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第203話 ライオネル諜報部隊2

 2国間和平交渉会議8日目午前。


 ここはエルヴェス帝国首都ルーベンス市東地区の市街地より郊外へ10キロほど離れた農村部。ユーリとリサ達の別働班がライオネル諜報機関拠点の強襲タイミングを伺っていた。

 ユーリ班は諜報拠点農家家屋、500mほど手前の林に輸送車両2台に分乗待機している。部隊構成はユーリ、リサを含めて25名、2個分隊編成で行う。


 カーキ色の魔道士ローブを羽織ったユーリは時計を確認してリサに声を掛ける。

「……時間です。問題ないですね」


 助手席のリサが答える。

「はい、人数は情報通りです。外に5名、農家母屋に16名です。今のところ魔道反応はありません」


 ユーリは頷きインカムで支援分隊長に指示を出す。

「定刻です。作戦行動開始!」


『了解!』

 支援分隊長から応答が入った。


 ◆◇◆◇


 ルーベンス市郊外、ライオネル諜報拠点農家母屋内。


 30畳ほどの居間に16名の諜報員達がが椅子やソファーに座りくつろいでいる。諜報員達は1時間ほど前に全員揃いそれぞれに情報交換していた。

 諜報の責任者らしき40才くらいの男性がソファーに座っている短髪の男性に言う。

「納得いかんな! 今回の地区統括がサディとか言う王国魔道士くずれとわ! お前はどう思う」

 話しかけられた短髪の男性は嫌な顔をして答える。

「ええ、理解出来ますよ。でもこれも、旧王族に対する配慮です。しょうがないですよ」


「……なんとも、時代遅れの魔法使いが我々の統括とは……時代遅れも甚だしい」


 責任者らしき男性はソファーに座り直して顔を天井に向ける。

「サディ統括が来る時間だな。確か2人で来ると言っていたが」


「はい、ベランドルの機関員が同伴するそうです」

 入口付近に座っている。金髪の20台前半くらいの男が答えた。


「サディ……偽名だな。そんな王宮魔道士はいなかった。」


 責任者らしき男性の前に座る、反対側にいた黒髪のメガネの男性が言う。

「年齢的に多分、グロリア魔道士ではないかと……王国始まって以来の逸材とか言われていた。最年少で王国魔道士試験に合格した超美人だったと聞いています」


「だが、だいぶ経っているから、もうおばさんだな」

 責任者らしき男性が言った。


「でもイースさんよりは年下ですよ」

 黒髪のメガネの男性が少し笑って言った。


 外の警備から無線連絡が入り、居間の入口付近にいたガッチリした男性が対応する。そして責任者の男性に向かって言う。

「来たようです。敷地内に2人歩いて入って来たと」


「そうか、では、お迎えするか」

 責任者らしき男性はソファーから立ち上がり、嫌な顔をすると居間のドアを開けて出て行った。


 ◆◇◆◇


 ユーリとリサは林から車両を降りて徒歩で、ライオネル諜報拠点農場へと接近、敷地内へと入った。警備担当員らしき男性が直ぐに近いて来た。そして浅黒く日焼けした赤髪のガッチリした長身男性はユーリ達を見て頭を下げて尋ねる。


「ドリアン農園に何か御用でしょうか?」


 ユーリは直ぐに答えた。

「はい、サディと申します。イースさんにお会いするために伺いました」


 赤髪のガッチリした長身男性は、ユーリとリサを怪訝そうな顔で見て言う。

「サディさんとお連れの方、フードをとって顔を見せてもらえますか」


 それを聞いてユーリはゆっくり魔道士ローブのフードを取った。リサも続いてフードをとる。赤髪の長身男性は少し驚いた顔をする。


「……サディさん?」


「はい、サディ•エドマンです」

 ユーリはそう言いて直ぐに認証コードの入ったカードを見せる。赤髪の長身男性は、カードを手に取り確認してから頭を下げる。


「サディさん確認しました。随分お若く見えるのですが……あ、……失礼しました」


 赤髪長身男性は少し慌てたように言った。そして農家母屋を指して言う。

「あちらへ。イースさんが待ております」


 それを聞いてユーリは頭を軽く下げると、直ぐに母屋へと向かって歩き出す。母屋玄関まで50mほどある。ユーリは直ぐに思念スキルでリサと思念会話する。

《リサさん、周囲に魔道反応はないですか?》


《はい、大丈夫です。タイミングは予定通りですか?》リサは思念応答した。


《部屋の状況を確認してから、合図します》


《はい、ユーリさん了解しました》


 ユーリとリサは母屋の玄関前に到着すとドアが開き男性が出てくる。40才くらいの金髪の渋め身長はユーリより少し高いくらい。


「……イースです。サディさん、お待ちしておりました」

 イースと名乗った男性はユーリを見て嬉しいそうな顔で言った。ユーリも一礼する。

「サディ•エドマンです。イースさんよろしくお願いします」


 イースはドアを開放するとユーリとリサを中に入るよう即した。

「どうぞ、中へ」

 ユーリは玄関内に入ると気づかれないよう、魔力量を上げる。そしてローブ下の電撃棒ホルダーロックを外した。リサもローブの下で拳銃に手を掛ける。

 イースは玄関から廊下を移動しながらユーリにニヤけた顔で言う。


「このような美しいお方が、我々の統括とは嬉しい限りです」


「……それは、ありがとうございます」

 ユーリはイースの緩んだ顔見て微笑んだ。

(このイースがここのリーダーか? ホントなんだこのニヤけた顔は! ろくなことを考えてないな……まあ、叩きのめして終わりですけどね)


 イースに続いて30畳ほどの広さの居間へとユーリとリサは入る。そして中の諜報員達の視線がユーリに集まった。そして次の瞬間、リサが魔道防御シールドを展開してユーリとリサが白色の光に包まれる。

 部屋の中にいたライオネル諜報員達が驚いた顔をする。すぐにイースがユーリに声を上げる。


「なんの余興ですか! 魔法の実演は結構ですよ」

 それを聞いてユーリがローブの下から電撃棒を取り出し直ぐに伸ばした。そして電撃棒へ魔力を通して白い光が迸り始めた。


 イースはユーリの雰囲気が、攻撃的に変わったことに気づき直ぐに後ろにさがった。

「……!?」


 ユーリは前に飛び出すと横方向に数回斬撃を放った。悲鳴と呻き声を上げながら7人ほどが周囲に飛ばされた。この状況が理解出来ない諜報員達が驚愕の表情でユーリを見つめている。

 イースだけは直ぐに拳銃を取り出してユーリに向けて数発した。〈パン、パン〉


 だが、銃弾はリサの魔法防御シールドに当たり無力化され床にポトポトと落下した。

 ユーリはイース距離を詰めると斬撃を放った。イースは電撃をくらいその場に崩れ落ちた。体は痙攣して口からは泡を吹き、白目をむき、失禁している。

 ユーリはそれを見て。

 (あゝ、情け無い)


 ユーリは、電撃棒を容赦なく振り回し、居間の中の全員を無力化した。時間は1分掛からなかった。


 ユーリは内ポケットからインカムを取り出して言う。

「内部は制圧完了! 外はどうですか?」


『外部5名! 制圧完了! 逃亡者無し!』


「了解です。 母屋のものを運び出します。 車両を前につけてください」


『了解! 車両移動しまます』


 ユーリはリサを見て微笑む。

「作戦成功です。あとはここを処分して終わりです」


「はい、では急ぎましょう!」

 リサは直ぐに倒れている諜報員達の意識状況を確認する。


「エリー様の指示は全員拘束でしたね。でもこのイースは置いて行きたいんですが」

 ユーリが言うとリサが嫌な顔をして言う。

「ええ、あのいやらしい顔は……ですが拘束して連れ帰れとのことなので」


 そうして支援分隊員達が居間に入って来て倒れている諜報員達に拘束具を取り付け、輸送車両に搬送して行く。


「作業完了です。分隊長、あとは焼却ですね」


 ユーリが支援分隊長に言うと分隊長は敬礼して火炎弾を農園の母屋に投げ込む。そして一気に炎が一気に燃え上がった。


 それを見てユーリは声を上げる。

「任務完了です! 撤収!」

 支援分隊長が車両に乗り込むと、2台輸送車両は猛烈な速度で走り出した。


 

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!

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