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第214話 女神様のお話し

女神カミュさまについての話

 2国間和平交渉会議9日目夕方。


 ここはべランドル帝国帝都ドール市ドール城、皇帝居住エリア、皇帝浴場内。


 浴場は皇帝専用で、浴場スペースは30畳ほどの大きさに洗い場と10畳の浴槽がある。大理石調のデザインで、シンプルな内装となっている。お湯は地下水を汲み上げ、専用ボイラーで湯温管理、魔道循環器でフィルター循環を行い衛生管理は十分に実施されている。


 浴槽にはエリー、ソアラ、エラン、ユーリの4人が固まって浸かりくつろいでいた。

 エリーがエランの隣りのユーリを見て言う。

「……リサさんが帰って来たらしばらくは2人きりは避けてくださいね」


 ユーリが首を傾げた。

「……エリー様、それはどう言った」


 エリーは少し顔を曇らせて答える。

「ええ、ユーリさんが好みだからです。リサさんが理性を失ったら、肉体、精神共に蝕まれ廃人になる恐れがありますから……、カミュさまは以前と変わられていると思いますが、用心するに越した事は有りませんからね。まあ、予防線は貼っておきますが。万が一です」


 それを聞いてソアラが少し嫌な顔をして言う。

「大陸統一前、まだ大陸が小国に分かれて群雄割拠の時代。偉大なる全能の女神として崇められいたカミュさま。しかし、願いの代書として多くの生贄を要求した。自分の好みで有ればハーレムに、好みでなければ前線守護兵、あるいは己の糧に……。カミュさまはさらに生贄では飽き足らず、自分で飛び廻り拐かしをするように。そして、その行為を諌め止めたのが、二代女神ローゼ様とセレーナ様だったのです。私から見ればカミュさまは邪神です」


 エランがソアラを真剣な顔で見て言う。

「そのような、カミュさまを……それ程までに余裕は無いのですね」


 ソアラはそれを聞いて頷き答える。

「ええ、そうです。邪神でも使えるものは使わなければなりません」


 エリーは湯船に足を広げて伸ばし、肩まで浸かって目を閉じる。

「……カミュさまは、良い女神だよ。ちょっと性癖に問題があるだけだよ」


 ソアラはエリーを見て嫌な顔をする。

「エリー様、確かにそれ以外なら尊敬に値するものです! ですが、私は許容出来ません」


 エリーは目を開けソアラを眺めて言う。

「……大丈夫だよ。ソアラちゃんは心配しなくても、興味も示さないと思うよ」


 ソアラが右手を挙げて湯面を叩く。

「……話をすり替えないでください! 私はそういうことを言っているのではありません」


 エリーが眉を顰めて言う。

「ええ、わかっているよ。ゴメンね。そうだよね。使徒のメアリーさんが壊されたんだよね。可憐で聡明なメアリーさんが見る影も無かったもんね」


「……」

 ソアラは顔を伏せて悲しそうな顔をする。


「……私が不用意だったにです。用心していれば、あのようなことにはなりませんでした」


 エランがソアラを見て宥めるように言う。

「大切なお仲間だったのですね。しかし、まるでローゼ様のような物言いですが?」


 エリーがエランを見て誤魔化すように言った。「……昔の仲の良かった同僚だよ。ソアラちゃん、転生者だからね」


 「……?」

 エランが訝しむ顔をしてエリーを見て言う。

「ローゼ様の使徒、転生者? では、初期の5代使徒のおひとりなのですか? ソアラ……いえ、ソアラさまは……」

 そう言ってエランは口をつぐみ湯船で立ち上がりソアラに深々と一礼した。


 ソアラは上目遣いでエランを見つめて囁く。

「……ええ、そうです。いまさら必要ありません。エラン陛下。今まで通りで結構です」


 エランは湯船で跪き頭を下げる。

「ありがとうございます。エリーからはそのようなこと聞いていませんでしたので」


 ソアラは顔をエリーに向けて微笑み言う。

「エラン陛下は、現世でのセレーナ様の姉君ですよ、どちらにせよ問題など有りませんよ」


 エリーも頷き同調する。エランは安心したようにソアラの隣りに浸かり肩を寄せた。


「……」


 ソアラは上目遣いでユーリを見つめて言う。

「それにしても、ユーリさんは完璧ですね。どうしたらそんな感じになるのか聞きたいです」


「……いえ、別に大した事はしていません。バランスの良い食事と、適度な運動、そして、魔法と剣技の修練だけです。決して追い込んだり、無理はしておりません」

 ユーリはさも当たり前のように、ソアラに答えた。


「……! そう、なんですね」

 ソアラはユーリのそばに寄って体を密着させる。そして上目遣いでユーリの顔を見つめる。


「……ホント気持ち良い」

 ソアラは満足そうに言った。ユーリは戸惑った顔をして言う。


「……ソアラ……さま……」

 エリーが直ぐにソアラの後ろへ周り、肩に手を掛けてユーリから引き剥がした。


「大切なユーリさんに、やめてくれる」

 エリーが嫌そうに言った。ユーリはそれを聞いて嬉しそうな顔をする。


「……エリー様」


「それではエリー、夕食ですね。今日はプライベートでこの4人で良いですね」

 エランが嬉しそうに言って、湯船から上がる。エリーも頷きソアラを抱えて湯船から上がった。

 ソアラは湯船から出るユーリを見つめてポツリと言う。

「……ユーリさん? なんか懐かしい感じが」


 エリーは慌てたようにソアラの頭を押さえて引っ張りながら。

「風邪ひくよ。さっさと出るよ」


 ソアラは嫌そうな顔をして言う。

「なんでそんな扱いを」


 そうして4人は脱衣室へと出て行った。ソアラは送風機の前に立つと直ぐに髪を乾かし始めた。エリーはタオルで水分を拭き取り下着をつける。

「今日は肉料理ですね。楽しみです。エルヴェスの料理も美味しかったけど、やっぱりベランドルの方が私には合う感じです」

 エリーは嬉しそうに言った。エランは口を緩めてエリーを見る。


「料理長にはエリーの好みの味付けを頼んでますからね」

 エリーはエランの下着を見て、少し不思議そうな顔をする。

「お姉様、今日は黒基調でセクシーな下着ですね? いつもこんな感じでしたか」


「ええ……こんな感じですよ」

 エランが少し戸惑ったような顔をした。エリーはインナーを着用して直ぐに軍服を着用して、真っ先に脱衣室を出て行った。


 ソアラがエランのそばに寄って囁く。

「今日はトッドさんが来られるのですよね」


「……ええ、そのように聞いています」

 エランは少し慌てたように答えと、ユーリが2人を見て言う。


「エリー様も楽しみにされているようですよ。久々に師匠に会えると」


「……そうなのですね」

 エランはそう言って慌てたように、部屋着を着用した。

 

 

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!


これからも、どうぞよろしくお願いします。

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