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第222話 海軍士官クレア•トーラス

エリーはトーラスに今後の計画について話す。

 時間は戻って3ヶ月ほど前、ここはグラン連邦国べマン市、連邦国軍海軍本部。


 第二艦隊から呼び戻されたクレア•トーラス少佐は、本部内会議室で、ひとり椅子に座りある人物を待っていた。しばらくしてドアがノックされる。

「はい、お入り下さい!」

 トーラスが答えるとドアが開き、参謀部モール付き軍服を着用した紫色髪の少女が入室する。

 少女がトーラスに微笑み敬礼すると、トーラスも直ぐに立ち上がり背筋を伸ばし敬礼した。


「エリーお嬢様、今日は、どのようなご用件でしょうか?」

 トーラスは微笑みエリーを見つめる。


「……うん、クレアさんに頼みたいことがあるんだよね。まあ座ってよ」

 エリーはトーラスを見て優しく言った。


「はい、どんな頼み事ですか?」

 トーラスはエリーを嬉しいそうに見て言った。そしてエリーがテーブルの端の椅子に座ると、トーラスも隣りに座る。


「クレアさん、重装機兵パイロットの適性S判定だったよね。だからパイロットをお願いしたいんだよね」


「……それは、陸軍へ移れと言うことでしょうか? エリーお嬢様でも……それはあまりにひどいです」

 トーラスが気落ちした顔をしてエリーを見つめる。エリーは微笑みトーラスの顔を見て言う。

「違うよ。あと1ヶ月くらいで新造巡洋艦が進水するから、それに移って訓練してもらいたいんだよね。人事は上に手を回しておくから問題はないよ。海軍で今、新鋭艦隊編成計画があるんですよね。知っていますか? クレアさん」


「いいえ、私のような艦隊士官ではそのような機密は知り得ません」


「では、10年ほど前に回収された漂流物について知っていますか?」


「……アクセリアルの漂流物でしょうか? 詳細は機密扱いですので私には」


「そうですか。では説明します。当然、申し訳有りませんが、クレアさんには選択権は有りませんので、よろしくお願いします」

 エリーはトーラスを見て優しく言った。エリーを見てトーラスは少し戸惑った顔をする。


「……はい、私に期待されているのですね……エリーお嬢様のお気持ちは嬉しく思いますが」


「クレアさん、海軍内では、鉄の女とか魔弾の射手とか言われているようですね。頑張っているのはわかっています。ですから負担を軽減してあげたいと思っているのです」

 エリーはトーラスの両手を優しく包んで微笑み言った。トーラスは嬉しいそうに答える。


「あ、ありがとうございます。エリーお嬢様のご配慮に感謝致します」


「詳細はこの封筒の中の文章を確認してね」

 エリーはそう言って手持ちカバンから封筒を取り出してトーラスに渡した。


「……はい、了解しました。私は直ぐに進水する新造艦に異動するのですね。あとは慣熟訓練を行えと。しかし、帝国との戦争は一進一退の現状でこのようなことをして良いのですか?」

 トーラスが心配そうにエリーを見て言った。


「帝国との戦争は近いうちに終わります。半年以内には。このお話はそれ以降のことです。もちろん超極秘事項です。とりあえずは直ぐにシュミレーターをみっちり行なって下さい」


 エリーは持ち込んだ水のボトルに口をつけて、コクコクと喉を鳴らして半分ほど飲んでから言う。


「アクセリアルが動き出します……クレアさん、のんびりしてもらいたいのですが……適材適所ということでお願いします」

 トーラスは少し動揺した顔をして言う。


「……あ、の、よろしいでしょうか。私からお願いしたいことが」


「はい、クレアさんなんでしょうか?」


「私は、結婚を考えているのですが。許可を頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」

 トーラスは少し怯えたようにエリーに言った。エリーは右手を伸ばしてトーラスの髪を撫でながら優しく言う。


「結婚ですか? なぜ? 私に許可を求めるのですか? クレアさんが決めれば良いことです。私が関与する事では無いですよ」


 トーラスは顔を少し逸らして言う。

「エリーお嬢様に祝福して頂きたいと思って……」


「……? クレアさんが結婚したいと思ったのならそれで良いと思います。お相手はどなたですか? 私と面識は有りますか」


「いえ、士官学校の同期です。今は、別の艦で副長をしております」


 エリーはトーラスの髪を手でとかしながら見つめて言う。

「おめでとうございます。私も嬉しいです。お父様には報告はまだですか?」


「……いえ、相手がまだ向こうの両親に紹介してくれないのです」


 エリーはハット気づいたように言う。


「……あゝ、お相手は旧貴族系ですか? 海軍は陸軍と違ってまだまだ、旧貴族が幅を利かせているのですよね。クレアさんは平民出身のエースだものね。困った事ですね」


「はい、タイミングを誤ると破談すると、相手から言われています。相手の父親は誇り高く、子爵家の家柄で海軍少将を務められ現在予備役です」


「……まあ、力になれれば良いけどね。お相手のお名前は?」


「はい、タイラー•マーティン海軍少佐です。お父様は海軍第三艦隊司令長を務められたお方です」


「……うん、わかった。少し確認してみるよ。でも期待はあまりしないでね」

 エリーは頷き答えると、トーラスの髪から手を離した。


「クレアさん、それと、もういいんじゃないかな。強面キャラ演じなくてもね。疲れるでしょう。最初はねしょうがないと思うけど、もう押し込まれたりする事はないでしょう」


「はい、そうしたいのですが。急には無理かと」

 

 トーラスは苦笑して答えた。そしてエリーはトーラスを見て微笑み言う。

「その封書返してもらえますか。外部に漏れると大変ですから」


 エリーが手を出すと、トーラスは慌てたように資料便箋を封筒に詰めてエリーに手渡す。


「結婚相手にも、この件はしゃべったらダメですよ。まあ、理解されてると思いますが」


 そう言って、エリーは椅子から立ち上がりトーラスに敬礼すると、会議室から出て行った。トーラスはエリーを見送り安堵の表情を浮かべた。


(エリーお嬢様、ますますお綺麗になられて……今や帝国に最も恐れられるお方。私はご期待に応えられるよう頑張りますので、どうか見放さないでください……)


 トーラスは心の中でつぶやいて顔を緩める。

 

 

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!


これからも、どうぞよろしくお願いします。

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