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第201話 サディとの修練

エリーはサディと剣を交える。

 2国間和平交渉会議8日目朝。


 ここはエルヴェス帝国首都ルーベンス市郊外、エルヴェス帝国軍、皇帝派第1軍駐屯地、エラン皇帝護衛隊宿舎。


 エリーは白い修練着を着て宿舎前の簡易ベンチに座って休憩していた。エリーはすでにランニングを終え、木剣の素振りも済ませて水ボトルを飲んでいた。


 宿舎建物側から女性の声がする。

「ローラさま!」


 エリーが声のほうを向くとサディがこちらを見ている。エリーは軽く一礼する。

「サディさん! おはようございます」


「相変わらず、ご熱心ですね」

 サディは侍女長時代のような清楚な雰囲気で近づいて話しかけて来た。

 (こうも気配を変えられると……なんかね)

 エリーが少し目を細めているとサディが羽織っているローブを脱ぎ言う。


「ローラさま! 稽古をお願い出来ますか」


「……ええ……良いですけど。サディさん、魔道士ですよね」


「はい、ですが剣技も嗜んでおりますので、少しはお相手出来るかと」

 そう言ってサディは手に持っている包みから木剣を取り出す。エリーはそれを見て微笑み言う。


「では軽くですね。良いですよ。では防具を着けますか。さすがに怪我は出来ませからね。サディさん一緒に来てください」


 そしてエリーとサディは駐機場へと向かいランカーⅡ内で防具を装着する。エリーは修練着姿のサディを見て思っていた。

(サディさん、意外と体が締まってますね。年齢的には衰えて来る時期なんですけど! 鍛えているのかな)


「準備出来ましたね。それではやりますか」

 そう言って2人は駐機場の少し広い30mほどのスペースで対峙する。エリーは木剣を上段に構えて声を上げる。

「サディさん、いつでも構いませによ!」


 サディはエリーを見据えて木剣を右斜に構えると、左足を蹴り出し一気にエリーへの距離を詰めた。

 (……思ったより動きが速い!)

 エリーが思った瞬間、下方からサディの鋭い斬撃がエリーの胴目掛けて放たれた。エリーは木剣を上段から降り下ろし、サディの木剣を叩き外へ逸らした。サディは体を捻り直ぐに退いた。

(……!? うーーっ重い!)

 エリーは身体強化を図らず体と木剣のコントールだけでサディの木剣をいなしたが、予想以上に重かった。

(スキルは使わずに行こうと思ったけど。これは無理かも? でもね反則なんだよね)


 エリーは魔力を体に通して軽く身体強化を行う。

「サディさん、悪いけど魔力を少し使いますね。どうやら思ったより出来るようなので」


 サディは木剣を右中段に構えて嬉しそうに声を上げる。

「ありがとうございます! エリーさま!」


(サディさん、体のキレも良い! 剣の振りこみも鋭い! すでにウォーミングアップを済ませているね。ホント抜かり無い。しかも油断出来ない剣技レベルだよ)


 エリーは木剣を握り直してサディを見据える。対峙するサディは木剣を中段に構え、間合いを計って飛び込む機会を伺っている。

(……エリーさま、まだまだ私程度ではこれくらいの魔力しか使わないのですね! スキル発動の必要もないと)

 サディは全身に通す魔力量を上げ身体強化を最大限にした。エリーはそれを見て微笑み声を上げる。


「サディさん! 本気ですね! では私も」


 エリーは木剣を右斜下段から後ろに引き構えると、瞬時にサディの前へ飛び出して下方から斬撃を放った。サディはそれに反応、エリーの斬撃の軌道上に剣先を入れ外へ逸らした。


 エリーは上体を捻り木剣を直ぐに引き込むとサディの腹部目掛けて鋭い突きを放つ。

 サディは木剣を斜めに素早く入れて突きを逸らし腹部への直撃避けたが脇腹の防具をかすめた。〈かしぃーー!〉木剣が防具を擦る音が辺りに響いた。サディは直ぐに後方へ反転して距離をとって膝をつき木剣を上段に構え防御姿勢をとった。


(ワザと見えなくしてても、やっぱりダメだね)

 エリーはふっと息を吐いて木剣を振り上げると、左足を蹴り出しサディの上方に飛び上がり一気に凄まじい斬撃を放った。サディは直ぐに木剣を前に降り下ろし外へ逸らそうとするが、エリーの渾身の一撃には木剣は弾かれ無意味だった。

 エリーの木剣の剣先はサディの顔の数センチ手前で止まった。サディはそれがわかっていたかのように、顔色ひとつ変えず。


「……参りました。やはり自ら体験すると凄さが理解出来ました。ありがとうございました」


 エリーは木剣を引き一歩下がると、サディに一礼する。

「いいえ、こちらこそありがとうございました。サディさんが魔道剣士であることがわかってよかったです」


 サディはエリーの顔を見てゆっくり立ち上がると、木剣を下げ丁寧に一礼する。

「エリーさまの相手にならず申し訳ありませんでした。今後、精進いたします」


「はい、頑張ってください。現状でも上級剣技士レベルは超えていますけどね。しかし、魔力量の調整が細かく無駄がないですね。感心しましたよ」

 エリーはそう言ってサディの防具を確認する。

「大丈夫ですね。木剣には魔力を通していませんから表面だけのようです。痛みとか無いですよね」

 エリーはサディの表情を確認しながら言った。


「はい、大丈夫です」

 サディが答えるとエリーは微笑み言う。


「では私は朝食へ」


「私もお供致します。よろしいですか?」


「はい、ではご一緒に」

 エリーとサディは並んで食堂へと歩き出す。


「サディさん、剣も修練していたのですね」


 エリーが歩きながら尋ねるとサディは少し嬉しそうに答える。

「はい、近衛兵団の修練にときどき参加しておりました」


「……!? ときどきですか? 違いますよね。サディさんはやり込むタイプですよね」


「……わかりますか。ええ……まあそうです」

 サディは少しハギレが悪い。


「わかってますよ。サディさんは私と従属の契約を結んだのですからね」


「はい、エリーさまのお役に立てるよう尽力致します」

 サディはエリーの朱色の瞳を見つめて言った。そして食堂前に来ると、前からアンジェラとソアラがやって来る。


「おはようございます。ローラ様」


 アンジェラが立ち止まり一礼する。


「アンジェラさん、ソアラちゃん、おはようございます」

 エリーは頭を下げて声を掛けた。


 ソアラがサディを見て表情を強張らせる。

「……サディさん、おはようございます」


「ソアラさん、おはようございます」

 サディはソアラを見て微笑み言った。アンジェラはエリー達を見て微笑み言う。


「朝食ですか? 私達も今からです」


「じゃあ一緒に食べよう!」

 エリーはそう答えると、食堂のドアを開けて先に入った。それに続いてアンジェラ達も食堂へ入る。



 ◆◇◆◇


 

 ここはライオネル連合共和国、オーリス市中央区外交局本部、外交局諜報分析室。


 クラリスは、無事帰還したアルティから報告を受けていた。


「エルヴェスに関してですがグロリア……いえ、サディさんが本日、内通者の対処を行うそうです」


「そう、サディさんには一旦こちらに戻るよう指示したのだけど、早急に処理しないとダメですと拒否されたのです。問題はないと思いますが」

 そう言って、クラリスは髪をかきあげ目を細める。アルティは微笑み言う。


「問題は有りませんよ」


「ホント……立て続けに作戦失敗……もっと引き締めないと」

 クラリスは溜め息を吐く。


「ベランドル、グランの諜報力はかなりのものだと理解しました。今後の作戦は慎重に行わないと危険です」

 アルティは顔を少し顰めて言った。クラリスも頷き言う。


「そうですね。私も過小評価していたようです。今後は慎重に行動することにしましょう」


 アルティはクラリスで手を取り優しく言う。

「そうです。事を起こす時は慎重に良く考えてからですね」


 クラリスはアルティの瞳を見つめて尋ねる。

「アルティ……なんか雰囲気変わりましたね? もっとイケイケだったのに、大人しくなったというか、思慮深くなった?」


 アルティは戸惑った顔をする。そして呟いた。

「……ええ、クラリスお姉様のために」

 

 

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!

 これからも、どうぞよろしくお願いします。

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