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第190話 新生アルティ

アルティはべランドル帝国の諜報員となる

 2国間和平交渉会議6日目深夜。


 ここはべランドル帝国帝都ドール市、ドール城、地下3階層刑務監獄エリア。政治犯、諜報関係者の仮監獄、尋問が行はれる施設、諜報機関が監督管理している。


 アルティはつい先ほど目を覚ました。アルティは周囲を確認すると6畳ほどの独房に収容されていた。アルティの寝ているシングルベットと1番奥に仕切りが有りトイレが設置されている。ここがどこなのかはわからない。独房のドアは特殊金属製で魔法対策も施されているようだ。さらに周囲の壁、床、天井も強力な対魔法施工がなされている。並の魔道士では到底破れそうに無い。仮に独房を出れたとしても警備体制はきちんと取られているはず。逃げる気さえ起こらない。アルティは、ローラやその配下の実力を目の前で見て、この国がどれほどの魔道士を有しているか知っている。

 

「……」


 アルティは胸に痛みを感じて上着をずらして痛みの箇所を確認する。

(えーーっ!)

 

 アルティは胸の間にうっすら5cmほどの魔道紋章が刺青のように浮かび上がって驚いた。

(……夢の中だと思ったけど……私は、従属の契約を! 女神セレーナ……さま)


 アルティは痛みで胸を押さえる。そしてしばらくして痛みは治った。

 アルティは自分の体を確認すると上下セパレートの上着とズボンを履いている。下着は身につけていない。拘束のリング等は装着されていなかった。


 アルティはベットの上で仰向けになり考える。(本当……どうなるのだろう? べランドル帝国を敵に回して、ローラをはじめ魔道士も実力者揃い。私達は愚かだった。ライオネルはもうお終いなの……?)


 アルティの瞳から涙が溢れ出す。

(私は……世界を知らなかった! 本当に愚か……ちょっと魔法が得意で、周りに煽られて、そしてこの有り様……)


 アルティはあの黒い煙に包まれた男性を思い出し恐怖が蘇る。

(あ、あのようなバケモノが……わたしなどチリみたいなものだ。べランドル帝国は科学技術に力を入れて、魔法は廃れていると聞いていたのに話が違う! 魔道士ローラだってウワサだけで大した事はないと思っていた、それが実際対峙したら恐怖で身動きすら出来なかった。こんなの有りえない……。他の配下はどうなったのだろう? ゴメンみんな……)


 アルティはうつむせになり悲しみと自分の愚かさで瞳から涙が溢れた。

「うーーっ」


 アルティの独房のドアが叩かれる。アルティは独房服の袖で慌てて涙を拭き取り上半身を起こした。


 独房の施錠が解除される音がする、そしてドアが金属の擦れる音がしてゆっくり外側に開かれた。入口にはエリーが立っていた。アルティは視線を合わすことが出来ず、顔を伏せた。


 エリーはアルティのほうを見て口を開く。

「どう? 落ち着いた」


 アルティはうつむいたまま軽く頷いた。エリーはアルティを見て言う。


「顔を上げてもらえますか? なんなら強制的に命じることも出来ますが」


 それを聞いてアルティはゆっくりと顔を上げて怯えた顔でエリーを見つめる。

 エリーは独房内に入ってアルティに近づき瞳を見つめる。エリーの顔にはいつもの微笑みはない。いつになく冷たい表情をしていた。


「アルティ•アルバーン……21才、旧ライオネル王国、第2王女。現在、特殊魔道諜報部隊リーダー、今作戦の責任者。でしたね」


 エリーがそう言うと、アルティは諦めたような悲しい顔で見つめる。


「アルティさん、あなたの情報は全て把握しています。すでに、お仲間も全て捕獲していますのでご安心くださいね」


 アルティは虚で無気力な表情で言う。

「……ローラさまに歯向かうつもりなどございません……どうぞお好きになさってください」


 エリーはアルティの薄紫色のショートボブの髪に触り、虚な紫色の瞳を見つめて言う。


「ライオネルを潰したりはしないから……それとクラリスさんも、反抗しない限り命の保障はしますよ。だから協力してくださいね。まあ、強制的に命じることも出来るけど、どうしますか?」


 エリーは淡々と言った。アルティはそれを聞いて少し驚いた顔をして言う。


「ローラさま……!?」

 

 アルティは瞳を大きく開いて言う。

「……はい、どちらにせよ……やらなければならないのですね」


「はい、やってくれるのですね。じゃあよろしくお願いしますね」


 エリーはそう言ってアルティから離れると、通路にいたリサが独房内に入って来る。


「アルティさん、よろしくお願いします」

 リサが一礼して微笑み言った。アルティはリサを見て軽く会釈する。

(魔法結界をこともなく展開していたローラさまの配下の女性だ……このリサさんがわたしの上司になるのか?)


「アルティさん、まあ、これからは味方としてよろしくお願いします」

 アルティはリサを見て戸惑った顔をする。 (歳はわたしと変わらないくらいか? 美人で少し幼い感じで……でローラさまの腹心かすごい……もし……私が、もっと早くにローラさまとお会い出来ていたら……)


 アルティは顔を引き締めてリサを見て言う。

「リサさま、ライオネルを救ってくださるのですね。わたしを如何様にもお使いください」


 そう言ってアルティは深く頭を下げた。リサはそれを見て微笑む。


「アルティさん、では、明後日にはライオネルへ戻ってもらいます。あとは国内で任務を遂行してください。詳細は明日またお伝えします。今日はゆっくり休んでください」


 リサはアルティの肩に軽く触れて頷くと独房から出て行った。アルティは深く頭を下げた。そして独房のドアが閉じられ施錠された。

 

 アルティはベッドに寝そべり天井を見つめる。

 (……ローラさま……女神の生まれ変わり……わたしは導かれたのかもしれない……)

 そうしてアルティは目を閉じた。

 

 

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!

 これからも、どうぞよろしくお願いします。

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