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第243話 ジョルノ工兵大隊

エリー達は戦闘準備を進める

2国間和平交渉会議13日目午後。


 ここはジョルノ共和国とライオネル連合共和国国境線付近。


 ジョルノ共和国軍工兵隊が街道周辺部の森の木を伐採して、陣地整地作業を行っていた。

 工兵隊大隊長が地図を見ながら工兵隊将兵に指示を出している。


「急げ! 広さは少し大きく確保しておけ! 時間がないぞ!」

 工兵隊大隊長は焦ったように大声で指示をしている。

 工兵隊の第5小隊長が工兵隊大隊長に駆け寄って来た。

「大隊長! 爆薬をこちらにまわしてもらえますか! 重機では間に合いません!」


「……後続の第2中隊がもう到着する! それまで重機と人力でやってくれ!」

 工兵隊大隊長はめんどくさそうに声を上げた。

「はっ! 了解です!」

 工兵隊小隊長は少し顔を顰めて答えると、敬礼して自分の部隊へと駆け足で戻って行った。


 しばらくして工兵隊大隊長のそばに、工兵大隊副長がやって来た。

「大隊長、進捗は少し遅れ気味ですが、後続が合流すればなんとかなりますね。しかし、急ですね。ライオネルと戦争でも始めるつもりですかね」


 工兵大隊副長は笑みを浮かべながら言った。それを見て工兵大隊長は機嫌の悪い顔をして言う。

「知らんよ。ただ、陣地を構築せよとの命令を受けただけだ。ジョルノ国軍の工兵隊及び土木工事業者おおかた駆り出されているとの話だ。国境沿い広範囲で我々と同じことをしているとのことだ。ただ噂ではベランドル帝国が動いているらしいがな」


 工兵大隊副長が大隊長を見て言う。

「ライオネルはもう終わりということですね。グラン•ベランドル連合が最後の仕上げに動き出した。それを私たちが手伝っているのですね」


 工兵大隊副長はそう言うと、工兵大隊長に敬礼して背を向け歩きだす。そこへ慌てたように通信装置を背負った通信担当下士官が駆け寄って来た。

「大隊長! 司令部から通達が入りました!」

 通信下士官は大隊長前で立ち止まり敬礼して、声を上げる。


「参謀本部通達! 第2軍各隊へ! 本日14:50より無期限の無線封鎖を発令する! 尚、暗号通信機を含め、いかなる通信機器の使用も許可しない! 以上! とのことです!」

 通信下士官は報告して工兵大隊長に再度敬礼した。工兵大隊長は命令指示書を受け取り怪訝そうな顔する。

「……戦闘になるのか? 副長! 無線封鎖だ! 各隊に伝令要員を確保しろ!」


 工兵大隊副長は腕時計を確認して通信下士官の背負っている通信機器のヘッドセットを取って、通信下士官に視線を向ける。

「大隊内通信に切り変えてもらえますか」


 通信下士官が直ぐに、腕につけている端末を操作して副長に答えた。

「はい、回線切り替えました!」

 工兵大隊副長は直ぐに声を上げた。

「305工兵大隊各員に達する! 本日1450より無線封鎖となる! あらゆる無線機器の使用が禁止される、各員発信出力オフを確認して各小隊長に報告のこと。尚、各小隊1名伝令要員を任命確保せよ。以上!」


 工兵大隊副長はヘッドセットを通信下士官に渡すと、工兵大隊長に歩み寄り言う。

「部隊が動くようですね。越境するのでしょうか?」


 工兵大隊長は機嫌の悪い顔をして言う。

「さあな、私の立場では知り得ぬことだ。とりあえず陣地を構築作業を終わらせるぞ! 貴様も向こうの作業の指揮を取れ! 残りはあと3ポイントだったな!」


 工兵大隊副長は笑みを浮かべながら答える。

「いえ、ここを含めて、東の端の2ポイントです。私の担当箇所は地ならしも終わっています。ですので東の端の応援をさせています。第2中隊が到着すれば1時間もすれば完了します」


 工兵大隊長は顔を歪めて不満そうな顔をして言う。

「そうか、それなら良い。構築完了箇所の再確認を頼む」


 工兵大隊副長は大隊長に敬礼してその場を離れた。

(ベランドル帝国軍がここまで進出するのか? 急いでも到着まで3日は掛かるだろが……えらく急いでいるし、無線封鎖も早い? そして憲兵隊が周囲の警戒をしている、なぜだ? 情報統制か?)


 工兵大隊副長が考えながら歩いていると、けたたましいいプロベラ音が聞こえて、上空を航空機が低空で旋回した。

(……なっ! 灰色の機体! それにあのマーク……! 確かベランドル皇帝護衛隊の女神……紋章! ベランドルの精鋭部隊!)

 工兵大隊副長は慌てて工兵大隊本部テントへ引き返す。

 そして上空を旋回して着陸地点を確認したランカーⅡはホバーリングを始め、しばらく地上の様子を確認する。整地された地点には慌てたように憲兵隊がやって来て工兵隊将兵を外へ追いやった。そして一機のランカーⅡがゆっくりと降下を始め着陸する。

 その様子を工兵大隊副長は驚愕の表情で呆然と見ていた。

(な、なんだこの巨大な飛行機は……我々の精鋭機甲師団が半日で壊滅したと聞いたが……ベランドルとはこれほどの格差があるのか……)


 工兵大隊副長が着陸したランカーⅡを見ていると、いつの間にか第2軍司令部の将官、参謀達が機体周辺に集まっていた。

(物々しい警備体制と、うちの軍団司令官が慌てて来ているてことは、ベランドル帝国のお偉いさんが来たってことか?)


 ランカーⅡの搭乗口ドアが開きタラップが下された。そして20代前半くらいの白い軍服を来た美しい女性が降りて、タラップの横で待機した。そして2番目に上下黒のスーツを着用した女性がタラップを降り、タラップの横でまた待機する。3番目に紫色のポニーテール、白い軍服を着た二十歳くらいの女性がタラップを降りて丁寧に一礼すると、待っていた司令官達が慌てた様子で駆け寄り頭を下げている。工兵大隊副長には向こうの声は聞こえないが、一番上の人物であろうことはわかった。


(……あれがベランドル帝国の大魔道士ローラさまか? 噂通りの見た目だな、だが実年齢は60才くらいと……とても信じられないが……)


 そう思って工兵大隊副長が眺めていると、ローラらしき女性と目が合った。女性は視線を合わせて微笑む。

「……!? 気のせい?」

 工兵大隊副長は戸惑って焦った顔をする。30mほどの距離があり、周囲には工兵隊の将兵と憲兵隊を含めて10人ほどはいる。ローラらしき若い女性は司令官達と挨拶を済ませると、工兵大隊副長の方向に歩き近寄って来る。周囲の将兵達は戸惑った様子で声を漏らした。

 ローラらしき若い女性は10mほど前に来ると、工兵大隊副長を見て声を上げた。

「コナーさんですよね!」

 工兵大隊副長は名前を呼ばれて驚いて声を上げる。

「……はい! コナーですが!」


「お久しぶりです! べマン工科大でお会いしました!」

 ローラらしき若い女性は声を上げて、さらにコナーと呼ばれた工兵大隊副長に近づこうとすると、慌ててやって来た。女性2人に抱えられて引き戻さる。そして何やら女性2人に何やら言われ、少し気落ちしたような顔をしてコナー工兵大隊副長に言う。

「また機会があれば、お話しましょう! それではまた」


「……?」

 コナー工兵大隊副長の周囲にいた将兵達は驚いた顔をしてコナーのほうを見ている。

(……へえっ! ローラ様! 確かべマン工科大でって言ってたけど? 留学の時にローラ様に会った!? 覚えが無い……)

 コナー工兵大隊副長が考えていると、工兵大隊長が動揺した顔で近くにやって来て言う。

「副長! ローラ様と面識があるのか? そうならそうと言ってくれ。だから日頃からあんな態度だったんだな」


「……いや……そんな、私には全く……」

 コナー工兵大隊副長は答えると、周囲の将兵から言葉を掛けられた。


「勘弁してください! 申し訳ない!」

 そう言って慌てたようにその場から離れた。


 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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