和平交渉 第183話 友達としてなら
2国間和平交渉会議6日目昼。
ここはべランドル帝国帝都ドール市、ドール城、来賓の間。
エリーはエランの隣に座りエルヴェス帝国との昼食会に参加していた。そしてエリーは着席序列に違和感を覚えつつも目の前の食事を堪能していた。テーブルの反対側にはニース大将が座りエリーに頬んでいる。
(良好な関係を構築する……。しかしながらカールデン陛下苦手なんだよ……)
エリーはそう思いながら食事をしているとカールデンがエリーに声を掛ける。
「大魔導士ローラ様! おりいてお話しをしたいのですがよろしいでしょうか?」
エリーはカールデンに視線を向けて一礼すると言う。
「カールデン陛下、私ごときにお話しとは、ここではお話し出来ない事でしょうか?」
「はい、前回の申し入れの回答をお伺いしたいのです」
カールデンが答えるとエリーはエランのほうを見て言う。
「エラン陛下! よろしいでしょうか」
エランはエリーを見て微笑み言う。
「ええ、良いわよ。私も一緒でお願いしますね。だって私の大事なローラを誑かされたらたまったものではありませんからね」
カールデンは、一瞬顔を痙攣らせてからエランを見て無理に笑顔を作る。
「はい、それはもちろんのことです。エラン陛下にも有益なお話しであると思います」
エランはカールデンを見て目を細めて言う。
「カールデン陛下! それではよろしくお願いします」
カールデンは隣のニース大将に何か呟いてからエリーに視線を移して言う。
「それでは食事会が終わりましたら、よろしくお願いします」
エリーは頭を下げて言う。
「はい、了解致しました」
そうしてエリーは、スープを口に運び食事を再開した。
◆◇◆◇
エリー達は来賓別室へ移動していた。部屋には6人掛けのテーブルにエラン、エリー、反対側にカールデン、ニース大将が座っている。
エリーが口を開く。
「カールデン陛下! 前回の申し入れの件……、お断り致します」
カールデンは顔を強張らせてエリーを見る。
「それは我々が役に立たぬと……」
エリーは直ぐに椅子から立ち上がり微笑みカールデンに右手を出す。
「役立たぬ! そのような事は一切思っておりませんよ。カールデン陛下! 私を友人として協力してもらえれば十分です。それにカールデン陛下は国内を掌握しきれていないにですよね。信頼出来る臣下が少ない。私が陛下に協力してエルヴェスをまとめ上げませんか!?」
カールデンとニース大将は顔を見合わせてからカールデンは立ち上がる。
「ローラ様……? どう言った。友人とは」
「ですから対等な友人としてです。私は、今! 人間です。女神セレーナでなく、ローラ•ベーカーとしてあなたの友人になると言っているのです」
エリーはカールデンの手を取り握り微笑む。
「私はあなたをカールデンと呼ばせて頂きます。私はローラとお呼びくださいね」
カールデンは顔を緩ませてエリーを見てから声を上げる。
「はい、そうですね。今は! それで十分です」
エランが少し戸惑った顔をしてエリーを見ている。エリーはエランのほう見て微笑み言う。
「エラン陛下。これでよろしいでしょう」
「えっ! うん……!? 友達からってことね」エランが答えるとカールデンはエリーを見て顔を緩めて言う。
「エラン陛下は、やはりローラ様の姉君様ですなのですね」
エランはカールデンを見てため息を吐き言う。
「公然の秘密です!? 口にする事は謀られる事です。思っても心のうちと留め置く」
カールデンはエランに頭を深く下げる。
「お許しください! 今後気をつけまので」
エランは椅子から立ち上がり微笑み言う。
「まあ、良いけど……、ローラをよろしくお願いしますね。カールデン殿!」
カールデンはエランに再度、頭を下げる。
「はい! お役に立てるよう頑張ります」
エランはエリーの肩に手を触れる。
「ローラ。話しは終わったわね。じゃあ紅茶タイムにしますか?」
エリーは頷き移動すると受話器を取って言う。
「要件は終わりました。紅茶セットをも願いします」
エリーは受話器を置いて席に戻るとカールデンを見て言う。
「カールデン。よろしくね」
カールデンは顔全体を緩めてエリーを見て言う。
「ええ……、よろしくお願いします。ローラ様」
エリーは少し目を細めて言う。
「友達!? でしょう。ローラで良いですよ」
「……ローラ……」
カールデンは恥ずかしいそうに言った。
「……カールデン陛下、なんか付き合い始めのカップルみたいですね」
隣にいるニース大将が笑いをこらえながら言った。カールデンは少し機嫌の悪い顔をする。
エリーはカールデンの顔を眺める。視線に気づきカールデンが嬉しそうな顔をするとエリーは言う。
「帰国時に同行させて頂きたいのですが。カールデン良いからしら?」
カールデンはエリーの瞳を見つめ頷き答える。
「ローラ……!? もちろんだよ。私に興味を持ったのですね」
エリーは一瞬、嫌な顔をして直ぐに笑顔で言う。
「行ってみたい場所があるのです。カールデンにも同行してもらえれば良いのですが」
カールデンはエリーの手を取り言う。
「もちろんです。喜んでお供します」
エリーは視線を逸らして言う。
「ありがとうございます」
そうして来賓室のドアがノックされる。エランが答えると侍女1人とソアラが入室して来た。
「失礼致します。紅茶をお持ちしました」
侍女は深く頭を下げる。紅茶セットワゴンをテーブル横につけると、手際よくカップに紅茶を注ぎテーブルにカップを並べる。そしてケーキの入った皿を並べると、侍女は深く頭を下げて。「失礼致します」
そう言って部屋から出て行った。
1人残ったソアラが深く頭を下げる。
「魔道士ローラ様付き、ソアラ•アルベインと申します。カールデン陛下! よろしくお願い致します」
カールデンはソアラを見て言う。
「そのお歳でローラ様付きとは……かなりのものなのですね!?」
ソアラはカールデンに微笑み答える。
「はい、ローラ様には及びませんが、それなりに」
そうしてソアラはエリーのそばに寄った。
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