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第185話 不穏な空気2

動きだすライオネル旧王族

2国間和平交渉会議6日目夕方。


 ここはべランドル帝国帝都ドール市、ドール城、皇帝執務室。


 エリーをはじめ主要なメンバーが集まっている。今後についての話し合いを終え、皆はエリーの最後の言葉を待っていた。

「それではよろしくお願いします。私は明日よりエルヴェスに向かい行動を起こします」

 エリーは一呼吸置いてから言う。

「これからの1週間は重要です。みなさま抜かりなきようお願い致します!」

 エリーは笑みを浮かべ皆を見渡し一礼した。ユーリはエリーを見て答える。

「ご期待添えるよう、尽力致します」

 そう言って頭を深く下げる。そしてエランがエリーのそばに寄って微笑み言う。

「ローラあなた軍服じゃなくてドレスでお願いね」

「……うん?」

 エリーは顔を傾け不思議そうな表情をした。

「今夜のエルヴェスとの宴席ですよ!」

 エランが少し機嫌悪そうにエリーを見て言った。

「これも重要な任務ですよ! あなたはこの帝国において英雄なのですからね! 財界や旧貴族達も集まります。私を含め顔を売っておかなければなりません。今後のためにもしっかりしてくださいね」

 エランの言葉を聞いてエリーは少し嫌な顔をする。

「エラン陛下……了解です。めんどくさいですが役目は果たしますので、ご安心を……」

 そう言ってエリーはエランから離れてユーリのそばに行く。


 

 ◆◇◆◇


 

 ここはべランドル帝国ドール市郊外農村部、外れ牧場納屋の中。

 農夫には見えない格好の男達そして女性らしきものも数名いる。男達のリーダー格らしき長身のガッチリした男が女性に話し掛ける。

「アルティさま……手筈は整いました。姉君クラリスさまのご指示通りでございます」

 その女性はローブのフードを外すと微笑み言う。

「バルカ、ありがとう。これで一泡吹かせられるわね。帝国は順調に物事が進んでいるから緩んでいるでしょうね。まさか帝都で何か起こるとは思わないでしょう!?」

 薄紫色のショートボブ、紫色の輝く瞳の女性は二十歳前後に見える。そしてアルティと呼ばれた女性は隣にいる女性を見て言う。

「それでそのソアラとかいう少女は価値あるのですね」

 隣りの女性はフードを深く被り顔はよく見えない。そしてその女性はアルティの言葉に頷き言う。

「はい、ローラ様をはじめエラン陛下……、臣下達に可愛がられております。ローラ様、直属魔道士ですが!? 実力はアルティさまには及ばぬと判断します。それにしてもローラ様の可愛がりようは並では有りません!? ただこのソアラ•アルベイン、私が調べた限りでは、帝国の庶民層の出なのです。それが少し気がかりですが……」

 アルティはその女性の手をとり顔を覗き込み言う。

「……あなたがいなければこの計画は成功しません! あと一息です……気を緩めず頑張りましょう」

 女性はアルティの手を握りしめて言う。

「はい……アルティさま、クラリスさまのためにも頑張ります」


 アルティは周囲を見渡し男達を見て言う

「準備はいかがですか。問題有りませんか!? 成功時はここへ一旦集まるのでお願いします」

 男達は黒いロング丈のローブを全員上から羽織っている。そして頭には深くフードを被り顔はよく見えない。10人ほどの男達は一斉に跪き右手をつき頭を下げて言う。

〈我らライオネル、オーリス騎士! アルティ姫殿下に女神ローゼ様のご加護が在らんことを……〉

 それを聞いってアルティは男達に頭を深く下げる。

「あなた達に女神ローゼ様のご加護が在らんことを祈ります。そしてひとりも欠けること無く、再会する事を……」

 そしてアルティは顔を上げると全員を見て言う。

「それでは参りましょう! 全員各持ち場にお願い致します!」


 男達は各々にアルティの前で挨拶を交わして納屋の出口から出て行く。ひとりの男性ローブの下に着込んでいる軍服が見える。その男性のローブの間から近衛士官の軍服が一瞬見えた。そしてその男性はアルティに一礼すると慌てたように納屋から出て行った。

 納屋に残ったのはアルティとひとりの女性の2人だけ。

「それではアルティさま。私達も準備致しましょう」

「そうね。時間があまり無いわね。でも本当に残るの……露呈したらただでは済まないわよ」

 アルティはその女性に優しく話し掛けた。


「私は大丈夫です。信頼を得ていますから、まず疑われる心配は有りません。万が一のことがあれば逃げ出しますので、ご安心ください」

 女性は自信ありげに答えた。


「そうね。元宮廷魔道士序列者だものね。そして私達姉妹の師匠。問題無いってことね」

 アルティはその女性を見つめて微笑み言った。そして女性は頷きアルティの手を引いて言う。

「いきましょう! アルティさま」


 そしてアルティ達は納屋の外に出ると車両が一台止まっている。女性が車両の後部ドアを開けてアルティと一緒に後部席に座る。運転席には近衛士官が座っている。さっきのローブの間から軍服が見えた男性だ。

 男性は顔をアルティのほうに向けて少し緊張した顔で見て言う。

「アルティさま、それでは出発致します。ローブはとりあえず脱いでおいてください。検問があるかもしれませんので」

 アルティと隣りの女性は羽織っているローブを脱いで袋に収納する。アルティと女性はドール城侍女制服を着ていた。制服の右胸には金色の星が一つ付いている。そうエラン皇帝付き侍女章が。

 そして車両はゆっくりと動きだす。車両は牧場の敷地から出ると速度を上げてドール市街地へと向かった。


 

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!

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