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第212話 エリーの気掛かり

 2国間和平交渉会議9日目午後。


 ここはエルヴェス帝国、ルーベンス市より500キロほど西の地方都市ハイヤ市、そしてさらに30キロほど離れた、森林地帯にある地下深くのカミュ神殿。


 エリーの目の前には、3mほどの高さの透明のカプセルがあった。その中には全裸のリサが液体に浮かんでいる。

 エリーは隣りに立つ、薄紫色の光を纏ったカミュを見て微笑み言う。

「では、よろしくお願いします。くれぐれもリサさんを弄ぶことがないように」


『……ん? よく意味が理解出来ませんが? 精神体は保護しているので大丈夫です』

 カミュの薄紫色の光が揺らいだ。


 エリーは、カミュのブルーの瞳を見つめて囁く。

「美女には目がないではないですか? カミュさま……絶対にダメですよ」


 カミュの薄紫色の光がさらに揺らいだ。

『……あなた……私を、誰だと思っているのですか! あなたの創造主ですよ』


 エリーは目を細めてカミュの瞳を見て言う。

「だからこそです。リサさんは私の大切な従者ですので、万が一のことがないように」


『ええ、私を外へ連れ出してくれる、大切な依代です。壊すような事は有りません。セレーナ……いえ、エリー、千年振りに会ったのに、それは寂し物言いですね』

 カミュは女神の薄紫色の光がまた揺らいだ。


「……では、カミュさま! 私は失礼致します」エリーは一歩下がって、カミュに深く一礼する。


『エリー、戻りは急がなくても構いませんよ』

 カミュは嬉しそうな顔をしてエリーを見た。


「……! はい、5日後に戻りますので、ご安心ください!」エリーは直ぐにカミュに背を向けて、施術室から出て行った。


 カミュはエリーの後ろ姿を見送り、振り返りカプセル中のリサを見て顔を緩めた。

『この娘……なかなか良いですね。ほんと、私の人形にしたいけど……』

 そして薄紫色の光と共に粒子化してカミュは姿を消した。


 ◆◇◆◇


 ここはグラン連邦国首都べマン市。首都防衛隊基地内、エリー大隊本部重装機兵整備ブロック。

 ソアラとアンジェラは、レンベルのランカーⅡ2号機の積載を終え、出発前の休憩をしている。


 ソアラは外事局特務対策課の課長補佐ヨハネス中佐と、少し打合せ後、本部大食堂でくつろいでいた。アンジェラが真剣な顔をして言う。


「ソアラちゃん! ボビー少佐の魅了を解いてくださいね。でないと、大変なことになります」

 ソアラは首を傾げる。

「……? スキルかなんか使ってませんよ」


「……、ボビー少佐は魔力耐性が無いんです。あなたの少しの魔力漏れでもイチコロなんです」

 アンジェラが呆れたように言った。


「……、はい、確認してみます」

 ソアラはテーブル席から立ち上がり、大食堂から出って直ぐに隣の、技術管理室へと入った。ボビーは技術長として中央の執務机でデーター端末の処理をしていた。ソアラが入室すると、直ぐに仕事を中断して、ソアラの前にやって来て声を掛けた。


「ソアラ中尉、何か用かな? 私に会えなくて淋しかった?」 そう言って、ソアラの肩に手を乗せた。ソアラはボビーを上目遣いで見つめて言う。


「……はい、ボビー少佐、今日はお世話になり、ありがとうございました」


 ボビーは嬉しそうに満面の笑みを浮かべて、ソアラを抱き上げた。周囲にいた技術将兵が驚いた顔で2人を見つめる。出発準備で資料をまとめていた、アナが声を上げる。


「ボビー少佐! いい加減にしてください! セクハラですよ!」


 ボビーが驚いた顔をしてソアラを見つめる。

「……これは……マズイか?」


 ソアラは微笑み言う。

「ええ、やり過ぎです」


「あゝ、すまない……」

 ボビーは慌てたように、ソアラを床に下ろして、頭を下げた。ソアラはボビーの手を引っ張り技術管理室の打合せ用個室に入って鍵を掛けた。驚いた顔をしてボビーは言う。


「……これは、誤解を招く恐れがあるのだが、さっきは何か衝動的に……俺にも訳がわからん!」

 そう言ってボビーは頭を抱えた。ソアラはボビーを見て言う。

「ご迷惑をお掛けしました。直ぐに処置を致しますのでご安心を」

 ソアラはボビーの手を取り魔力を通して、ボビーの精神体にアクセス処置をした。


「もう、大丈夫です。もうこのような事は有りませんので、ボビー少佐が思いを寄せている方に、気持ちが届きますようお祈りいたします」

 そう言ってソアラはボビーに微笑んだ。


 ボビーは戸惑った顔をする。

「……?」


 ソアラは直ぐに個室から出ると、アナの前に立って言う。

「では、アナ少尉、準備はいいですか? 出発します」


 アナは少し心配そうな顔をする。

「ボビー少佐は……大丈夫でした?」


「はい、解決済みです。ご迷惑をお掛けした見たいです」

 ソアラは微笑み技術管理室から出て行った。


 そして20分ほどして、首都防衛隊基地航空待機場。ランカーⅡ2号機は、プロペラを予備回転で回している。ヨハネス中佐、ボビー少佐にアンジェラが敬礼する。


「それでは、ドールへ向かいます」


 ヨハネス中佐はソアラ達を見て敬礼する。

「エリー中佐によろしくお伝えください」


「はい! 了解しました」

 ソアラが答えると、アンジェラ、ソアラ、アナはランカーⅡの搭乗口へと向かった。ソアラ達が乗り込むと、搭乗員が直ぐにタラップ収納ドアを閉めた。搭乗員はインカムでコックピットに連絡する。

 

 ビアンカはインカム越しに声を上げる。

「ドアロック確認! 只今より離陸します! 各員! ベルト着用願います!」


 ソアラ達は座席ベルトを装着する。ランカーⅡ2号機はプロペラ出力を上げると、機体はゆっくり上昇を始めた。可変翼の角度を徐々に変更して、機首方向を変える。ランカーⅡは速度をさらに上げる。そして、あっという間にランカーⅡはボビー達からは見えなくなった。

 

 

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!

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