第207話 ユーリの治療
2国間和平交渉会議8日目深夜。
ここはエルヴェス帝国首都ルーベンス市郊外、エルヴェス帝国軍、皇帝派第1軍駐屯地、エラン皇帝護衛隊宿舎。
ユーリが急な要件でエリーの宿舎個室を訪れていた。エリーはベットに座り少し虚な目をして話を聞いていた。ユーリは少し遠慮気味に尋ねる。
「……エリー様、どうなさいますか?」
エリーは髪をかきあげ間を置いて。
「……欺瞞情報……可能性もあるかもね。ここは慎重に」
ユーリは椅子から立ち上がり、ベットのエリーにそばに寄った。
「そうですね。トッドさんがマッテオに入ってからですね」
エリーは寝ぼけたような顔で頷いて言う。
「気には留めておくよ……まだ情報が少ないし」
そう言ってエリーはユーリ茶色の髪を右手で触り顔を近づける。
「相変わらず良い香りだね」
「……ありがとうございます」
ユーリは少し戸惑った顔をする。エリーはベットから立ち上がり、ユーリの顔を虚な目で見て囁く。
「まだ魔力が安定してないね。精神面で乱れが見える。潜って調整するよ」
「……ですが……エリー様」
ユーリは顔を伏せた。エリーはユーリの頬に手を添えて囁く。
「ユーリさん、以前のキレが無いんだよね……ほんと……ダメ」
エリーはユーリの頬を優しく両手で包んで顔を持ち上げる。エリーの顔はいつの間にか寝ぼけ顔から、凛々しい少女の顔になっていた。
「ユーリさん……私の憧れなんだよ。最初会った時、ほんとなんて綺麗なお姉さんなんだろうて思ったよ。そりゃね! ……やっぱり洗礼なんてするんじゃなかったと後悔しているよ」
ユーリの顔は強張り瞳は細かく痙攣している。そしてユーリは呟いた。
「……も、しわけ……ありません」
「謝る必要なんてないよ。私の言っているのはね。違うんだよね。ユーリさんが、私をどう思っているかも知っているよ。このまま知らないフリをしようと思ったけど無理みたい。ほんと、ユーリさんは真面目過ぎるんだよね」
「……!?」
ユーリは瞳を潤ませる。エリーはユーリに顔を近付けて言う。
「……ユーリさんは今、スキルに精神を侵食されています。なんでこうなったかよくわからないけど」
「……」
ユーリは悲しい表情をする。そしてエリーはユーリに微笑み囁く。
「だから、魔道回路を調整するよ。でないとユーリさんは危ういんだ……」
エリーはユーリ頭に手を伸ばして優しく撫でる。
「……」
ユーリは瞳を相変わらず潤ませて悲しそうな表情をしている。
(……ほんとユーリさん、まさか女神スキルに侵食されるなんて……)
エリーはユーリの茶色の髪を優しくとかしながら優しく囁く。
「じゃあ、ベッドに仰向けに寝てください」
エリーはそう言って、一旦ユーリから離れてドアの施錠を確認する。そしてエリーは振り返りユーリを脇から支えてベットに寝かせる。
「エリー……さま、不甲斐ないく……」
ユーリが仰向けになり顔をエリーに向けた。エリーは屈んでユーリに顔を寄せる。
「気にしなくて良いよ。とりあえず調整するよ」
そう言ってエリーはベットに上がると、ユーリのを跨いで額を合わせた。
「じゃあ、始めるね」
エリーが囁くと、エリーは白い光に包まれた。そしてその光はユーリを包み込む。
ユーリが目を閉じると、エリーは意識を沈める。エリーは深層と沈むとセレーナへと語りかける。
『頼むよ。セレーナ、ユーリさんの魔道回路を調整して精神阻害が起こらないようにしてくれるかな』
『あゝ、わかった。能力は下がるが、しょうがないな』
『うん、頼んだよ』
エリーはセレーナと意識が入れ替わる。
セレーナはユーリ精神体に刻まれた魔道回路の調整を開始した。そしてユーリは意識を失い脱力する。光の色が少し薄い紫色変化して5分ほど経過して光が消失した。
セレーナとエリーの意識が入れ替わる。エリーはユーリの横に仰向けに寝て息をふーーっと吐いて。
「大丈夫だね」
ユーリは直ぐに目覚めて、横のエリーの顔を少し見て言う。
「……スッキリしました」
「よかった。成功だね」
エリーは笑顔でユーリを見て、左手を伸ばしてユーリの頬に触れると、ユーリは顔を緩めて安心した顔をした。
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