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第223話 アクセリアルの潜航体

 2国間和平交渉会議10日目午後。

 ここはグラン連邦国デーン港より160キロほど沖合。洋上において、最新鋭ミサイル巡洋艦

アテナ号は謎の潜航体に追尾されていた。


 トーラスは潜航タイプ重装機兵コックピット内で静かに出撃タイミングを伺っていた。

『駆逐艦爆雷投下5分前! トーラス艦長準備よろしいでしょうか』

 砲雷長から無線が入った。

「了解! では出撃する」

 トーラスは応答すると、直ぐに上部制御室に無線を繋ぐ。

「出撃する! 注水頼む」


『トーラスさん、了解しました。注水後、30秒でゲート開放、射出します!』


「了解した」

 直ぐに狭い格納庫内に注水口から海水が入ってきて満たされた。


《警告! 格納庫ゲート開放! 固定機切り離し確認! 推進機起動回転確認! 射出機作動!》

 コックピット内にアナウンスが流れて警告音が鳴り響き、正面パネルにアラート表示が点滅する。そして機体が一気に気泡と共にアテナ艦底部より30mほど沈降した。

《推進機1番2番起動出力50パーセント! 作動確認!》


 トーラスはアテナ艦底部通過を確認すると、左右のレバーを離し、手前にある左右のスペースに手を入れた。スピーカーから女性のアナウンスが流れる。


《機体パイロット認証システム作動! 認証しました! クレア•トーラス確認! シンクロパイロットシステムに移行確認!》


 トーラスはヘルメットバイザーにデーター表示を確認すると、アテナ号の左舷側で深度50mで速度を合わせる。


「トーラスだ、砲雷長! カウント10で頼む」


『了解! 爆雷投下前カウント10確認しました! 到達開始まで2分ほどです』

 砲雷長の応答が直ぐに入った。


「了解した」

 トーラスは応答すると直上を通過する味方駆逐艦を確認、後方の潜航体の座標を確認して、アテナ号左舷から離れ転回すると、駆逐艦の後方に追随した。


『爆雷投下開始1分前!』

 砲雷長の無線が入ると、トーラスは機体を瞬時に減速させてた。

「防御シールド、レベル1自動展開!」

 トーラスが声を上げる。


《警告! 防御シールド自動展開スタンバイ!》システム音声がヘルメットヘッド内に流れた。トーラスはバイザーに表示された誘導カーソルマーカーに視線を合わせる。

《接近警報! 未確認体確認! 識別信号無し! マーカーA、B、C設定認識!》


 トーラスは直ぐに検知状況を確認する。

(……やはり下の奴が上がって来たか! どうする?)

 トーラスは直ぐに攻撃体制をとる。

《警告! 兵装システムロック解除! ランチャー選択!》

 システム音声がヘルメット内に流れた。


(……2機か? 味方駆逐艦に接近するつもりのようだ……? 牽制するか)


 アテナ号砲雷長から無線が入った。

『カウント開始します! 30秒前! ……、20秒前! ……、』

 トーラスはその間、B、C潜航体の追尾を続ける。


『10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、始め!』

 直ぐに味方駆逐艦2隻からA潜航体に爆雷投下が始まった。爆雷は任意深度起爆設定で投下されている。程なくして爆雷が順次爆発し水柱が何本も海面に上がる。


 トーラスは一旦100mまで潜航して、下方から上がって来た2機のBC潜航体に追随した。


(こちらを認識しているのか?)

 潜航体2機は分かれて味方駆逐艦の後方を追跡を開始した。爆雷目標だった潜航体は一旦急速潜航して200mほどの深度まで潜ってアテナ号に距離を詰めようとしていた。


(攻撃意志はあるのか?)

 トーラスは左舷側のC潜航体を選択して追跡する。

「砲雷長! 初期A目標潜航体が距離を詰めている防御シールド展開して攻撃に備えよ! 特殊爆雷使用許可する。 沈めても構わん!」

 トーラスはアテナ号砲雷長に指示を出した。


『了解です! 補足ロックしています! いつでもやれます!』

 砲雷長は緊張感のある声で応答が直ぐに入った。


 トーラスはC潜航体を追尾しながら挙動を確認するが、攻撃する気配は見受けられない。無線を切り替えて哨戒機と繋ぐ。


「こちらトーラス! カモメ1号! 潜航体3機補足しているか!」


『こちらカモメ1号! ソナーをばら撒いていますが2個体のみ補足! データーリンクに位置補完中です!』


 トーラスはすかさず哨戒機に指示を出す。

「周囲をもっと探索しろ! 母艦がいるはずだ! カモメ1号、3号! 東方向を頼む!」


『カモメ1号! 了解!』

『カモメ3号! 了解!』

 哨戒機2機の応答が直ぐに入った。データー表示で2機の哨戒機が、トーラスは空域から離れて行くのを確認する。


(レンガリアンのステルス性能はどのくらい通用するか……試してみるか?)

 トーラスはC潜航体へ速度を上げて接近を図った。そして深度をC潜航体より50mほど潜り下方に並んでみる。


(……気づいていない!? ……どうするこのまま……)


 トーラスはC潜航体と間隔を維持して出方を伺う。海上の味方駆逐艦は速度を上げB、C潜航体を振り切ろうとする。だが振り切る事は出来ない。

(過去の回収体分析では50ノットは出せる、運動性能も高い……、まあ旧型の艦では振り切るなど無理だろうな)


 トーラスは、そのままC潜航体の下方で観察を続ける。

(エリーお嬢様は言っておられた。アクセリアル軍は統制は完璧にとられている。そして自分達の方が遥かに上の存在で、我々は下の存在であると認識していると……、アクセリアルは情報分析力も対応力も高い。だから注意してくれと)


 トーラスは周囲のデーター情報を確認する。

(攻撃意図は無いか? 今回は穏便に済ませるべきだな。とにかくアテナ号の情報は与える訳にはいかない。だが大人しく撤退もないと思うが……)


 トーラスはアテナ号砲雷長へ無線を繋ぐ。

「砲雷長! 味方駆逐艦を率いて戦域より離脱せよ! タイラー副長に伝えてくれ! 相手の動きを見る。極力戦闘は避けたい」


 砲雷長は直ぐに応答する。

『はっ! 了解しました! タイラー副長に伝達致します』


 トーラスは周囲展開データー表示を見て、アテナ号と味方駆逐艦が並び同一進路をとったことを確認した。

(さて、どうする。やはり、戦闘は避けたい……、エリーお嬢様の本意でない事は出来ない)


 潜航体3機は一定の距離を取りアテナ号と駆逐艦の追尾を続けている。トーラスは深度を維持してC潜航体の下方をそのまま移動する。


最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!

 これからも、どうぞよろしくお願いします。

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