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第211話 リサの強化計画

 2国間和平交渉会議9日目正午。


 ここはエルヴェス帝国、ルーベンス市より500キロほど西の地方都市ハイヤ市、そしてさらに30キロほど離れた、森林地帯にある地下の神殿。


 エリーはリサと共に、カミュの神殿謁見広間に入った。天井の高さは10mはあるだろう。天井はガラス張りのような感じで、柔らかい暖色光が灯されている。広間は30m四方はある。


 エリー達が広間に入ると入口の大きな扉らが閉められた。

 しばらくして、エリーとリサの前に薄紫色の光の粒子が集まり輝き始める。そして光の中に美しい女性が姿を現す。カミュだ。


『セレーナ、そこの椅子に座ってくださいね。精神体の情報を頂きます』

 カミュはそう言って広間の金属製の椅子を指し示した。エリーは頷き少し離れた椅子へ座った。


『リサさんも隣りの椅子にお願いしますね』

 カミュが微笑み言った。リサはカミュの姿に釘付けになっており、一瞬反応が遅れて返事をする。

「……はい」


 リサは慌ててエリーの隣りの椅子に座った。エリーは隣りに座った、リサを見て微笑む。

「気持ちを穏やかに、リラックスしてね。カミュさまに委ねれば良いよ」


「……はい」

 リサは頷いた。そしてカミュが2人の前に来ると、薄紫色の光が2人を包み込む。しばらくしてカミュの姿が消えて紫色の光が当たりを照らすだけとなった。


 リサは目を閉じてカミュの精神体のエネルギーの流れを感じていた。そして精神が穏やかに満たされるのを感じていた。

(……なんと素晴らしい……こころが穏やかな温かい光で満たされていく……あゝ、こんな気持ちになるなんて……)

 リサは精神体の深層に落ちて行く。隣りのエリーも穏やかな顔をして、カミュの精神体を受け入れた。2人は5分ほどして薄紫色の光が2人から離れて、カミュが再び現れる。


『セレーナ、リサさん、もう結構ですよ。認識しました』

 カミュは2人の顔に手を触れて微笑んだ。


 エリーは目を開けてカミュを見上げて微笑む。

『セレーナ、以前よりトータル能力が上昇していますね。ローゼの状況も把握しました。今は協力して対応しているようで良かったです。それにしても私に何か隠していますね。認識出来ない領域がありました!? 無意識ですか? まあ良いですけど』


 カミュは、そう言ってエリーに微笑んだ。そしてリサに視線を向けて優しく言う。


『リサさん、あなたのすべてを認識させて頂きました。あなたは、大海の女神オーランドの血統者なのですね。細胞強化は必要ですが。対応は十分可能です』

 リサは少し混濁したような表情をしてカミュの話を聞いていた。


「……はい……仰せのままに……」


『セレーナ、いえ、エリーと呼んだほうが良いかしら。あなたも大変だったようね。でもあなたはなぜ! その依代の精神体を残して融合人格を形成したのですか?』

 カミュは不思議そうな顔をしてエリーに尋ねた。


「……それは女神でなく、人間らしく有りたいと思ったからです」

 エリー微笑み答えた。


『そうなのですね。寄り添いたいと……理解しました』


 エリーは椅子から立ち上がり、カミュに跪き頭を下げる。

「カミュさま! では、お聞き届けくださるのですね。私の願い」


 カミュはエリーを見て微笑む。

『ええ、協力しましょう。私も暇ですしね。でも、私は外部情報を随分取り入れていないので、しばらくギャップ調整に時間を頂けますか。それとリサさんは、カプセル水溶液に入って細胞強化を行います。全行程、5日間は必要ですね』


 エリーは顔上げカミュを見上げて笑顔で答える。

「はい、カミュさま、お任せします」


『リサさんは預かります。問題は無いですね』

 カミュはリサのほうを見て言った。エリーは立ち上がりリサに近寄り、肩に手を乗せて。


「大丈夫だよね」

 リサは少し虚な顔をして頷く。


「カミュさま、リサさんをよろしくお願いします」

 エリーはカミュに一礼して答えた。


 ◆◇◆◇


 ここはグラン連邦国首都べマン市。首都防衛隊基地内、エリー大隊本部重装機兵整備ブロック。ソアラ達は2時間前に悪天候の中、なんとかビアンカの操縦技量により到着することが出来ていた。


 レンベルの足元にはボビー、アナ、アンジェラが、テーブル上の端末モニターを真剣な表情で見つめていた。

「大丈夫だな。ソアラ中尉! 全て問題無い! あとは実戦で微調整するだけだ」


 ボビーがインカムでコックピット内のソアラに連絡した。


『はい! 了解です! システム停止します!』

 ソアラから無線が入った。そしてソアラはセーフティロックを解除、コックピットシールド開放ボタンを押す。コックピット内に警報が鳴り響き、ゆっくりとコックピットシールドが開放されていく。ソアラは直ぐにコックピットから這い出し、中間タラップへと出てきた。


 タラップ上からソアラは声を上げる。

「ボビー少佐! お疲れ様です!」


 ボビーは見上げてソアラに手を上げて答えた。

「飯でも食うか! ソアラ中尉も疲れただろう」

 アンジェラがそれを見て嫌な顔をする。

「ソアラ中尉! さっさと昼食摂ったら引き上げますよ」


 タラップ上のソアラはそれを聞いて悲しそうな顔をする。


「おい、アンジェラ中尉! あたりが強いな。もっと優しくしたほうがいいんじゃ無いか」

 ボビーが戸惑ったように言った。アナもそれに同調して頷き言う。


「ソアラ中尉、可愛いし素直じゃないですか。エリートなのに偉ぶってるところもないし……。いじめたらダメですよ」


 アンジェラが呆れたように言う。

「……みなさん、騙されています。彼女は腹黒なんです……、ほんと」


 ボビーがヘッドセットを外して、ガッカリした顔をする。

「アンジェラ中尉、もっと度量のある人だと思ったが……残念だ」


 アンジェラが嫌な顔をしてボビーを見て言う。

「すみません。ですが、これは事実です」


 ソアラがタラップを降り3人の前に来ると言う。

「……申し訳ありません。私が至らないばかりに」そう言って頭を下げた。


「……!」

 アンジェラはソアラの肩に手を回して言う。


「冗談が過ぎたね。ソアラちゃんゴメン」


「……あ、冗談か」

 ボビーは2人を見て顔を緩めた。


 アンジェラはアナを見て笑顔になって。

「実戦での調整任務よろしくお願いします」


「はい、責任をもって行いますので、ご安心ください」


 ソアラもアンジェラを両手で押し返すと、アナに一礼して。

「アナ少尉、よろしくお願いします」


 そして近寄りアナを上目遣いで見つめて手をとった。


「……ソアラ中尉、任せてください」

 アナは少し動揺したように答えた。ボビーが声を上げる。

「……あゝ、やっと片付いた。さあ、飯を食おうぜ!」


 そう言ってソアラに近づき右手をとった。

「ボビー少佐! それは少し……」

 アナがボビーを見て少しガッカリした顔をする。


「え……! これって何か。 ソアラ中尉?」


 ソアラは微笑みボビーを見上げて言う。

「何も問題有りません」


「じゃあ、行こう!」

 ボビーとソアラは手を繋いで整備ブロック入口へと向かった。


 アンジェラは2人の後ろ姿を見て、アナに言う。

「……ボビー少佐、ソアラちゃんに魅力されたね。終わりだよ。エリー中佐に解いてもらわないと、夜も寝れなくなるよ」


 アナは驚いた顔をする。

「……魅了って、まさかスキルかなんかですか? 魔道士なのですかソアラ中尉は」


 アンジェラはアナの耳元で囁く。

「ええ、かなりの使い手です。魔力耐性を持って無いとイチコロです。だから言ったのに」


 そう言ってアンジェラはため息を吐いた。



最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!

 

これからも、どうぞよろしくお願いします。


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