和平交渉 第176話 ソアラの正体
エリーはソアラの正体に気づく
2国間和平交渉会議5日目午後。
ここはべランドル帝国帝都ドール市、ドール城皇帝執務室。
エリーはアンドレアからランカーⅡで急ぎ戻り昼食を済ませて集まっていた。集まっているのはもちろんいつもの面々だ。皇帝エラン、セリカ護衛隊長、ビア副隊長、マーク宰相、ミリア秘書官、ハル中将、レベッカ、ハリー、ユーリそしてエリーがテーブルを囲みソファーに座っている。
エリーは現状について20分ほどの説明を終えるとふっと息を吐き間を置いて言葉を発した。
「話は以上ですが、今回連れて来たソアラ•アルベインについてお話ししておきます。一応新生エリー大隊の部隊員ですが……、不気味なのです。かなり異常な魔力量を隠蔽しています。スキルも隠しています。見た目は可愛い美少女風ですが騙されてはいけません! 女神スキルで感知しようとしましたが内面が部分的にしか読めませんでした。ですから皆さん警戒してください。くれぐれも見た目に騙されないよう注意してくださいね」
エランがエリーを見て少し遠慮したように言う。
「じゃあ何故連れて来たの?」
エリーは直ぐに答える。
「野放しに出来る訳ないじゃないですか! 近くに置いて様子を見るためです。それと味方ならそれはそれで戦力になりますしね」
レベッカが微笑み尋ねる。
「エリー様ならどんな相手でも問題にはならないにでは無いですか?」
エリーは嫌な顔をしてレベッカを見て答える。
「私は無敵では無いですよ。今回ソアラに関してはセレーナが具体的に答えられなかった……。私と同種のチカラを有するかもしれないと言ったのです。女神の根源の力を有するかもしれないと……。本人は意図的に隠蔽しているのは間違いないとも言いました」
ハル中将が驚いたように言う。
「エリーさんと同等とは……、しかし家系の出身を確認しましたが。そのような力を持つ血統者ではありませんでしたよ」
エリーは一同を見渡して言う。
「彼女はイレギュラーなのかそれとも……」
エリーは口をつぐみ間を置いて言う。
「アクセリアルの先兵なのかもしれません」
ハリーが立ち上がりエリーを見て言う。
「それはどうでしょうか? アクセリアルは魔法ではなく我々とは違う技術を持っています。人間そのものでなく能力を補完するものです。ですから魔力を使用するのなら、アクセリアルではなくこの大陸の他の勢力と考えるのが妥当かと思います」
エリーはテーブルの水差しを取りコップに水を注ぐ。そして一気に飲み干し言う。
「第3の勢力と言うことですか? しかし普通に考えれば我々と距離を置くのではないですか? えーーっ!」
エリーが声を上げて無言になっりしばらく考えているような顔をする。エランがエリーを見て口を開く。
「エリー、何かわかったにですね?」
エリーは口を緩めてエランの瞳を見つめて言う。
「ソアラ•アルベインは帝国においては魔導士ローラの直属魔導士としますのでよろしくお願いします。尚、呼称はソアラちゃんでお願い致します」
レベッカが戸惑った顔をしてエリーを見る。
「エリー様、問題は解決したようですが。私達に説明して頂けますか」
エリーは微笑み言う。
「いずれお話し致します。今はまだ待ってください」
エリーは両手を挙げて言う。
「ではお話は終わります! これで解散して皆様お仕事に戻ってください。ソアラちゃんに関しては確認次第報告しますのでお待ちくださいね。あと警戒はしてくださいね」
エリーはそう言って皆に深く頭を下げた。そして一同は部屋から出て行く。部屋に残ったのはエリーとエラン2人だけとなった。
エランがエリーを嫌そうな顔で見て言う。
「エリー、調子は良くなったみたいだけど、ソアラちゃんでなに? 意味がわからないわ。説明してくださいね」
エリーは受話器を取りリサに連絡を取る。
「皇帝執務室までお願いします。ソアラちゃんを連れて来てください」
エリーはそう言うと受話器を戻した。そしてエリーは微笑みエランの顔を見て言う。
「私の可愛い直属魔導士を見てくださいね。それとこれからは魔道士ローラモードでお願いします」
しばらくするとドアがノックされる。エランが答えるとドアが開きリサが入室して一礼する。
「エラン陛下、連れて参りました」
リサの後ろから横に出てソアラが深く頭を下げて言う。
「ローラ様付きとなりました。ソアラ•アルベインと申します」
金髪セミロングにブルーの瞳に整った顔立ち、どう見ても10代前半にしか見えない容姿。
エランが近寄り声を上げる。
「えーーっ! 本当にソアラちゃんですわ」
エランはソアラの手を取りソアラの顔を見つめる。
「皇帝エランです。ソアラちゃんよろしくね」
ソアラは動揺した顔をしてエランを見つめて言う。
「エラン陛下……、もったいないお言葉痛み入ります」
リサはエリーに寄って囁く。
「これはどうなっているのですか?」
エリーはリサに微笑み言う。
「エラン陛下はソアラちゃんを気に入った見たいだよ」
エランはソアラの手を引っ張りソファーに座らせると言う。
「ローラ! ソアラちゃんを私に譲りなさい。私の専属侍女にします」
エリーは直ぐに口を緩め笑い出した。
「ご冗談は勘弁してください。私の大切な部下です。譲れる訳が有りません」
エランはエリーを見て微笑む。
「冗談だけどね。まあ確かに可愛い子ね」
エリーはソアラを見て言う。
「エラン陛下はこのようにフレンドリーなお方です。ですがミスをすればためらわず処分されるようなお方なので注意してくださいね」
ソアラはエリーを見て思っていた。
(どうした? 急に警戒心が無くなった。何故? まさか……、いいえそんなはずは無い)
ソアラは動揺した表情を浮かべて周囲を見渡す。
エリーがソアラを見て少し笑って言う。
「どうしたのソアラちゃん。大丈夫だよ。もう昔の事は許してあげるからね。言いたいことはあるけど酷い事はしたりしないから安心してね」
その言葉を聞いてソアラが視線を逸らす。
(何を言っているの!? 気づいたのか? いや違う。完全体でないセレーナに気づかれる訳が無いはず……)
エリーはエランを見て言う。
「エラン陛下お風呂に入って汗を流して来ます」
「ええ、どうぞ」
エランが答えるとエリーはソアラを見て微笑み言う。
「ソアラちゃん、一緒に行きますよ。親交を深めましょう」
ソアラは顔を伏せる。エリーはソアラの手をを取り立ち上がらせるとエランとリサに言う。
「それでは行って参ります」
そしてソアラを引っ張るように歩きだす。ソアラがエリーのを見ると少しニヤついている。
皇帝執務室を出て廊下を進み執行エリアから居住エリアへと入る。ソアラがエリーに引っ張られながら歩いていると皇帝の侍女が一礼して話し掛けてくる。
「ローラ様、お連れ様どこのお嬢様ですか?」
エリーは立ち止まり侍女に微笑み言う。
「ソアラです。私の直属魔導士です」
侍女は驚いた顔をしてソアラを見て言う。
「まだ幼いのにローラ様の直属とは……、大変失礼致しました」
そう言って侍女は畏まったように頭を下げた。
「ザディさん良いのよ。そんなに畏まらなくても、ソアラちゃんて気軽に可愛がってあげてね」
ソアラはエリーの扱いの変化に驚いていた。
(私はどうしてこんな風に扱われているの? 礼節もなくまるで幼い妹を扱うような……、)
エリーは侍女に言う。
「ザディさん、お願いがあるのです。この子に合いそうな可愛い服を準備して浴場へ持って来てくださらない」
侍女は直ぐに答える。
「ローラ様、直ぐに準備致します。可愛い服をは無理かもしれませんがご容赦ください」
「ザディさん、ありがとうございます」
エリーとソアラは浴場スペースへ入る。洗面更衣室でエリーは直ぐに下着姿になるとソアラに尋ねる。
「ソアラちゃん、12才くらいから全然成長していないのでしょう」
ソアラは強張った顔をする。
「そんな事はないです。ちゃんと成長しています。私は18ですよ」
エリーは裸になったソアラを見て言う。
「とてもじゃないけど……、まあ、お風呂に入りましょう」
浴場は皇帝一族専用でスペースは30畳ほどの大きさに洗い場と10畳の浴槽がある。
エリーは洗い場の椅子にソアラを座らせる。
「洗ってあげるよ。ソアラちゃん」
「いえ、そんな事は」
ソアラは拒否して逃げようとするが、、エリーは肩を抑えて言う。
「どうしたの、どうして人間になったのですか? ローゼ、だから見つからないはずだよね」
ソアラは振り返りエリーを見て言う。
「エリー中佐……何を言っているのですか」
エリーはシャワーのノズルをソアラの頭に掛けて言う。
「わかってるから、さる芝居はしなくて良いから、ローゼあなたはソアラちゃんの体を奪ったのですか? 年齢が合いませんよね」
ソアラは観念したような顔をして言う。
「シャワーを止めて、話すから……、セレーナいえ、今はエリーの方が良いかしら」
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