第192話 スキルの付与
2国間和平交渉会議6日目深夜。
ここはべランドル帝国帝都ドール市、ドール城、皇帝居住エリア内エリーの居室。
エリーが地下階層から帰って来ると、居室のソファーにソアラが横になっていた。エリーがソアラに近づこうとすると、目を開けてエリーを見つめる。
「……エリー、ゴメン、ちょっと油断した……」
「……お互いにね。私も気づかなかったからね……まあ、今回は無事で良かったけど」
エリーはそう言ってソアラの隣に座った。ソアラは上半身を起こして、エリーの左腕を優しく触った。
「あの……侍女長は何者? 気配を消して接近しても気づかなかった。私が不覚を取ってしまうとは……」
ソアラが顔を顰めて下を向く。そしてさらに言う。
「あの煙に包まれた男も……得体の知れないものだったのですが?」
エリーは戸惑った顔をしてソアラを見る。
「え……? ローゼ……の使徒ではないの!? じゃあどうして助けてくれた?」
エリーが声を漏らすとソアラは顔を上げてエリーの瞳を見つめる。
「私の関与しない、イレギュラーが存在しています。女神のチカラに対抗するようなチカラが……」
エリーは左手でソアラの頭を撫でながら言う。
「そりゃね、私たちもいつまでも無敵では無いって事だよね。心して掛からないと……、油断したら狩られるてこともある。だから、ローゼこれからは慎重にしなければね」
エリーがソアラを見つめると、ソアラは微笑み言う。
「あの侍女長、しもべにしたのですか? 魔力量は大したことは無いですが、かなりの術者です。なぜ、第三契約にしなかったのですか?」
エリーは少し嫌な顔をしてソアラの髪を指でとかしながら言う。
「それだと、価値が半減するからですよ。彼女の能力は精神系ですからね。まあでも、問題があれば自我を奪いますけど……実験ですよ」
エリーは少し口を緩めた。そしてソアラはエリーの手を優しく払って言う。
「じゃあ……私の精神系スキルを付与してあげますよ。その代わりにエリーの武闘系のスキルをちょうだい」
「……」
エリーは少しの間ソアラを眺めてから囁く。
「女神の魅惑スキルをくださいね。そしたら武神のスキルを付与してあげますよ!」
ソアラはエリーの顔を上目遣いで見てから言う。
「ええ、良いですよ。お互いにチカラを持たないと」
そうしてソアラは言う。
「じゃあドアに施錠を……邪魔されないよう魔法付与もお願いします」
「……」
エリーは立ち上がり、ドアの施錠をする。そしてドアに結界を付与した。
「これで良い」
「ええ」
ソアラは頷くとソファーから立ち上がり、ベットに寝そべる。
「エリー、隣に来てよね」
エリーはベットに座りソアラに体を寄せる。ソアラはエリーの肩に両手を回すと押し倒した。エリーは素直にソアラに身を委ねる。
(……これが統制の女神ローゼの深淵か……)
エリーは脱力してソアラから流れ込んでくる魔力を受け入れる。ソアラとエリーの体を白色の光が包み込み、しばらくすると光が収縮して消えた。
「……どうです……」
ソアラが目を大きく開いてエリーを見つめた。エリーは少し動揺したような顔をする。
「やはり……統制の女神……私には無いチカラですね。ほんと大したことない思っていたけど……舐めてました。本当に……」
そう言ってエリーはソアラの頬に顔を寄せて抱擁する。ソアラは少し動揺したように両手を振り払おうとするがエリーはソアラの唇に軽くキスすると、ソアラの耳元で囁く。
「そのチカラ全て、私にもらえませんか! ねえ、いいでしょう! ローゼ」
ソアラは動揺した顔をして手足をバタつかせ抵抗するが、エリーに馬乗りになられ抑え込まれる。そしてソアラは抵抗をやめて大人しくなった。
「……いいよ……好きにすれば」
ソアラは顔を横に向け悲しそうに言った。
「ふっ……冗談だよ。でもなんで魔法を使わないの! これくらいたやすく押しのけることくらい出来るでしょう?」
エリーはいやらしい顔をして言った。
「……探知……ですよ」
ソアラはため息を吐き言った。
「あ――、言ってたね。だいぶ抑え込んでるものね。そうだね! あゝ、じゃあ、私のスキルを付与するね」
ソアラは少し嫌な顔をして言う。
「では、お願いします。さっきみたいな冗談は勘弁してくださいよ」
そして2人はベットで横に抱き合い光に包まれた。ソアラは少し驚きながらエリーのスキルを受け入れる。
(……戦闘系スキルは、やはり簡単じゃあないですね!? 肉体強化を図らないと上手く使えないようですね。魔力量だけあっても制御技術がないと効率が悪い……エリーは完全体でないのに使いこなしているのは修練の賜物なのですね)
エリーは白色の光が収束して消えるとソアラから離れ立ち上がる。
「ローゼ……終わったよ。それじゃ。お風呂行って来るね」
「……」
ソアラはベットの上を転がりエリーを見て微笑む。
「……私も、一緒に行きますよ。ひとりじゃ寂しいでしょう!」
ソアラはベットから立ち上がりエリーのそばに寄った。
「いや……別に寂しくはないけど」
「……」
「あゝ、ローゼが寂しいだ!」
エリーは口を緩めた。そしてソアラが上目遣いでエリーを見つめると、エリーは右手をソアラの頭に優しく乗せる。
「じゃあ、お風呂行こうか」
そうして2人は部屋から出て行った。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!
これからも、どうぞよろしくお願いします。