和平交渉 第178話 女神スキル
ソアラは魅了する。
2国間和平交渉会議5日目夕方。
ここはべランドル帝国帝都ドール市、ドール城、皇帝執務室。
エリーはテーブルの前で戯れている3人を見つめていた。あれからソアラとユーリは打ち解けて、ソアラはユーリを虜にしてしまっていた。リサも事情を説明すると直ぐに警戒心を解きしばらくすると妹のように可愛がるようになった。ソアラを見る2人の顔は幸福感に包まれかなり緩んでいた。そしてエリーは思っていた。
(ローゼは精神系の高次魔法スキルを持っている。それを発動したのか? いや、違う痕跡がなっかた……。これが女神ローゼの人々を魅了する本来のチカラなのか。隠蔽でかなり魔力を抑えていたのですね。しかし、私の従者契約を結んだ者をこんなにするとは……、厄介ですね)
エリーの隣りに座っているエランが羨ましいそうにソアラ達を見つめている。
「エラン陛下! 何を考えているのです」
エリーがエランを見て機嫌の悪い顔をして言った。そしてエランはエリーを見て呟く。
「……、ソアラちゃん可愛いなぁと思って」
エリーは直ぐにエランの周囲に魔力障壁を展開してから言う。
「エラン陛下! 魔力を制御して気持ちを穏やかにしてください」
エランはハッとしてエリーを見て言う。
「あゝ、なんか気持ちがホワホワしてソアラちゃんに見惚れていました。何故ですか?」
エリーは直ぐに答える。
「ソアラちゃんに悪意は無いのです。これが彼女の魅了スキルです。警戒心を持っているうちは良いのですが、それを解いてしまうとあっという間に気持ちを取り込まれます。あのように」そう言ってユーリを指差した。
エランはユーリを見て頷き言う。
「……、ええ、普段のユーリさんじゃあないですね。もうちょっと見てられませんね。私もあゝなるのですか?」
エリーはエランの耳元に顔を寄せて囁く。
「魔力耐性的にどうでしょうか? ユーリさん以上かもしれません」
エランはエリーの手を握って言う。
「わかりました。ローゼ様の使徒のチカラは理解しました。注意しておきます。心に魔力障壁を張れば良いのですね」
「ええ、そうです。でないととんでもなく緩んだ顔を披露することになります。あのユーリさんのようにね」
エランはユーリを見て顔をしかめる。
「はい、ですね。ユーリさん、見る影もないですね。あの凛々しいユーリさんがたらし込まれています」
エリーはソファーから立ち上がるとソアラを見て微笑み言う。
「ソアラちゃん! その辺で良いかな。今後の任務に差し支えるからもうちょっと魔力抑えてね。お•ね•が•い……」
ソアラはエリーを見て目が笑っていない事に気づきハッとして言う。
「はい! ローラ様、了解致しました」
エリーはソファーに座って呆れた顔をして言う。
「ソアラちゃん、自覚してよね。ちゃんとしないと酷い目に遭うよ。これから大事な時期なんだからね」
ソアラはソファーから立ち上がりエリーのそばに寄ると呟く。
「ゴメンナサイ……。エリー、つい安心して緩んでしまいました。今後このようなことがないようにしますから」
そう言ってソアラはエリーの手を握りしめた。エリーはソアラを冷たい目で見て言う。
「ソアラちゃん、理解しているなら良いよ。今後気をつけてね。まあ確かに悪気はないから、勘弁してあげるよ」
ユーリとリサがエリーを寂しそうな顔をして見ている。エリーは2人を見て優しく言う。
「ソアラちゃんはこれから、しばらく一緒ですよ。そんな顔をしないでください」
エランがエリーを見て言う。
「エルヴィス帝国皇帝が、明日、帝都訪問予定です。あなたの出席が求められています。以前報告を受けた危ない奴ですね」
エリーはエランに答える。
「ええ、面倒ですね。大陸協定も有りますから、無碍には出来ませんよね」
エランは直ぐに答える。
「そうです。ハリーさんに大陸協定については説明を受けていますが。全国家が加入する事は必須です。たとえ軍事制圧をしてでもです」
エリーはユーリとリサを見て言う。
「これからはユーリさん、リサさん、ローラ直属として動いてもらいます。もちろんソアラちゃんもです」
エリーはソアラの金髪の髪を撫でながら言う。
「よろしくお願いしますね。あなたはしっかり役目を果たしてください。くれぐれも足を引っ張らないようお願いします」
ソアラはエリーを上目遣いで瞳を開いて言葉を発した。
「はい、ローラ様の仰せのままに」
エリーはソアラを見て優しく言う。
「素直ですね。まあよろしくね」
(ローゼが出て来たって事は、これから重要局面なのは間違いない。ローゼにとって私は盤上のコマなのか? だがローゼの好きなようにはやらせない)
そしてエリーはソアラを嫌な顔で見る。
「ソアラちゃん、重装機兵パイロット訓練受けていますよね」
「はい、基礎訓練は受けています」
ソアラが答えた。そしてエリーはユーリを見て言う。
「これから護衛隊待機場へ行きます。ラムザとレンベルの起動立上げを連絡してください」
ユーリが顔を引き締めてエリーを見て言う。
「はい、了解致しました」
ユーリは一礼すると直ぐに皇帝執務室を出て行った。エリーは去って行くユーリの雰囲気がいつものユーリに戻っていたので安心していた。
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