もフォローしてくださるので問題は無いものと思います」
セリカはエランの顔を見て頷いた。
「……では私は、万が一に備えて守備を固めておけば良いのですね」
エランは少し寂しそうな顔をして言った。
「はい、それで結構です」
セリカはそう言って微笑んだ。
「エリーからもらった魔道ペンダントを身につけていますから、よっぽどの相手でなけば問題ありませんね」
エランはソファーから立ち上がりマーク宰相を見て呟く。
「……私もエリーと一緒に見届けたいのですけどね。そういう訳にはいきませんよね……」
「エラン陛下、お役目をご理解ください」
マーク宰相が立ち上がりエランを見つめて言った。
「……では、私は手筈通りに準備を進めます。それで北部方面軍の司令官にエド中将を復帰任命させるのですが問題ありませんね」
エランはマーク宰相に少し嫌な顔をして尋ねた。
「はい、元アイクル派ですが、エリー様の魔剣で斬られて、屈服し臣下の礼をとり、今では敵意は無く問題ありません。有能な指揮官が絶対的に不足している現状では致し方ないと、閉職にする案も有りましたが、エリー様の反対により却下されています」
エリーはハット息を吐いて言う。
「エド中将はアイクル派閥の急先鋒だったのにね。それでグラン連邦からの捕虜返還は進んでいますか?」
セリカはエランを見て答える。
「はい、とりあえず、軍務局管理部で受け入れ予定となっています。戦争犯罪規定に該当しない者は即時帰国が認められています」
「そうですか。でも精神判定は確実にお願いしますよ。良好な者だけ復帰させてくださいね」
エランはそう言って2人に背を向けると、執務机の方へ行き受話器を取る。
「グラン連邦国軍、ハル外事局長に繋いでもらえるかしら」
エランは執務机の椅子に座り電話が繋がるのを待っている。マーク宰相とセリカは一礼すると執務室から直ぐに出て行った。
『はい、ハルです。エラン陛下、ご内密なお話は暗号通信機でお願いします。盗聴の恐れがありますので』
ハル局長はエランに言った。エランは少し寂しそうに言う。
「いえ、ドールにいらっしゃるのでしょう? だから、食事でもと思ったのです。ダメですか?」
『……いえ、申し訳ありません。私が勘違いしてしまいました。はい、喜んで。1時間後にお伺い致します。それでよろしいでしょうか』
「はい、それで結構です。ハルさん、お待ちしております」
エランは受話器を元に戻し、そしてエランは執務椅子の背もたれに体を預けて顔を天井に向けると、ため息を吐いた。
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