第198話 エルヴェスの反乱4
エリーはローゼと今後について話した
国間和平交渉会議7日目正午。
ここはエルヴェス帝国首都ルーベンス市郊外、エルヴェス帝国軍、皇帝派第1軍駐屯地。
エリーは皇帝護衛隊、重装機兵待機場、レンベルTYPEⅡのコックピット内にいた。エリーはパイロットシートに座り、後ろのサブシートにはソアラが座っている。コックピットシールドは閉じコックピット内は非常灯の灯りのみで薄暗い、モニター、スクリーンは全て消灯している。
エリーが目を閉じたまま言う。
「ローゼ……知っていた? 今回の件」
「……エリー、私は万能では無いですよ。言ったはずです。魔力を制限しているので感知力は大幅に落ちています」
ソアラはハット息を吐いて顔を上に向けてシートにもたれ掛かる。
「そう……でもね。わかっているのなら、ある程度は事前に知らせてね。無駄に動きたくないから」
エリーは目を閉じたまま言った。
「エリーはどうする。エルヴェスはとりあえず落ち着きそうだけど……」
ソアラはエリーの頭に優しく触れて言った。エリーはソアラの頭に触った手を掴んで言う。
「そうね。2日もらったから。危険要素を潰しておきますよ。火種は残さないようにしないとね」
ソアラは口を緩めてエリーの頭を見つめて言う。
「エリー、疲労が少し有りますね。配下に任せた方が良いですよ」
「そうだね。強敵はいなようだけどね。まあ、後ろで待機しておくよ」
エリーはソアラの右手を撫でながら言った。ソアラは左手をエリーの肩に回して微笑む。
「次はどこですか?」
ソアラが呟いた。
「……ブラデール……」
エリーはポツリと答えた。
ソアラは左手をエリーの首に回して言う。
「まあ、確かに重要ではありますね」
エリーは目を開けてソアラの左手を引っ張り顔を寄せて言う。
「大陸を早くまとめないとね。時間に余裕はないですから」
ソアラはエリーの耳元で囁く。
「……魔道遠征艦は間に合いそうですか?」
エリーは少し間を置いて言う。
「大丈夫、予定通りだよ」
「そう……なら良いです」
ソアラはエリーの首から手を解きながら言った。
「とりあえず食事をしましょうか」
エリーはそう言って、セーフティロックを解除してコックピットシールド開放ボタンを押す。コックピット内に警報が鳴り響き、ゆっくりとコックピットシールドが開放されていく。
エリーがコックピットから這い出る、そしてソアラの手を引っ張りタラップ上に出るとレンベルTYPEⅡの足元には、アンジェラが立っており上を見上げて声を上げる。
「ローラ様! エラン陛下から急ぎ連絡とのことです!」
エリーはタラップを直ぐに降りアンジェラの前に立つと尋ねる。
「要件は!」
「いえ、聞いておりません! 折り返しとのことです」
「了解です! ではランカーⅡの暗号無線機の方が良いですね」
エリーは直ぐに待機場のランカーⅡ5号機へと向かった。アンジェラはタラップを降りて来たソアラに向かって言う。
「ソアラちゃん、どうですか! 午後も出撃しますか?」
「はい、許可が出るならかまいません」
アンジェラはソアラの隣に並ぶと屈んで耳元で囁く。
「ローゼ様、エリー様とは内密のお話しですか? あゝ、私などお聞きすべきことでは有りませんでした。失礼致しました」
「……」
「ソアラちゃん、昼食に行きますか! お腹空いているでしょう!」
アンジェラはそう言って、ソアラの右腕に手を回す。ソアラはアンジェラを上目遣いに見上げて言う。
「アンジェラさん、私はローラ様を待ちますのであとにします」
「……私のこと嫌なの?」
「……いえ」
「なら、一緒に良いでしょう! 仲良くなりたいのですよ。これから意志の疎通もちゃんとしないと」
アンジェラがそう言うと、ソアラは少し嫌な顔をしてから言う。
「はい、では一緒に……」
アンジェラは微笑み、ソアラの腕を少し強引に引っ張り歩き出す。
「ソアラちゃん、みんな可愛いて言ってますよ。だからそんな顔したらダメだよ」
「……!」
ソアラは歩きながらアンジェラを見上げる。そしてアンジェラは寂しそうな顔をしてソアラに言う。
「……エリー様を酷い目に遭わしたりしないでくださいね。お願いします」
「はい、そのつもりです。出来る限り……」
ソアラは真剣な顔をしてアンジェラに答えた。
「……私はどうなっても構いません。エリー様は幸せになって欲しいのです」
アンジェラはそう言ってソアラの肩に手を回して微笑む。ソアラはそれを見て嬉しいそうに言う。
「エリーは相変わらず人気が有りますね。ホント……」
「……ソアラちゃんだって、人気者じゃないですか」
「……まあね」
アンジェラはソアラの肩をポンと軽く叩き言う。
「でもホント、これが女神ローゼ様とは誰も気付かないよね。ね、ソアラちゃん」
「……それは……絶対にしゃべってはダメ!」
そしてアンジェラはソアラの肩を押しながら歩いて食堂へと向かう。周辺にいた整備将兵から2人を見れば美少女が戯れあっているようにしか見えなかった。
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