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第234話 ユーリの朝食

エリーはユーリに朝食を作ってもらう

 2国間和平交渉会議12日、早朝。

 ここはグラン連邦国大港湾都市、デーン港ブラウン重工施設、居住エリア内。


 エリーはユーリに4:00ほどに起こされ、宿泊施設内の食堂へ移動して報告を受けていた。エリーはまだ眠そうな顔をしてユーリの顔をとろりとした瞳で見ている。


「……起きていますか? とりあえずの報告は以上ですが、詳細はまた分析センターから上がって来ます」

 ユーリは椅子にもたれ掛かり虚なエリーに言った。

「……、わかりました。海岸線沿いのみで、内陸には侵入しなかったのですね」


「はい、全域追跡は成功して機体は見失ってはいませんので、ご安心ください」


「しかし、ここのところ頻繁に侵入が繰り返されていますね。やはり重工業地帯ヤルト消失以来、警戒が強っまたのですね」

 エリーはねぼけまなこでユーリを見つめて言った。


「それでバルガをスクランブルさせたのですか?」

 エリーは椅子から立ち上がるとコップを手に取り水差しから水を注ぐ。


「はい、指示は徹底しておりますのでご安心ください。バルガは指示高度は厳守して速度も守っております」

 ユーリはそう言ってエリーをしばらく眺めてから言う。

「最近、疲労が蓄積されているようですね。私が癒して差し上げましょうか?」


「……うん、大丈夫。魔力を循環させて体の疲労はとっているけど……どうもね」

 エリーはコップの水を半分ほど飲んでから言った。

「そうですよね。私などが使える治癒系スキルなど、エリーさまにとっては初歩的魔法ですよね」ユーリが申し訳なさそうに言った。


「ユーリさん、そんなことないよ。心配してくれてありがとう」

 エリーは寝ぼけ顔で頷きながら言って、ユーリの肩に手を添えた。


「ユーリさん、デーン防空航空隊に連絡してくれますか。バルガの練習機をこちらに回してくれるようにね」


「……はい、しかし、エリー様、バルガは搭乗経験が無いのでは?」


「うん、飛行シュミレーターだけだよ。実機は初めてだよ。だから飛行教官付きでお願いするんだよ」


「……え、もしかして、べマン入りをバルガで行うおつもりですか? ローラさまの歓迎セレモニーもある予定なのですが」


「ハリーさんの指示は、ローラの存在をアピールしろてことだからね。良いじゃない」

 エリーは嬉しいそうに言って、食堂のカウンター内に入った。そして冷蔵庫や保存棚を開けて中身を物色する。


「……うん、すぐ食べれそうなものが無いね」

 ユーリが少し慌ててカウンターに来て言う。

「食事はもう少し待ってください。料理人があと1時間ほどで参りますから」


「……え、別に有り合わせで良いよ。ユーリさん作ってくれるかな?」


「……あ、私ですか? そうですね。たまごがあれば……」

 ユーリはカウンターから調理スペース内に入り冷蔵庫と収納棚の中身を見て。


「たまご有りますね。肉類が少々。野菜はキャベツ、ニンジン、キノコ類が有ります。では」

 ユーリはフライパンとフライ返しを準備して、まな板に具材を乗せ見事な包丁さばきで切り揃えていく。ユーリは冷蔵庫の肉類から豚肉をチョイスして最後に切ると、コンロを点火、フライパン加熱し始めた。隣で見ていたエリーは何も言わず、ただ、ユーリの動作を目で追って楽しんでいる。そして、一通り準備が終わって。


「ユーリさん、やっぱりなんでも出来るんだね。手際が良いよ。私は作ることより食べる方が好きだよ。ほんと好きなものを美味しく、いつまでも食べれたら幸せて感じかな」


 ユーリは温まったフライパンにバラ肉を放り込みながら言う。

「いくら料理が出来ようと、どんな美味しい料理だろうと、ひとりの食事はさみしく味気ないものです。不味いものでも快い仲間や家族と食べればすごく美味しく感じます。それが携帯食でもです。今、エリー様が私の料理を一緒に食べてくださると思うとそれだけで幸せです」


 ユーリはバラ肉をフライ返しで炒めながら言う。そして塩をサッとまぶす。


「意外だね……ユーリさんからそんなこと言われるなんてね。もっとクールな感じだと思ったんだけど。じゃあユーリさんも早く良い人見つけて、結婚しないとだね」


「……! 私は、エリー様に一生お仕えするつもりです」


「え、違うよ。仕えるのは良いけど結婚とは別だよ。こんなに美人で優秀な人が結婚もしないなんて。それに、ユーリさんの子供さんだって見てみたいしね。今はいなくても、まあね、望みが高いと難しいかもね。イケメンでユーリさんと同等以上なんてなかなかだよね」

 エリーが笑みを浮かべる。ユーリはエリーを気にせず、フライパンに刻んだ野菜を投入して少々の調味料を手際よくまぶし混ぜ込む。


「これて、ベルニスの?」

 エリーはフライパンを混ぜているユーリに尋ねた。


「はい、そうです」


「手際が良いから、結構こなしてる感じだね」


「……そうですね、諜報として他国に潜ってる時も結構頻繁に食べてましたね、朝はこれでした」


 ユーリは炒め終わると皿に具材を移し、調理ボールにたまごを3個割って入れるとかき混ぜる。そしてミキシングが完了すると砂糖を適量放り込みさらに混ぜた。ユーリは保管棚にあった食パンを適度な厚みに切り分けて調理ボールのたまごに浸す。

 そしてフライパンをさっと洗ってコンロに置く。植物油を敷いて加熱すると、右手をかざして温度を確認する。そして先ほどたまごに浸したパンをフライパンに並べて焼き始めた。しばらく片面を焼いてひっくり返す。


 エリーは美味しそうな匂いに、顔を緩めて言う。

「私、食べたことないです。美味しいそうですね」


「もう少しお待ちを」

 ユーリはそう言って、焼き上げた食パンを皿に置いてフライパンをサッと拭いて、同じようにたまごに浸したパンを焼き始めた。


 エリーは食堂の時計を見て。

「5:00ですね。みんなにも食べてもらいたいけど、まだ早いから、私達だけで食べますか」


「……余分はないですよ。エリー様と私の分だけですから」


 そう言って、ユーリは焼き上げたパンに具材をトングで載せてパンで挟んだ。それを包丁で2分割して皿に乗せる。

「ホットミルクにしておきますね」

 ユーリはそう言って鍋にミルクを注ぎ直ぐに加熱した。そしてカップに温まったミルクを注ぎ、トレーに載せた。


「エリー様、準備出来ました」

 ユーリは微笑みエリーを見た。そしてトレーをテーブルに運び、皿とカップを置く。


「ありがとう、ユーリさん。美味しいそうだよ」

 エリーはテーブルの椅子に座ると、ユーリも椅子に座る。


「エリー様、お召し上がりください」

 ユーリはカップをエリーに差し出して微笑んだ。

「はい、遠慮なくいただきます」

 エリーはパンサンドを手に取り、眺めてからかっぷりと一口。


「お、美味しいよ! ユーリさん、最高だよ!」

 エリーが思わず声を上げると、ユーリは笑って言う。

「このようなもので喜んで頂けるとは、私も嬉しいです」

 エリーはユーリを眺めて言う。

「ほんと、ゴメンね。巻き込んじゃって」


「え……、なんのことです?」

 ユーリが戸惑った顔をしてエリーを見た。


「……いえ、今更だよね。なんでも無いよ。ユーリさんほんと良い人だなぁと思って」


「……ありがとうございます。食事が終わったら、防空航空隊へ連絡致しますので」


「うん、ユーリさんお願いしますね」

 そして、エリーは美味しそうにパンサンドをモグモグと頬張った。


 ◆◇◆


 ここはべランドル帝国帝都ドール市、ドール城、皇帝護衛隊隊長室。


 セリカが執務机の椅子に座り、渋い顔をして、前のソファーに座るレベッカからの話を聞いている。


「エリー様には連絡するが、それで良いかな? セリカさん」


「はい、レベッカさん、それでお願いします。しかし、相変わらずまとまりの無い国ですね。ほとんどの国が大陸間相互条約に調印しようとしているのに」


「まあ、あそこはそもそも内乱や王族内で揉め事が絶えなかったから、しょうがないと思うけど」


「では、サディさんと一緒にお願いしますね。エリー様にお願いしたいのですが、今は艦隊再編で忙しいので」

 セリカは軍服でなく上下トレーナーで対応していた。レベッカが急ぎの要件でセリカを早朝に訪問していたのだった。レベッカは黒のスーツを着込んで、ジャケットの襟には連邦国軍外事局章が輝いている。


「私が直々に参りたいところですが、エラン陛下の護衛が有りますので。レベッカさんお願いします。ハル閣下はしばらくべマンにおられるので安心して行って来てください」


 セリカは椅子から立ち上がり、レベッカのほうに近づき頭を下げた。


「セリカさん、お任せください。あなたのほうが上位者なのですから、気を使わなくて良いですよ。エリー様が出っ張る必要がないよう処理はするつもりです」

 そう言ってレベッカはソファーから立ち上がりセリカに微笑み頭を下げた。

「じゃあ、セリカさん今から、段取りします」


「はい、お気をつけて」

 セリカはそう言ってレベッカの背を見送る。



最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!

 これからも、どうぞよろしくお願いします。

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