和平交渉 第180話 大陸情勢1
2国間和平交渉会議5日目夕方。
ここはべランドル帝国帝都ドール市、ドール城、宰相執務室。
エリーはジョルノ共和国バリアン市から戻ったアンジェラ、セーヌと話をしている。エリーの隣りにはソアラが座って話しを聞いていた。
エリーがソアラを見てから視線をアンジェラ、セーヌを移して言う。
「改めて紹介します。ソアラちゃんです。今回、新生エリー大隊諜報部門より派遣、私の直属となりました。見た目は可愛い容姿ですが……、実力はかなりのものです」
アンジェラがエリーを見て少し戸惑った顔をする。
「ローラ様……!? そのソアラちゃんとはなんですか? ちゃんとは如何かと思いますが」
エリーは隣りのソアラの頭に手を伸ばして髪を撫でながら言う。
「だってソアラちゃんは、ソアラちゃんだよ」
そんな様子を見てセーヌが言う。
「確か飛び級特別採用と聞いておりますが。18才諜報部門中尉ですよね」
エリーは口を緩めて2人に言う。
「そうだよ。とても見えないけどね。エリートなんだよ。ソアラちゃんはね」
ソアラはエリーの手を掴み嫌そうに払い退ける。
「ローラ様、私をなんだと思っているのですか」
エリーは笑顔でソアラの肩に手を回して言う。
「私の直属魔導士、ソアラ•アルベインだよ」
アンジェラが少し嫌な顔をして言う。
「いつもと違います。エリー……、ローラ様らしくないです。嫌がらせしている見たいです。ソアラさんが可哀想ですよ」
エリーは微笑みアンジェラを見つめる。
「違うよ。愛情表現だよ。ソアラちゃんはね。女神スキルを持っているんだよ。希少な人材なんだよ。嫌がらせなんてする訳ないよ」
アンジェラとセーヌは少し驚いた顔をする。
「女神スキル! ローラ様と同じなのですか?」
アンジェラが尋ねるとエリーは微笑み答える。
「そうだよ。ソアラちゃんはローゼ様の使徒なんだよ」
アンジェラの顔が一瞬強張る。
「ローゼ様の使徒……、あゝ、それなら納得しました。じゃあ私もこれからソアラちゃんと呼ぶことにします」
セーヌが困った顔をしてアンジェラを見る。
「アンジェラさん、どうしたんですか? これから一緒に命を預ける仲間ではないですか。ソアラさんよろしくお願いします」
セーヌがソアラに微笑み一礼するとアンジェラは機嫌の悪そうな顔をする。ソアラはセーヌをに一礼して言う。
「セーヌ中隊長、よろしくお願いします」
エリーはソアラの肩を抱き寄せながらアンジェラに言う。
「それでヒールカン大統領は侵攻の責任は軍部に押し付けて、自分は罪は無いと、そう言う事ですか? 統治の責任は有りますよね」
アンジェラは頷き呆れたように言う。
「ええ、軍部の暴走鎮圧に協力に感謝するとのことです。こちらは侵略行為を受けて被害も出ているのに……。それと加担した部隊長クラスは厳罰を持って処分するとのことです」
エリーはソアラの肩から手を離して立ち上がると秘書執務机に座っているミリアに声を掛ける。ミリアは書類の処理を中断してエリーに返事をした。
「ローラ様なんでしょうか? 申し訳ありません。忙しくてお話し聞いていませんでした」
エリーはミリアに申し訳なさそうな顔をして言う。
「マーク閣下とハリーさんはいつ頃お戻りになられますか?」
ミリアは時間を確認して答える。
「はい、もう戻ると思います。急ぎですか? それなら直ぐに連絡しますが」
「いいえ、急ぎではないので結構です。ミリアさん、申し訳ありませんでした」
エリーが答えるとミリアは微笑み軽く会釈すると返事をした。「はい、了解です」
そうしてミリアは直ぐ忙しそうに書類処理を再開する。
エリーは宰相執務室の受話器を取って皇帝護衛隊へ繋ぎユーリを呼びだした。しばらくしてドアノックされユーリが部屋に入って来る。
「ローラ様! ジョルノ共和国の件ですね。準備はまだ整っておりません。申し訳ありませんがあと2日ほど掛かります。デエーン将軍との交渉が完了していないのです」
ユーリは報告して一礼するとソアラの横に座る。
「デエーン将軍は今回の侵攻に反対して確か拘束されているのですよね」
エリーはソアラの横に座り微笑んでいるユーリを見て言った。
「いえ、手の者が救出して国境沿いの山村に保護しております。国家転覆の旗手になってもらうべく交渉しているにですが進展しておりません」
ユーリがそう言ってエリーの顔を見て言う。
「では、私がデエーン将軍とお話しすれば良いですか」
エリーはソアラの髪の毛を手でとかしながら言った。ソアラが嫌な顔をしてエリーの手を払い退けて立ち上がる。
「ローラ様! もう少し大切に扱って下さい!」
エリーはソアラを見て微笑み言う。
「あゝ、ゴメン。つい触りたくてね」
ユーリはエリーに真面目な顔をして言う。
「ローラ様、ソアラちゃんの扱いが少し雑過ぎる気がするのですが? 今大事な話しをしております」
エリーはユーリを見て言う。
「うん、ちゃんとしてるよ。でね、デエーン将軍にお会い出来るのですか」
「はい、早急に手配します。ですが明日は重要な訪問が有ります。デエーン将軍との会談は夕方に調整致します。よろしいですね」
ユーリがエリーの前に立ち頭を下げて言った。
「はい、それでお願いします」
エリーはユーリに答えるとソアラを見て言う。
「ソアラちゃん、美味しい紅茶をお願い。全員分ね」
ソアラはエリーの顔を見て微笑み言う。
「はい、承りました」
そしてソアラは一礼すると宰相執務室から出て行く。アンジェラがエリーのそばに寄って来て耳元で囁く。
「あれは何者ですか? 美少女の皮を被った化物ですか。エリー様と同種の力を感じます。ローゼの使徒ではなく本人ではないのですか?」
エリーは少し驚いた顔をしてアンジェラを見て言う。
「なぜそう思うのですか?」
アンジェラは少し機嫌の悪そうな顔をして言う。「私の中のリーザ•バーンがそう言ってます。何せ私をここに導いたのはローゼですから、忌々しいですがとりあえず感謝もしています」
エリーはアンジェラの肩を抱き寄せ部屋の隅に移動する。
「正解です。ソアラはローゼそのものです。ですが他言無用です。この事は知られると厄介事が増えるので……、お願いしますね。リーザちゃん」
エリーはアンジェラの顔を覗き込み目を細めて言った。
◆◇◆◇
ここはベルニス王国、王城執行部門エリア内、政策執行官室。
トッドとウィンがテーブルを挟みソファーに座り会話をしている。トッドは微笑むウィンを睨みつけて言う。
「これ以上の勝手な行いは控えて頂きたい。それはローラ様の望む事ではない事を、理解されていますか? ウィン殿」
ウィンはトッドの顔を見て少し戯けた顔をする。
「私はローラ様……、いえ、エリー様に敵対するつもりなどありません。むしろ臣下のひとりに加わりたいと思っております」
トッドはウィンの言葉を聞くと言う。
「ではなぜ、勝手な事をする。私はサンドラの件も把握していますよ。あなたが特異魔法の使い手である事も知っています」
ウィンはトッドを見て不思議そうな顔をする。
「トッド殿は、魔道剣士と思っていましたが。それは間違いのようですね。あなたはエリー様の1番の信頼を得ている配下……、いえ、師匠でも有りましたね。トッド殿……、あなたは何者なのですか? 私は色々調べましたがよくわからないのです」
トッドはウィンを見て言う。
「詮索は結構です。とにかく勝手な事は控えてもらえれば良いだけです。今大事な時期です。ローラ様の事を考えているのなら、余計な事はしないそれだけです」
ウィンがソファーから立ち上がりトッドに右手を出し握手を求めた。
「トッド殿、了承致しました。今後とも宜しく頼みます」
トッドは立ち上がりウィンを冷たい目で見て言う。
「万が一の事があらば、処分致します。そのおつもりで。もちろんあなたの分身体もね」
ウィンは嫌な顔をする。
「トッド殿は……、はい、心得ました」
そうしてトッドは一礼すると執行官室から出て行った。
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