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第238話 エリーはアーサー卿に告白する

エリーとアーサー卿は話し合う

 2国間和平交渉会議12日目、夕方。

 ここはグラン連邦国首都べマン市北区の高級住宅街。

 エリーは高級住宅街でも一際大きな塀に囲まれた屋敷に来ていた。中枢院アーサー卿のお屋敷である。


 エリーは今日、ベランドル帝国魔道士ローラとしてアーサー卿を訪問している。グラン連邦国来賓専用高級リムジン車両が屋敷玄関前に1台警備護衛車両が3台停車していた。


 エリーは屋敷2階、50畳ほどの広さの応接室でアーサー卿と2人、ソファーに座り話をしている。エリーは紅茶カップを右手に持って一口含んで嬉しそうに言う。


「ありがとうございます。レンベルの飛行ユニットは問題なく運び込まれ。秘密工廠で現在調整中です。1ヶ月後には起動出来るようになると思います」


 アーサー卿は少し間を置いてエリーに微笑み答える。

「それは何よりです。それでもう一体ですが、現在まだ手掛かりがありません。なにしろローゼ様とコンタクトが取れないので、申し訳ありませんが、しばしお待ちください」


 エリーはちょっと申し訳ないような顔をして言う。

「はい、その件ですが……、申し訳ありません! 実はもうすでに見つかっているのです。報告が遅れてすみません……」


 アーサー卿が少し怪訝そうな顔をする。

「……それは、どう言った? まさかローゼ様と?」


「いえ、エルヴィス帝国で偶然に……」

 エリーは口篭ったように言った。それを見てアーサー卿はそれ以上は尋ねる事はしなかった。


「しかし、ローラ様の偽装スキルをお使いの時は雰囲気が違いますね。おとなびて見えますね。それに受ける印象が全く違います。私は事情を把握していますからなんとか認識出来ますが。知らない人間が見たら別人ですよ。ですが私の好みは普段のエリー様ですがね」


 エリーは少し戸惑った顔をしてアーサー卿を見る。

「……!?」


「もし、ローゼ様とお会いする事がありましたら、ご連絡をお願い致します」


「……はい、会う事があれば直ぐに連絡します」

(……あんなに近くに居たのに? 本当に気づかなかったの? 一応ローゼの上位使徒なのに? それだけローゼの魔力隠蔽能力が高いて事なのかな。ソアラちゃんには口止めされているから、バラす訳には行かないんだよ。ゴメン! アーサー様!)

 エリーはそう思いながら、愛想笑いを浮かべる。アーサー卿はエリーを見てため息を吐き、言う。


「申し訳ありません。私がもう少しローゼ様を管理していればこのようなことには……」

 アーサー卿はソファーから立ち上がると、棚を開けてファイルを取り出す。


「エリー様! これを見た事はございますか?」

 アーサー卿はエリーの横に寄ってファイルを手渡した。エリーはアーサー卿と目を合わせてから、少し間を置いて両手を出してファイルを受け取る。そしてエリーはファイルを開こうとして。


「……!? 魔法封印が掛けられていますね。封印を破ってもよろしいですか?」


 アーサー卿は頷き答える。

「はい、どうぞ。エリー様なら簡単でしょう。私が開ける必要もないですよね」


 エリーは直ぐに神眼を発動して、ファイルの封印を解除する。エリーはファイルを開き目を走らせて。


「……これは?」


「はい、アクセリアル関連の情報です……。本来、ローゼ様に……、ですが。セレーナ様にと思いまして」


「……このこと、他には?」

 エリーがファイルをめくりながらアーサー卿に尋ねた。


「いえ、まとめているものは、これだけです。断片的に知り得る者はおりますが……」


「つまり、私とアーサー様だけと」

 エリーは少し動揺したように言った。アーサー卿はゆっくりとエリーの反対側のソファーに座り答える。


「はい、そうなります。この事、早くローゼ様にもお伝えしたいのですが。残念ながら」


 エリーはファイルをパラパラとめくり神眼で内容を確認記憶して行く。アーサー卿はエリーの様子を眺めて話し掛けることない。しばらくしてエリーはファイルの中身を全て確認を終えて、テーブルにファイルを置き言う。


「これは全て事実でしょうか? 私には信じられませんが。まあ、私のような者も存在するのですから、あり得ない話でもないと思いますが。アクセリアルはこの世界の守護者だと……、これは神話のような書き方ですが、内容は理解出来ます」


「ええ、普通の者がこれを見たところで、理解は出来ませんよ。魔道回路が組込まれていますからね。一種の暗号文書のような者です。エリー様なら難なく解読出来るでしょうが」


 アーサー卿はそう言ってテーブル上のファイルを手に取り、棚に仕舞い込む。

 エリーは考え込んだ顔をしてから言う。

「……これは他言無用と」


「はい、ローゼ様以外には、そのようにお願い致します」


 アーサー卿は再びソファーに座ってエリーを眺めて言う。

「あゝ、紅茶をもう一杯! いかがです」


「ええ、美味しい紅茶ですが、もう結構です。また次回にお願いします」

 エリーは微笑みアーサー卿の顔を見て答えた。


「アーサー様、報告しておきたい事があるのですが、よろしいですか?」

 そう言ってエリーがアーサー卿を見つめて間を置く。


「……もしかして、愛の告白ですか? それは無理ですよ。私はローゼ様と契約していますので」冗談ぽくアーサー卿が茶化すように言うと、エリーは小声で言う。


「カミュ様にお出まし願うことになりましたので、どうかご理解をお願い致します」

 アーサー卿は一瞬ハットしてエリーを見てから、ソファーに仰け反る。

「……! ……!?」


「せ、セレーナさ、ま……それは……、あなたさまのご判断でしょうか? あのような暴君を解き放つおつもりですか!」

 アーサー卿が強張った顔でソファーから立ち上がりエリーに言った。エリーはアーサー卿を見上げて微笑む。


「大丈夫です。心配ご無用です。防御策はキチンと打っております」


「……そんなに自信がおありなら……、確かにローゼ様もいない今、戦力的には助けになるでしょうが……」

 アーサー卿は不安気に言った。


「大丈夫です。アーサー様は、受け持ちの計画を進めてください」


「はい、そうですね。ですが……」


「アーサー様! 現状は選り好みしている場合ではないのです。かつてはアーサー様と私だって敵になったことだてあるじゃないですか。ですから理解してください」

 エリーはそう言うとソファーから立ち上がり、アーサー卿の右手を優しく包む。


「それでは失礼致します。バウスン様との会食が有りますので」


「あゝ、そう言ってましたね。スタリオンホテルですね。今日はご実家へは?」

 アーサー卿が少し寂しそうに尋ねた。


「今回はベランドル外交とローラの名前を売るために来ています。それに各国の諜報がウヨウヨいる状況では無理ですね」

 エリーはそう言って頭を深く下げる。


「では、お気をつけて」

 アーサー卿は直ぐに電話の受話器を取り執事長を部屋に呼んだ。直ぐに執事長とユーリが応接室にやって来た。

 


 

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!

 これからも、どうぞよろしくお願いします。

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