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第219話 ブラデール連合王国

エリーはブルース国王の嘆願に困ってしまう。

 2国間和平交渉会議10日目午後。


 ここはブラデール連合王国首都カリアン市、中央区域王宮殿内部。

 エリー達、ベランドル帝国外交使節団は午前中に到着、ライド外務卿と外交団はブラデール閣僚会談を行なっていた。


 エリー達は、外交団とは別行動で王宮内部で、国王ブルースと密かに謁見していた。20畳ほどの狭い部屋にブルース国王、行政官、近衛士官、そして、エリー、トッド、ユーリの6人がテーブルを挟んで座っている。ブルース国王がエリーを見て微笑む。


「ローラさま、いかがですか?」


 エリーは困った顔をしてブルース国王を見て。

「……誠に失礼なのですが、その申し出はお受け出来ません」


 ブルース国王は直ぐに反応する。

「我々は、すでに諸国の情勢は把握しております。グラン連邦国、ベランドル帝国2カ国を中心に各国首脳がローラさまと密約を交わされていることに……、それはつまり、我がブラデールは価値が無い、もしくは信用に値しないと言うことでしょうか?」


 ブルース国王は笑顔を作っているが目は笑っていない。エリーはさらに困った顔をして言う。

「……、大陸内国家相互間協定に加入して頂ければ、それでことは足りると思います。それ以上は必要無いと思いますが……」


 ブルース国王は少し笑いを漏らしてエリー見据える。

「相互間協定……、それは表面上の約束ごとです。私が申し上げているのは、もっと深部のこれから将来についてです。我々は置いていかれる訳にはいかないのです。ですから、他国と同様にローラさまと結びたいと申し上げているのです!」


「……」

 エリーはブルース国王から視線を外し、隣りのトッドを見る。

「そのような密約は存在しません。不安がお有りのようですが、ご心配はご無用です」

 エリーはゆっくり丁寧に言葉を発した。


 ブルース国王から笑顔が消えて、エリーを少し怒ったような顔で見つめる。


「我が国の諜報力を舐めてもらっては困ります。確かな情報が上がっているのですよ。グラン、ベランドル、ベルニス、エルヴェス、アンドレア、ジョルノとすでに7カ国と密約が成立していると……、各国の皇帝、国王、宰相、それらに準ずる者……、主だった者たちがローラさまに臣下の誓いを交わしているとのお話も聞き及んでおります。ローラさまが稀代の武人であり、政治家であることも承知しております。今回の大陸の再編の筋書きは、ローラさまが仕組まれたと認識しております。……どうか、私どももそれにお加え下さいませ!」


 ブルース国王は嘆願する様に言うと、椅子から立ち上がりエリーの背後に移動する。トッドが直ぐに立ち上がり制止しようとする。ブルース国王は跪き右手を床につくと、ゆっくり頭を深く下げる。

「……どうか、我々をお仲間にお加え下さい」


 エリーは直ぐに床に屈み、ブルース国王と視線を合わせる。エリーは戸惑った顔で見つめて。

「ブルース陛下、どうぞ頭をお上げ下さい」


 ブルース国王は少し笑みを浮かべて、エリーの瞳を見つめる。

「では、了承してくださるのですね」


「……いえ、勘違いされています。何処かで間違った情報が上がってきています」

 エリーが否定して答えると、ブルース国王は目を顰めて言う。


「明日、マティオ連邦国へ行かれる予定ですよね。しかも極秘裏に」


 エリーはそれを聞いて、目を細めて言う。

「……えっ! ……?」


「本来お話すべきことではないのですが、ローラさまが、あまりにもおとぼけになられるので」

 ブルース国王は鋭い目つきで、エリーを見据える。


「ブルース国王陛下、強引ですね。こんなことしてたら嫌われますよ」

 エリーは呆れたように言うと、ブルース国王は直ぐに言う。


「ええ、そうかもしれません。ですが、そう思われようと、強引でも了承を得なければならないのです。人民のために」


 エリーは立ち上がるとユーリの方を見て微笑み声を掛ける。

「ユーリさん、ブルース国王陛下はお疲れのようです。一旦休憩致しましょう」


「……はい、承知致しました!」


 エリーは再び屈みブルース国王に声をかける。

「ブルース国王陛下、一旦休憩致しましょう。続きはそのあとに」


 ブルース国王はゆっくり立ち上がりエリーに言った。

「……はい、ローラさま。少し落ち着きます」


 ブルース国王は視線を行政官に視線を向け、頷く。

「それでは、一旦失礼致します」

 ブルース国王はエリーに一礼する。エリーもそれを見て一礼した。そして、ブルース国王は行政官、近衛士官を引き連れて退室して行った。

 エリーはドアが閉まるのを確認して、トッドを見る。

「……ハリーさん、やり過ぎましたね。どうしましょうか? 困りましたね」


 トッドは少し微笑み言う。

「まあ、適当に誤魔化せそうにはないよですね。ですが、了承は出来ません」


「……うーーっ、どうしようか」

 エリーは目を閉じて唸りながら上を向く。


 隣りのユーリは無言のままエリーを見つめている。エリーは目を開けてトッドを見て。

「ここは、保留として帰国しましょう。それしかないですね」


「それは無理ではないですか。もし反故にすれば厄介なことになるかもしれません」

 ユーリがエリーを真剣な顔をして言った。


「だよね……。密約て……そんなたいそうなこと」

 エリーはふーっと息を吐きユーリを見て言う。

「紅茶でも飲んで気分転換しますか」

 ユーリは頷き、部屋の隅からティーセットワゴンをテーブルに寄せる。そして手際よくティカップに紅茶を注ぎ、エリーの前に置いた。


「ユーリさんありがとう」

 エリーは直ぐにティーカップを口に運んだ。


 ◆◇◆


 ブルース国王はエリーと会談中断後、国王執務室に戻り思案していた。


 執務室には先ほどの3人がいる。ブルース国王、行政官、近衛士官はソファーに座り暗い顔をしていた。

「……なんとかならないものか」


 ブルース国王が困ったような顔をして言った。行政官が遠慮気味にブルース国王を見て言う。


「エイダさまにお願いするしか……ないのでしょうか」


 ブルース国王が行政官を怪訝そうに見る。

「……エイダに?」


「はい、ローラさまは美少女、美女に目がないそうです。ローラさまの周辺には美女しかおりません」


「……そ、それは、エイダを差し出せと、申しておるのか」


 行政官はためらった顔をして言う。

「……陛下には申し訳ございませんが、ブラデールのために……」


 ブルース国王は気落ちした顔をする。

「……あゝ、情けないが、それも仕方ない。エイダなら満足して頂けるだろう。きっと……」


 ブルース国王は近衛士官を見て言う。

「すまんが、至急、エイダを連れて来てくれるか」


 近衛士官は直ぐに立ち上がり敬礼すると、執務室から慌てて出て行った。

 

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!

 

これからも、どうぞよろしくお願いします。

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