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第217話 新鋭機バルガ

対アクセリアル戦闘機バルガ

 2国間和平交渉会議10日目午前。


 ここはグラン連邦国南部、上空高度8000m付近。エリー達の搭乗したランカーⅡ2号機は順調にブラデールを目指して飛行していた。


 エリーはランカーⅡコックピット内、通信士の隣りのシートに座っていた。

『こちらグラン連邦国軍、第3航空群管制エリア! エンペラーウィングワンへ! 機体認証確認! 護衛機接近許可願う! 以上!』


 ランカーⅡの無線機にグラン連邦国軍の地上管制無線が入った。機長席のビアンカが無線に答える。


「こちら、エンペラーウィングワン! 識別機体コード確認! 護衛機接近許可する! 協力に感謝する! 以上!」


『こちら第3航空群管制! 了解! 無事の帰還を祈ります! 以上!』

 地上管制がすぐに応答した。ランカーⅡのレーダー員が直ぐに声を上げる。


「識別コード確認機体! 下方から3機高速接近! 3分ほどで接触します!」


「了解した! 指定周波数にセットして無線接続を」ビアンカは通信士に指示を出す、通信士は接近中の機体に無線を繋いだ。


「こちらエンペラーウィングワン! 応答願う!」

 接近中のグラン連邦国軍、護衛機から直ぐに無線が入る。

『こちらグラン連邦国軍、第3航空群、第1飛行戦闘大隊! ヤール大尉です。ブラデールまでエスコート致します! 以上!』


「了解! よろしくお願いします!」

 ビアンカはそう答えて無線を切った。エリーは通信士の隣りの席からレーダー員の後ろに移動して、声を掛ける。

「速度はどのくらいですか?」


「はい、850キロです。ロケットブースターを使用していると思われます」

 レーダー員は答えた。エリーはそれを聞いて嬉しいそうに言う。

「バルガですね。配備がだいぶ進んでいるようですね」


 しばらくしてランカーⅡのコックピット窓から灰色に塗装されグラン連邦国軍マークがペンテングされたスマートな機体が並ぶ。キャノピー内のパイロット2人がこちら向かって敬礼すると、ビアンカも敬礼する。バルガ3機は直ぐに一定の距離を取り隊長機らしき機体が上方に上がり先導、僚機が左右に展開してランカーⅡと飛行速度を合わせた。機体の下方には細長い増量エネルギーパックが装着されている。


「飛んでいる実機を見るのは初めてです!」

 エリーはコックピットの窓の外を見ながら嬉しそうに言った。


「ローラ様、そろそろ、準備をしたほうがよろしいのでは」

 機長席のビアンカが、遠慮気味にエリーに声を掛ける。エリーは少し残念そうな顔をしてビアンカを見て言う。


「……あゝ、もうそんな時間ですか。では、準備します」

 そう言って、エリーは一礼するとコックピットドアを開けてキャビンへと下がって行く。


「ローラ様、お召し替えを」

 キャビンに入ると、ユーリが直ぐに声を掛けてきた。


「……はい」

 エリーはそう言うと、キャビン奥のカーテンを開けて内側へと入った。そして、エリーは皇帝護衛隊の軍服を脱いで、黒のスーツに着替える。ジャケットの下に拳銃ホルダーを取り付け、脇に軍刀を抱えて前席へと移動着席した。


「ローラ様、ご満悦のようで、どうでした。新鋭機は?」

 後席に座るベランドル外務卿であるライド卿がエリーに微笑み尋ねた。

「ええ……、とても操縦するのが楽しみになりました。その時はライド様もご一緒に」

 エリーが嬉しいそうに微笑み、ライド卿に振り返り答える。

 ライド卿は少し驚いた顔をして言う。


「……あゝ、と、私は空はあまり慣れていないので……、今も結構、緊張しているのですよ」


「そうですか。慣れれば楽しいですよ! 急降下とか急旋回とか……」

 エリーはライド卿の顔が、強張っていることに気付いて言葉を止めた。


「……あゝ、ライド様、申し訳ありません。気分を悪くされましたね」

 エリーは座席から立ち上がり、一礼してライド卿に謝罪した。ライド卿は驚いた顔をして直ぐに立ち上がり言う。


「……いえ、ローラ様、悪気は無いのですから、私は気にしておりませんので、どうか」

 そう言って頭を深く下げた。エリーもさらに一礼すると、隣りに座るトッドがエリーに微笑み優しく言う。


「ローラ様、それくらいで、資料の確認はお済みですか? 再度確認をお願い致します」


 エリーは頭を上げると、トッドを見て少し頬を膨らませる。

「……ああ、はい、そうですね」

 エリーはそう言ってトッドの隣りの席に座る。トッドが嬉しいそうにエリーにファイルを渡した。

「トッドさん、良いことありました?」

 エリーはトッドの顔を見て尋ねる、


「はい、ローラ様に同行するのは久しぶりですから、嬉しいのですよ。まじかで会話出来るので」

 トッドは微笑みエリーの顔を見る。エリーは少し戸惑った顔をして、直ぐにファイルのほうへ目をやった。

「……!」

(……トッドさん……サラッと……!? 嬉しいんだ。なんなだろう? なんか私、動揺してる?)


 エリーは戸惑った顔でファイルに目を通す。トッドがエリーの様子を見て尋ねる。

「何か、問題でも?」


「……え、問題……無いよ」

 エリーは困ったように答えた。キャビン内スピーカーからビアンカ機長の声が聞こえる。


『だだ今より、ブラデール領空に入ります。あと1時間ほどでカリアン到着予定です』


「……トッドさんは、私に同行するのですよね」

 エリーはファイルから目を離さず尋ねた。


「はい、その予定です。ユーリはライド様と宰相会談に同行するので、私がローラ様とご一緒します」


「……はい、了解です」

 エリーはファイルをトッドに渡す。


「少し、仮眠をとります。10分前に起こしてください」エリーはトッドを見つめて言うと、ブランケットを足元から引っ張り出して、首元まで被った。


「了解しました。10分前に」

 トッドはそう答えると、手に持っているファイルに視線を移した。そしてエリーは目を閉じる。



最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!


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