和平交渉 第169話 ヨハネス中佐
エリーは諜報責任者ヨハネス中佐と話す。
2国間和平交渉会議4日目昼。
ここはグラン連邦国首都、べマン市。
エリーは首都防衛隊基地内、エリー大隊本部に来ていた。重装機兵中隊詰所で中隊員達と少し会話した後、大隊本部食堂に来ている。食堂は100名ほどが食事出来るテーブルとスペースが有る。エリーはリサとテーブルに隣合わせに座り食事が出来るのを待っていた。
「エリー様、こちらに視線を感じますがいかがいたしましょう?」
リサが機嫌の悪い顔をして言った。
「別に良いよ。部隊員達も久しぶりに私が帰って来たから嬉しいんだよ。だから、リサさんもそんな顔しないでよね」
エリーがそう言ってリサを見ると、リサは慌てたように表情を変えた。
食堂の入口から細身の男性士官がエリー達に近寄って来る。エリーは面識は無い。
男性士官はエリーのテーブルまで来ると敬礼して自己紹介する。
「お初にお目に掛かります! エリー大隊諜報特殊部門担当長を拝命致しました。ヨハネス•ウィンカーです。今回の配転でエリー中佐とご一緒出来て光栄で有ります」
エリーは椅子から立ち上がりヨハネスに敬礼する。
「エリー・ブラウンです。今後ともよろしくお願い致します。ですが階級は中佐のようですが私の配下なのですか?」
エリーはヨハネスの階級章を見て言った。ヨハネスの軍服の階級章はエリーと同じ銀線2本に銀星が2個入っていた。
「はい、確かに中佐ですが。エリー中佐は課長待遇、私は、課長補佐待遇です。エリー中佐が上席となります。私は諜報特殊中隊、即応対応警備中隊の責任者です。そして外事局特務対策課の課長補佐を兼務しております。ハル閣下からはエリー課長は、任務で本部におられることはないから、しっかりやってくれと言われております」
そう言ってヨハネスはエリーに頭を下げた。
「エマ副長と2人体制ということですね」
エリーはヨハネスを見て言った。
「はい、そうです。エマ副長は重装機兵2個中隊と兵站、庶務担当です。私は特務対策課、諜報特殊中隊担当です」
エリーは椅子に座って言う。
「ヨハネスさん、お座りください。お話したい事はまだまだ有ります」
ヨハネスはエリーに一礼するとテーブルの反対側の椅子に座った。エリーはヨハネスを見て思う。
(ヨハネス中佐、ハル閣下が人選したのだからやり手なのだろうけど? 年齢は30代後半、地味で目立たない印象だ。存在をわざと目立たなくしている、多分魔法で隠蔽して存在を薄めている。諜報関係出身だろう?)
「食事はどうですか?」
エリーがヨハネスに尋ねた。
「いえ、食事は遠慮しておきます。報告が終わったら直ぐに仕事が有りますので」
エリーは微笑みヨハネスを見て言う。
「申し訳有りません。私が手伝えなくて」
ヨハネスはエリーを見て微笑み言う。
「エリー中佐は大切な任務があるでは無いですか。今は帝国の深部に潜っておられるとか。私など到底こなせない任務です」
「ヨハネスさん、よろしくお願いします。大陸はこれから大きく動きます。と言うより動かしますよ。ヨハネスさんはどうですか? 大陸はまとまると思いますか?」
エリーはヨハネスに尋ねた。ヨハネスはエリーの顔を見て答える。
「この状況なら短期間でまとまると考えます。それは魔導士ローラ様にかかっているかと思います。帝国の希望の象徴から今や大陸の希望の象徴へとなりつつあります。ブラウン商会とアンドレア魔道諜報部隊の情報操作も凄いですが、ご本人様の活躍も中々のものがあります」
エリーは少し嫌な顔をしてヨハネスを見る。
「そうですか。それは責任重大ですね」
エリーの隣に座っているリサがヨハネスに言う。
「ヨハネス中佐、リサ・ヒューズと申します。エリー様をどうかよろしくお願いします」
ヨハネスはリサを見て一礼すると言う。
「リサさん、申し訳有りません。挨拶が遅れました。アンドレアの国軍総司令官ヒューズ将軍のご息女ですよね。こちらこそエリー中佐のサポートをよろしくお願い致します」
リサは直感的にヨハネスが自分を警戒していることに気づいていた。
「エリー様、食事が出来たようなのでとって参ります」
リサが立ち上がりエリーに言った。
「ええ、お願いします」
エリーがそう言うとリサはカウンターへ食事を取りに行く。
そしてヨハネスはエリーに寄ると呟く。
「エリー中佐……、アンドレアのものはあまり信用されませんように」
エリーはヨハネスを見る。
「それはどう言う意味ですか?」
「言葉の通りです。では」
そう言ってヨハネスはエリーに一礼すると食堂から出て行った。
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