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第197話 エルヴェスの反乱3

エリーは上手く利用されて

国間和平交渉会議7日目正午。


 ここはエルヴェス帝国首都ルーベンス市郊外、エルヴェス帝国軍、皇帝派第1軍駐屯地。


 あれから直ぐに、エリーは皇帝カールデン、ニース大将らと共に宮殿をランカーⅡで脱出、ルーベンス市郊外駐屯地へと一時離脱した。

 そして宮殿内に残ったユーリ達は、護衛隊と増援皇帝派部隊らと共に近衛師団本部を急襲し、指揮系統を壊滅させた。今は個別抵抗部隊鎮圧にあたっている。ルーベンス市内では散発的な戦闘はあったが大規模戦闘は発生しなかった。それは反乱発生直後、皇帝派第1軍が市内の要所に展開して押さえ込んだからだ。

 

 エリーは駐屯地内、仮司令部建物でカールデン、ニース大将と現在の状況を把握、今後の作戦について話していた。


 カールデンは作戦室の椅子に座り、エリーの顔を見て微笑み言う。

「ローラさま、助かりました。ご助力なくば命が危うかった」


 エリーは少し機嫌の悪い顔をして言う。

「この程度のこと……私達は完全に踊らされました。ホント……嫌になりますよ」


 エリーは、そう言って目を細めると、ニース大将に視線を移す。

「……!」


「筋書きはニース閣下ですよね!? ベランドル帝国の後ろ盾を得て皇帝カールデン政権を盤石にするため。そして内乱分裂を避けるために」


 エリーは椅子から立ち上がり、ニース大将の隣まで行って顔を見据える。

「……私達を利用した代償は高いですよ。理解していますか」


 ニース大将は立ち上がりエリーに丁寧に一礼すと口を開き話し始める。

 

「……やはり気付かれましたか。国内反乱分子の処分はこれが1番最適と判断致しました。ローラさま、申し訳ありませんでした。……反皇帝派の動きについては把握しておりました。国内でライオネルの諜報機関が工作活動を行い反乱分子を誘導していることも承知しております。単純に一時的な鎮圧だけなら、今回は自分たちだけで凌げますが。しかしながら、カールデン陛下の基盤は脆弱です。今後の国内の統制安定化を考慮して、熟考の末に選択したのです。決して他の意図がある訳ではございません」


 ニース大将は言い終わると、エリーを見て微笑み深く頭を下げる。ニース大将は雰囲気は柔らかいがその深層で何を考えているかはわからない。エリーはニース大将を見て思っていた。


(ニース閣下、このエルヴェスが持っているのはこの人物によるところが大きい! カールデンにはカリスマ性が無い……むしろこのニース閣下が前面に出た方が良いのでは?)


 エリーはカールデンに気付かれないように、ニース大将に囁く。

「……ニース閣下……カールデン陛下には退位をお願いしてはどうですか」


 ニース大将はエリーの瞳を見て微笑む。そしてエリーの耳元で呟く。

「お戯れは、ご勘弁願います」


 ニース大将は屈んでエリーの顔に近づくと、優しく囁く。

「カールデン陛下と結婚はどうでしょうか? イケメンですし、血統者です。申し分ないと思いますが! いかかです」


 エリーはそれを聞いて微笑み小声で言う。

「カールデン陛下とはご遠慮申し上げます。……でも……ニース閣下なら考えても良いですよ」


「……?」


「……本気です……」


「……ご冗談を!?」


「……本心ですよ!」


 カールデンが椅子から立ち上がり戸惑った顔をして言う。

「ローラさま、ニースと何をコソコソ話しているのですか? 私には聞かせたくないのなら別室でお願いします。気分が良いものでは有りませんので」


 ニース大将はエリーから離れてカールデンに一礼する。

「陛下、申し訳ありません。ローラさまと今後について行き違いがありまして」


 エリーはニース大将を上目遣いで見つめて言う。

「ニース閣下が受け入れてくださるのなら……エラン陛下に許可を頂きますが」


 ニース大将はエリーを見て苦笑いする。

「からかうのも、ほどほどにしてください。いくら謀ったからといって……この仕打ちは如何なものかと」


 エリーはワザとらしく両頬を膨らませ言

「私は……おじさまが良いのです。渋いおじさまが……」


「……! いいかんげんにしてください」 


 カールデンが機嫌の悪い顔をして2人の間に割り込み言う。

「なんのやり取りをしているのか知りませんが! もういい加減にひとりにしないでください」


 エリーはニース大将から離れてカールデンに一礼する。

「それでは、私は護衛隊詰所に戻ります。今後は護衛隊は一旦全作戦行動を停止します。エラン陛下には、支援のため2日ほど残ると連絡しております」


 エリー作戦室個室から出ると作戦室の将兵の間を通り入口へと向かう。今日は偽装魔法でローラでなく別人に扮している。エリーが作戦室を歩いてドアを出ると室内の将兵がいたたるところで小声で話していた。

《あれがベランドル帝国、皇帝護衛隊か! すごい美人揃いと聞いていたが……》


《4人で反乱近衛小隊を殲滅したそうだ。とんでもなく強いらしい》


 エリーは作戦室を出ると廊下を移動して別棟の護衛隊詰所を目指す。移動中、エルヴェス軍将兵とすれ違うたびに敬礼されて顔をまじまじと見られて少し機嫌が悪くなる。基本エルヴェスには女性将兵はいないらしく、珍しいのだ。


 エリーは護衛隊詰所に着くとアンジェラが入口で待っていた。

「ローラ様、ご無事で何よりです」


「初陣のソアラちゃんどうだった?」

 エリーはアンジェラに寄ると肩に右手を乗せて言った。アンジェラはエリーの瞳をを見つめて言う。


「まあ、戦闘は大したことなかったので、問題ないです。練度はまだまだですね」


「そう、アンジェラさん、今後もソアラちゃんのことよろしくね」


 エリーはアンジェラの肩から手をはなすと詰所のロビー内に入る。エリーは通信対応しているセーヌへ向かって声を上げる。


「セーヌさん! 護衛隊各員に通達! 今より護衛隊は作戦行動をエルヴェス第1軍に引継ぎ順次駐屯地地へ帰投せよ! 以上!」


 セーヌはエリーに敬礼すると、通達内容を復唱して無線連絡を開始した。

 エリーは隣りのアンジェラを見て尋ねる。

「ソアラちゃんは?」


「整備ブロックです」

 アンジェラが答えると、エリーはアンジェラの肩を軽く叩き詰所から出て行く。


 

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!


これからも、どうぞよろしくお願いします。


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