第205話 疲労の原因
2国間和平交渉会議8日目夕方。
ここはエルヴェス帝国首都ルーベンス市、宮殿内。
ベランドル帝国皇帝エランの電撃訪問により厳重な警備体制が首都全域に敷かれている。
エリー達は宮殿内来賓エリア、来賓応接室内にいた。エランはエルヴェス皇帝カールデンと会談を済ませエリーとくつろいでいる。
応接室にはエリー、エラン、セリカ、ユーリ、リサ、サディの6人がテーブルを囲み椅子に座っていた。
「私は要件が終わったので、ドールに戻ります」エランはエリーのだらけた顔を見ながら言った。
「ご苦労様です。お気をつけて」
エリーが素っ気なく言うと、エランは少し機嫌悪そうに言う。
「エリーは明日の夜には帰って来るのですね」
「はい、なにも無ければ、その予定です」
エリーはエランを見て椅子から立ち上がるとそばに寄る。
「お心遣い感謝しています。お姉様」
エランは嬉しそうな顔をしてエリーを見る。
「……じゃあね」
エランは椅子から立ち上がり、エリーの両手を優しく包んで微笑む。
「……」
セリカがエリーに近寄り一礼すると。
「それでは、エリー様、失礼致します」
「セリカさん、お姉様をお願いします」
エリーはセリカに微笑み言った。直ぐにセリカはエリーに笑顔で直ぐに答える。
「はい、お任せください」
エランはサディの瞳を見つめて言う。
「サディさん……エリーをよろしくね。あなたは私に良くしてくれたから、本当は戻したいところだけど。そうも行かないのよね」
サディはそれを聞いて頭を深く下げる。
「はい、謀ったにですから、致し方ないことです。こうしてエリーさまに、お仕え出来るだけでも幸せです」
エリー達がエランに一礼すると、エランは右手を挙げてセリカと共に応接室から出て行った。応接室のドアが閉まると、エリーはだらけた顔をして椅子に座った。そしてそれを見てユーリが少し心配そうに言う。
「エリー様、少し休まれますか?」
「……うん。そう出来るのなら……1時間くらい」エリーが顔を緩めて言った。
「はい、では部屋を移りますか。ここではちょっと」
ユーリはそう言うとリサに視線を移して。
「リサさん、エリー様のそばに、しばらく付いてください」
「はい、了解致しました」
リサは少し嬉しそうに答えた。
「ユーリさん、ありがとう。それじゃあ、言葉に甘えるよ」
エリーはそう言うと椅子から立ち上がり、リサに微笑み掛かる。
リサがエリーに尋ねる。
「エリー様、ここ最近、お疲れ気味ですが。原因はわかっているのですか?」
エリーは少し戸惑った顔をしてリサを見た。
「……そりゃね。この短期間で……こんな強力な従者を何人も抱えたら、消耗して回復が追いつかないんだよね」
リサは申し訳なさそうな顔をして言う。
「……原因は私なのですか!?」
エリーはユーリとリサを見て呆れたような顔をする。
「まあね。1ヶ月経たない内に結構な人数だよ。私だって代償が要らないわけじゃないからね」
「ユーリさん、それでは少し休みます」
そう言ってエリーとリサ、サディが応接室から出て行った。ユーリはエリー達を見送って、直ぐにブラウン商会諜報機関員を呼び出す。そして諜報機関員はしばらくして部屋にやって来た。
「ユーリさま、例の件、問題なく進行中です」
ブラウン商会諜報機関員がユーリに報告した。
ユーリは諜報機関員を見て微笑み言う。
「よろしくお願いします。中止命令が出ない限り計画通りでお願いします」
「はっ! では!」
諜報機関員は一礼して部屋から出て行った。
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