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第230話 ボーゲンという男

エリーはアテナ号を訪問した。

 2国間和平交渉会議11日目夕方。

 ここはグラン連邦国大港湾都市、デーン港海軍港湾施設。

 接岸している巡洋艦アテナ号桟橋タラップ。

 ブラウン商会のリムジン車両が到着する。慌ててタイラー副長が駆け出しリムジン車両の前に近づき敬礼する。アテナ号の将兵は全員第2種正装軍服を着用して士官が10名ほど立ってタラップ下でエリー達を待っている。


 トーラスがリムジン助手席から先に降りて、駆け出しリムジン後部席ドアを開ける。そしてエリーがリムジンから降りると、一斉に並ぶアテナ号士官が敬礼した。エリーは紫色の髪を靡かせて直ぐに丁寧に一礼する。


「ベランドル帝国皇帝直属魔導士、ローラです! アテナ号の皆様! 本日はご迷惑をお掛け致します!」そう言って再び一礼した。


 トーラスが先導してエリー達が続いてタラップを上り始める。アテナ号士官達は敬礼したまま緊張した様子で待っていた。


 タラップを上ると甲板上にも50名ほどの将兵が並び敬礼してエリー達を出迎える。エリーは立ち止まり丁寧に一礼する。

「ベランドル帝国皇帝直属魔導士、ローラです。アテナ号の皆様! 本日は急な訪問となりご迷惑をお掛けします!」


 周囲の将兵達は緊張した面持ちで敬礼したままそれを聞いていた。トーラスは艦橋下部のドアハッチを開けると艦橋エレベーターへと案内した。


「ローラさま、どうぞ中へ」

 エリー、ユーリ、エイダ、イレイナそしてトーラスがエレベーター内に入った。

「……やはり狭いですね」

 エレベーター内はほぼ余裕が無い状態、トーラスが操作パネルを操作すると、ドアが閉まり起動音と共に上昇を始めた。10秒ほどで停止してドア開く。

 トーラスが前に出る。

「ブリッジです。今は、寄港中なので当直要員しかいません」


 エリー達がブリッジに入ると3人ほどがすぐに整列して敬礼する。エリーは丁寧一礼して。

「ローラです。ご迷惑をお掛け致します」


「……、こちらは大歓迎です。ローラさまがお越しになるなんて夢のようです」

 ひとりの当直士官が嬉しいそうに言った。後ろにいたトーラスが目を細めてその士官を見つめる。士官は怯えた顔をして再度敬礼すると。

「も、もう、申し訳有りません! 私などがお声掛けなど、し、失礼致しました!」


 エリーが驚いた顔をして後ろのキツイ顔をしているトーラスを見て言う。

「クレアさん、これくらい良いでは有りませんか? ダメなのですか」


 トーラスが困った顔をして一礼する。

「はい、問題ありません」


 エリーが嬉しそうにブリッジ設備機器を見て言う。

「帝国の巡洋艦ブリッジにも入ったことがありますが、最新鋭艦のブリッジは凄いですね。シンプルで機能的です」

 エリーはそう言って先ほど話し掛けて来た20代後半の男性士官に声を掛ける。


「どうですか? 問題はありませんか」


 男性士官が少し困った顔をして言う。

「はい、今まで乗艦した中で最高です。機器の操作性等、新しいインターフェイスはとんでもなく優れていると思います」


 エリーは嬉しそうに男性士官を見て言う。

「そうですか。それは良いですね。頑張って下さい」

 男性士官は嬉しそうに笑顔を受けべて声を上げて敬礼する。

「はっ! ローラさま! 精進致します!」


 トーラスがエリーを見て言う。

「では、戦闘指揮所へ」


「はい、そうですね」

 エリーはそう言って、ブリッジの外側を歩いて窓の港湾風景を見る。

「視界は良好ですね。キャプテンシートの眺めは良さそうです」

 エリーが嬉しそうに言うと、トーラスが微笑み言う。


「どうぞお座りください」

 トーラスがエリーを座るように即すと、エリーは嬉しそうにキャプテンシートに座った。


「……良いですね。重装機兵のパイロットシートとは違います。クレアさん、ここでどんな顔をされて座っていらしゃるのですか?」


「……はい、特に何も普通に座っていますが」


「そうですか。船も良いですね。では、参りましょう」

 エリーはそう言って、キャプテンシートから離れるとエレベーターへと向かう。ブリッジ要員は敬礼してエリー達を見送った。


 エレベーターは直ぐに艦橋下部で停止ドアが開く。エレベーターの前では通路脇に士官が一人敬礼して待っていた。トーラスがエリーを見て言う。


「砲雷長です。信頼出来る優秀な士官です」


「ローラです。ご迷惑をお掛け致します」

 エリーは丁寧に一礼した。砲雷長は顔を強張らせて敬礼を続ける。トーラスが砲雷長に視線を向けて頷くと、砲雷長は前に出て通路を少し歩いてドアハッチを開ける。

「ローラさま、どうぞ中へ」

 砲雷長は頭を深く下げ戦闘指揮所へ入るよう促した。エリーは一礼すると戦闘指揮所へと入った。内部には10名ほどの将兵が整列して一斉に敬礼する。


「ローラです。ご迷惑をお掛け致します」

 エリーは丁寧一礼した。そして、続いてトーラス達が続いて入室する。


「ここが戦闘指揮所ですか。ホント旧艦艇とは別物ですね!」エリーが嬉しそうに声を上げる。


「はい、ローラさま、喜んでもらえて」

 トーラスが嬉しそうに言った。砲雷長はトーラスを見て遠慮気味に小声で言う。


「トーラス艦長……雰囲気が柔らかいですね。良いことがあったのですか」

 トーラスは砲雷長を見て目を細める。


「なんだ。ローラさまの前で恥をかかせるつもりか?」


「……いえ、なんでも有りません」

 砲雷長は口をつぐんだ。


 エリーは戦闘指揮所内を自由に歩きまわり、計器類を嬉しそうに眺めている。


「これが新しい技術の具現化です。もっと早く準備出来れば良かったのですけどね」

 エリーがユーリに話し掛けた。


「そうですね。ベルニス、ベランドル海軍とは比べようもないです」

 ユーリは微笑み答えた。


 砲雷長がトーラスのそばにより囁く。

「ボーゲン少将がこちらにいらっしゃるそうです」


「……ボーゲン少将! 誰が漏らした。非公式な訪問だ。余計なことを」

 トーラスは機嫌の悪い顔をして砲雷長を見る。そして、エリーを見て一礼すると言う。

「……申し訳有りません。艦隊司令ボーゲン少将がこちらに来るようです」


 エリーはそれを聞いて言う。

「……あゝ、ボーゲン少将、うん、了解です」


(……海軍での再編人事で艦隊司令に任命されたボーゲン少将。お父様が支援していた人材のひとり。先見性が有り大胆な行動が出来る人物だと、でも苦手なタイプなんだよね)

 エリーがふっと息を吐き言う。


「とりあえず、食事に行きませんか?」


「そうですね」

 トーラスは答えると砲雷長を見る。そして砲雷長はヘッドセットを取り何かを喋ってから、トーラスを見て言う。

「準備は出来ています」


「ローラさま! では、食堂へ」

 トーラスが戦闘指揮所ドアハッチを直ぐに開けて出るように即す。

 エリーは一礼して。

「お邪魔致しました。それでは失礼致します」


 それを聞いて戦闘指揮所要員は、その場で全員敬礼した。エリー達は通路に出ると艦尾方向へ向かう。そこへ後方から声がする。


「ローラさま! 遅くなり申し訳有りません!」

 一同振り返ると、そこには海軍軍服を着た良い雰囲気の40代半ばくらいの割と長身の男性が立っている。肩章は金色の星2個、少将だ。

 その男性は直ぐに駆け寄り、エリーの前を通り過ぎてユーリに深く頭下げて言葉を発する。


「ローラさま、お初にお目に掛かります。艦隊司令、少将、ボーゲン•モートリと申します。今後共よろしくお願い申し上げます」


 ユーリの手を取り再度、頭を下げた。ユーリは驚いた顔をしてボーゲンに言う。


「私は、従者のユーリです。ローラさまはこちらです」

 ユーリがエリーを見て言った。ボーゲン少将は少し意地悪い顔をしてワザとらしく言う。


「あゝ、申し訳有りません。絶世の美女とお伺いしていましたので……大変失礼致しました」


 エリーは微笑み答える。

「……ええ、慣れていますので……お気になさらず!」

(……ボーゲン少将、冗談にも程があるよ。ワザとらしく……、私を知っているくせに、何のパフォーマンス?)


 トーラスが引き攣った顔でボーゲン少将を見つめている。

 ボーゲン少将がエリーのそばに寄って深く頭を下げた。

「非礼、誠に申し訳ありませんでした。ローラさま、ご容赦下さいますようお願い致します」


 ボーゲン少将は、頭を下げたまま呟く。

「エリーさま、お久しぶり振りです。相変わらずお可愛いお姿で麗しいですね。申し訳有りません。可愛くて、からかいたくなってしましました」


「……!」

 エリーは嫌な顔をしてボーゲン少将から離れる。

 


最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!


これからも、どうぞよろしくお願いします。

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